大きな会社に入ればそれなりの人生を歩めた時代は終わり、未来は不透明で不確実だ。だが、行動を起こし、やり続ける人は、いつの世も成功を収める。そのために必要な「行動力」は生来のものではなく、誰もが習得できる一種の技術である――これが本書に通底するメッセージだ。
自分が何に向いているか分からなくても、少しでも興味を持てることがあれば、まずは動いて、試してみよう。一歩でも動き出すことで、行動は加速する。何か作業を始めると脳の「側坐核」が刺激され、ドーパミンという神経伝達物質が出て「やる気スイッチ」が入るという科学的な裏付けもある。
「巧遅」より「拙速」、「完璧」より「完了」を目指そう。そうすればすぐに修正できるし、自分の得手・不得手もわかる。結果が悪ければ、元に戻せばいい。
自分の動きにスピードを持たせれば、信頼と好感を得ることができ、評価にもつながる。人より先に動く「早さ」も意識すれば、他者や他社に勝つ最高の武器になる。
動く気になるためには、内発的な意思の力に期待するのではなく、何らかの仕組みを用意して、自分自身に行動を促すことも大切だ。トヨタの現場では、「仕組み化」や、新しい状態を常態にすべく定着させていく「標準化」という言葉がふだんからよく使われていた。
やるべきことが大きなことだったり、意欲がわかなかったりしても、小さな行動へと具体的に分解していけば、一つひとつのハードルは下がる。それらをメモに書き出し、本当にやるべきかことかどうかや、優先順位を見極める。そうやって、一つひとつの行動を選択・整理してやりやすくすれば、生み出せる時間を「頭を使う仕事」に割けるようになる。
新しいやり方を定着させた後、さらに飛躍していくために、従来の手法では到達し得ない「非常識な目標」を立ててみるというのも、トヨタでよく用いられていたやり方だ。過去の常識に囚われず、ゼロベースで考え直さなければならないので、知恵を絞ることにもなり、新しい発想ができる。達成後に待っている未来を想像すれば、前向きな気持ちを保つことができるだろう。
Actionという言葉には、振る舞いという意味も含まれる。結果を出す人は、仕事での振る舞い方に特徴がある。時間あたりの質を高めるために何をすべきかを常に考えているのだ。
著者はトヨタ時代、慣れない作業でたくさん汗をかいて悦に入っていた時、先輩に「何を頑張ったって言ってんの? 作業まだ遅いんだけど」とたしなめられた経験がある。「頑張る」の基準について問われたのだった。
勤勉さも努力も、結果に繋がらなければ意味がない。だから、何が成果に繋がり、どうしたら成果を最大化できるのかを考えよう。貴重な時間を意味のないことに浪費していないか、仕事の手を休めて振り返ってみよう。
成果を出し続けるためには、仕事を楽しく、気持ち良く進められることも重要である。たとえば、作業がサクサク進むよう、最高水準の道具をそろえるのも一案だ。仕事のできる整備士ほど、最高級ブランドの道具を自分自身でコツコツ買い揃えていたりするものである。
運やツキは、迎え入れられる体制が整っているからこそ、呼び込まれる。
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