劇的に変化していく時代においても幸せに生き抜いていくためには、まず自分の30年後を想像してみよう。自分はどうなっていたいのか、そのために毎日何をすべきかを考えてみるとよい。長寿時代に生きるわたしたちは、どの年齢であっても、自分自身の人生デザインを練ることが必要だ。
どうしても未来を想像できないという人は、「私淑」という手立てを使う方法もある。「私淑」とは、「直接教えを受けるわけではないがその人を尊敬して師と仰ぎ、模範として学ぶこと」である。私淑するのは、過去の偉人でも、どこの国の人でもいい。理想とする人の人生を調べれば、必ずその人の苦しみや挫折も見えてくる。そうすれば、自分が今迷っていることも、うまくいっていないことも受け入れることができ、自分を信じる力が湧いてくるはずだ。自分を信じれば、未来への道は必ず開けてくる。
自分の未来をつくっていくために、できることからやっていくといっても、人から与えられた仕事にばかり時間を使っていては、自分の人生を生きられない。
そのため重要なのは、生活の糧を得る「仕事」のほかに、自分にとってやるべきであり、世の中のためになるような志の活動である「志事(しごと)」を持つことである。
「仕事」と、「志事」を続けるためには、私的な部分を支えてくれる家族との関係や、健康も大切にせねばならない。そのための活動が「私事(しごと)」である。
これら、「仕事」「志事」「私事」の3つの「しごと」がそろっていることが、幸福な人生の条件ではないだろうかと著者は述べる。どれかに偏ってしまうと、人生はうまくいかなくなってしまう。
「仕事」「私事」は、多くの人が持っているかもしれない。だが、「志事」はどうだろう。もし60代、70代になって、自分が世の中の役に立つという実感がなくなってしまったら、生きる喜びも感じにくくなってしまうのではないか。「志」が見つかりにくければ、前項で述べた「私淑」できる師を探してみるといい。師の人生にならって自分の人生をプランするうちに、自分なりの志が見えてくる。
3つのしごとは、生活のすべてに関わってくるため、自分の信条や趣向、環境など人生そのものに影響を与える。3つのしごとの考え方を理解しても、なかなかそれが自分のものにならないという場合も多いかもしれない。
著者は、3つのしごとを自分のものにするために、生活や仕事や自分自身を初期化(リセット)することを提案している。デンマークの人々は、大切な伝統は捨てずに、国の仕組みや個人の生き方を時代や環境に合わせてリセットしていくのが上手だという。それが、人口わずか570万人の小国が、社会保障のみならず、環境エネルギーやデジタル化、医療技術、オープンイノベーションなどで世界の最先端を歩んでいる理由だ。
リセットの目的は、「新しい情報を処理するための環境を整える」ことである。次の3つのリセットを試してみるとよい。
1つ目は、家の環境をリセットすることである。物が多いこと、テレビやパソコンや音楽などから刺激があることは、雑念を増やすことになりかねない。ミニマリストになる必要はないが、可能な範囲で整理して、あそびの空間を増やしてみてはどうだろう。
2つ目は、デジタルとの付き合い方をリセットすることだ。インターネットにアクセスするときは目的意識を持ち、SNSの使い方を考え直し、電子機器の使用を1時間減らしてみよう。その1時間を他のことに使うことで、新しい可能性が見いだせるかもしれない。
3つ目は、自分自身をリセットすることだ。自分の考えだと思っていることでも、じつは社会的な立場からの定義づけであったり、広告などへの衝動的な自動反応であったりする部分も大きい。簡単なことではないかもしれないが、なるべく雑念や妄想を持たず、日常的に「今この瞬間」に集中することで、意志で決める本当の自分を探しだしてみよう。
3つのしごとの実践にあたって、小国でもアメリカやロシアなどの大国と対等に渡り合ってきたデンマークの知恵に学ぶところは大きい。
本要約では、本書で紹介されている4つの知恵の中から、「共生と共創」、「コンセンサス」という2つをご紹介する。
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