自分の人生に意義をもたせたいのなら、世界の現状を把握するべきだ。現在、人類の暮らしは今後も改善され続けるという予測が、膨大なデータによって提示されている。
まず、人類の平均的な生活水準は30年ほど前から急上昇している。とくにインドと中国のGDPの増加は顕著だ。2008年から2015年にかけて、インドが2.3倍、中国が2.4倍に急増した。また、1990年から2015年にかけての1人あたりのGDPはドル換算の購買力平価で5400ドルから1万5400ドルと、およそ3倍になった。
世界の貧困についてはどうだろうか。1985年に極貧状態で暮らす世界人口は2015年の3.5倍も多かった。ここでの極貧層の定義は、1日当たりの生活費が1985年で1.25ドル、2015年で1.90ドルの人を指す。現在、こうした極貧状態の人口は世界人口の10%を下回った。
世界中で暴力が減っていることも判明している。「人間の安全保障報告計画」の推計によると、暴力による年間の死者数を人口10万人あたりで表すと、5000年前は500人、中世は50人となり、現在は6.9人に減少した。ヨーロッパ地域だと1人未満となる。
このように、世界の今後は順調に見えるが、実際には懸念材料も山積み状態となっている。まずはマクロの視点で見ていこう。
今後、世界人口は少子化と平均寿命の延びによって高齢化を免れない。65歳以上の高齢者人口は増加し続けており、世界人口に占める割合は1950年の5.1%から2000年の7.7%に上昇した。今後、途上国と中進国は先進国よりも急速に高齢化する。急速な高齢化はそれらの国の経済成長や社会保障の維持を困難にする。
さらには、大気汚染や農地の被害といった地球環境の悪化も見逃せない。気候変動により世界の食糧生産量も低迷する傾向がある。
また、加速する富の偏在も問題となっている。クレディ・スイスの「2015年度グローバル・ウェルス・レポート」によると、現在、富裕層上位10%が世界の富の87.7%を所有しているという。先進国の中産階級が貧困化していることも、反乱を起こす可能性を高めるといえよう。
多くの国が公的債務の解決を先送りにしており、債務は膨張し続けている。財政破綻になる可能性のある国も多い。最近では、ギリシャが財政破綻した。イタリア、ポルトガル、フランスも財政破綻の危機に瀕する可能性がある。
次に家族というミクロな単位でみてみよう。従来型の家族モデルは変化を遂げつつあり、離婚率の上昇により母子家庭が増加している。一人親の子供は退学する可能性が高く、教育レベルや就労にも悪影響を及ぼしている。
家族の絆が弱くなるに伴い、カルト集団や原理主義などの新たな帰属形態が発展している。2003年にマーガレット・シンガーは、アメリカにはおよそ5000のカルト集団と、その250万人のメンバーがいると推定している。また、宗教原理主義者によるテロ事件は2000年250件だったが、2012年には1750件へと増加している。このままでは憤懣が世の中を覆いつくすだろう。
経済、社会、政治の混乱を引き起こす諸悪の根源は何だろうか。いくつかの主張がある。たとえばマネーや、精神性の喪失などを原因として挙げる人もいる。
しかし、著者はマネーが暴力の要因だと考えていない。そもそもマネーは富の交換に関する話し合いを円滑にし、暴力を減らすための手段として開発されたものだ。
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