竹中氏は、現在は技術革新に裏付けられた「革命の時代」であるという。18世紀の産業革命が人類の生活を一変したように、グローバリゼーションとデジタル技術よって社会的なインフラが変わり始めている。
例えば経済では、ソーシャル・ネットワーキング業という新しいビジネスが生まれている。その中でも、シェアリング・エコノミーやフィンテックは新しいインフラといえる。
まず、シェアリング・エコノミーとは、モノやサービスなどの交換・共有によって成り立つ経済分野のことだ。例えばUber(ウーバー)やAirbnb(エア・ビー・アンド・ビー)などが注目されている。Uberは、スマートフォン経由で一般人が自分の空き時間と自家用車を使い、ドライバーとしてサービスを提供できる。
また、Airbnbは、空いている部屋や家を貸したい人と借りたい人とのマッチングサービスとして、世界中で広がっている。これまでは、旅館やホテル、タクシーなどの社会的なインフラがなければ、安心して宿泊や移動ができなかった。しかし、スマートフォンとビッグデータを活用することで、国や都道府県が許可を与えなくても、安全と快適を確保できるようになった。こうした動きは、新たに施設をつくるのではなく、今あるものを活用して経済を活性化させる新しい事業のやり方だといえる。
金融分野におけるビッグデータの活用が進めば、フィンテックがいっそう進むと竹中氏はいう。フィンテックとは、銀行が一括して提供しているサービスを細分化すること(アンバンドリング)である。新しいテクノロジーとビッグデータを組み合わせれば、銀行という社会的インフラがなくても、安心して預金も決済もできるようになる。
今まで誰かに送金するときは、銀行経由で手数料がかかっていたが、それがほとんど無料になる可能性もある。さらには、ビッグデータを活用した、顧客満足度の高いサービスを打ち出すなど、新たな事業機会につながることが予想される。
ドイツは2011年から「インダストリー4.0」という言葉を使いはじめた。翌年の2012年、アメリカやイギリスもビッグデータを整理するための準備をはじめている。
一方、日本の場合、2016年になってはじめて成長戦略の中で、「第四次産業革命」という言葉が出てきた。ヨーロッパやアメリカに比べると、4、5年のギャップが生じている。このスピード感の欠如が日本の弱さといえる。
ITやソーシャル・ネットワーキングの分野では、ファースト・ムーバー・アドバンテージが働きやすい。はやく開始・実行したほうが、あとから開始・実行したものよりも優位に立てるという原理のことだ。加えて、出口氏は最初にやった人だけが基準やルールをつくることができるという。一度栄えた国や社会は、時間との競争に負けると滅んでいくことは、歴史を振り返ると一目瞭然である。
現在、年金について、さまざまな俗説が世間にあふれている。例えば、「公的年金保険は破たんする」「将来年金がもらえないようになる」といった内容だ。これに対し、出口氏は「日本の公的年金保険は破たんしない」という。
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