テレビCMや動画などは、一時的に大きな話題となる。しかしそれも束の間、一瞬にして世間から忘れられてしまう。たとえば以下のようなケースだ。
・実施したイベントは大盛況に終わり、スペシャルサイトへのアクセスも多く集めた。しかしその効果は一時的で、長くは続かなかった。
・テレビ番組で取り上げられ、大勢の客が店舗へ押し寄せた。だが売上はすぐ元に戻ってしまった。
・会員制ビジネスで打ち出した新規加入3カ月無料キャンペーンが成功したものの、有料会員への移行につながらない。
長い間、話題化は新規顧客の獲得において効果的だとされていた。しかしいまの時代、「一過性で瞬間的なリーチ」はもはや通用しなくなっている。重要なのは新規顧客へリーチした後にどうするか、そしてリーチする前に短期キャンペーンや単発施策をどのように組み立てるかなのである。
短期キャンペーンや単発施策を行なううえでは、興味や関心をもってくれた人々の「好意(価値への支持)」が積み重なり、資産化するような明確な設計が必要である。
短期キャンペーンを実施して人々の好意を集めても、その後放ったままにしている企業は意外と多い。たとえば「春のキャンペーン」など、CMも取り入れた統合型のキャンペーンを行なったあとはとくに何もせず、忘れた頃に「夏のキャンペーン」を仕掛けるといったケースである。このようなぶつ切りの単発施策では、人々の好意が積み重なるはずもない。
もちろん短期キャンペーンや単発施策などの取り組み自体は重要である。認知獲得をはじめ、一時的にでも売上を刺激する効果が見込めるからだ。またキャンペーンを行なうとなれば、社員の士気も高まるだろう。
しかしだからこそ、一過性で終わらせてしまうのはあまりにもったいない。短期キャンペーンや単発施策のみではなく、効果を資産化するためには、中長期のファンベース施策も加える「全体構築」が必要だ。
ファンベースは売上を中長期的に支える土台である。企業の価値を支えてくれる、支持母体をイメージするとわかりやすいだろう。しかしこれは現在の価値を変えずに守りに入ることを意味しない。改善をくりかえしてファンと一緒に成長することも、またファンベースなのである。
これからのマーケティングにおいて、ファンベースが必要な理由は以下の3つだ。
1つ目は、売上の大半を支え伸ばしてくれるのはファンだからである。某飲料メーカーの調査によると、企業が提供する価値を強く支持する「コアファン」と呼ばれる人々が、全体の46%もの消費量(≒売上)を支えていることがわかった。コアファンは顧客全体のわずか8%にすぎないにもかかわらず、である。これに37%の「ファン」の消費量を加えると、なんと売上全体の約90%にまで達する。まさにファンは企業の売上を支える大黒柱なのである。
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