現代社会で欠かせないインフラ、それがインターネットだ。なかでもソーシャルメディアの普及は、誰もが自由に情報発信できる社会をつくった。総務省の調査によれば、すでに79%の人がソーシャルメディアを利用しており、20代に限れば98%だという。消費者は企業が提示する情報や身近な友人のクチコミだけでなく、多種多様な媒体から情報を得られるようになったわけだ。
こうした時代の趨勢にともない、マーケティングのトレンドも変わりつつある。1980年代は「シングルメッセージ」、つまりマスをターゲットとした旧来型のマーケティング手法が主流だったが、1990年に入ると、年代や性別によって消費者を分類する「セグメンテーション」が流行した。2000年代になると、個人を選別し、個人の属性や購買履歴などから適した広告を打つ「個人ターゲット」がおこなわれるようになり、現在は「バイラル・ソーシャルインフルエンス」が台頭してきている。これはソーシャルメディアで消費者が紹介(クチコミ投稿)しやすいようにする広告のことで、バイラル(viral)という言葉が示すように、ウイルスのように拡散されることを目的としている。
ソーシャルメディアがビジネスに与える影響は大きい。ソーシャルメディアを活用している企業について調べたところ、ソーシャルメディアが売り上げや顧客増につながっていると考えている企業はとても多いことがわかった。またソーシャルメディア上の消費者同士のクチコミが、市場全体の消費額そのものを押し上げることも判明している。その額はじつに年間1兆円以上だ。
このようにビジネスにおいて、ソーシャルメディアの活用はとても重要だといえる。しかし日本企業のソーシャルメディア活用は、いまだ発展途上の段階だ。総務省の「平成28年通信利用動向調査」によれば、ソーシャルメディアを活用している企業はいまだ5社に1社程度である。ビジネスのソーシャルメディア活用の効果は多くの人が認めているものの、いまだ活用している企業は多くない。
ソーシャルメディア活用が日本企業でなかなか進まないのは、単純に「人材や知見がない」からである。逆にいうと、確かな知見をもってソーシャルメディアを運営すれば、それだけで他社との差別化につながるといえる。そこにビジネスチャンスも見いだせるだろう。
ただしソーシャルメディア活用にはリスクもある。その代表例が“ネット炎上”だ。ネット炎上とは、ある人や企業の行為・発言・書きこみに対して、インターネット上で多数の批判や誹謗中傷がおこなわれることを意味する。当然のことながら拡散を狙えば狙うほど、炎上リスクは高くなる。
炎上リスクはいたるところに存在する。どんなに発信に気を使っていたとしても、従業員の悪ふざけ写真が店の倒産を招くこともあるし、被災時に通常の営業活動を発信しているだけで炎上することもある。ネット炎上は年間1000件以上発生しているといわれ、とくにツイッターやスマートフォンが普及した2011年以降の増加は凄まじい。
とはいえ「炎上を避けるためにソーシャルメディアを極力使わなければいい」と安易に考えるべきではない。前述したように、それでは多くのビジネスチャンスを逃すことになる。大切なのは炎上のリスクを回避しつつ、ソーシャルメディアをうまく活用することなのだ。
炎上にうまく対応するには、炎上の実態を正しく理解することが必要である。
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