マイクロソフトは従業員12万人、売上高10兆円を誇る世界最大のソフトウェア会社である。
そんなマイクロソフトにも長い低迷期があった。スマートフォン時代に完全に乗り遅れ、競争力が低下していたのだ。そんな会社がなぜ復活できたのか。
復活の立役者となったのが、マイクロソフトの3代目CEOに就任したサティア・ナデラ氏である。2014年にCEOに就任したナデラ氏は、驚くべきことにマイクロソフトという会社の「ミッション」そのものを変えた。自分たちは何のために存在しているのか、あらためて問いかけたのだ。
ナデラ氏が新たに掲げたミッションは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」というものである。大胆なことのようにも思えるが、ミッションがいまの時代とそぐわなければ、会社は未来とずれた方向に向かってしまう。
ちなみにミッションは過去にも変わっている。創業者ビル・ゲイツ氏が掲げたミッションは「すべてのデスクと、すべての家庭に1台のコンピューターを」であったが、2代目CEOスティーブ・バルマー氏は「世界中のすべての人々とビジネスのもつ可能性を最大限に引き出すための支援をすること」をミッションとして掲げていた。
会社を変えるためには、カルチャーを変えなければならない。ナデラCEOはそう考えていた。
マイクロソフトのカルチャーを変革するうえでキーワードとなったのが、「グロース(成長)マインドセット」である。この言葉が象徴するように、ナデラ氏はCEOに就任するとすぐに大きなチャレンジをおこなった。それこそがソフトウェアビジネスからクラウドビジネスへの大転換であり、Windowsの無償化であった。
クラウドビジネスは、一度売りこんで買ってもらえばいいという類のものではない。信頼関係を築き、さまざまな提案をし、長期間使ってもらうという商売をしなければいけない。そこには発想の大転換が必要だった。
ナデラ氏の戦略は「オープン」という言葉に集約できる。ナデラ氏はCEO就任後、競合企業と次々に提携を結んでいった。いまやアップル、Linux、オラクルといった企業も、マイクロソフトのパートナーである。
それまでのマイクロソフトは、自社ですべてをまかなおうとしていた。しかしオープンな姿勢をもたなかったことが、結果としてマイクロソフトを停滞させた原因になった。
サティア氏がCEOになって変わったのは、iPhoneはマイクロソフトの敵ではなく、マイクロソフトのアプリやサービスを使ってくれるすばらしいデバイス、という発想をするようになったことである。iPhone向けの魅力的なアプリをつくって、iPhoneでもっとマイクロソフト製品を使ってもらう、という戦略に切り替えたのだ。クラウドサービスを導入してもらい、そのトラフィックそのものをマネタイズすれば、使ってもらうほど収益になるし、デバイスやOSは他社製品でもかまわないというわけである。
マイクロソフトの変革がうまくいったのは、カルチャーの変革に成功したことが大きい。だがカルチャーを変えるのは簡単なことではない。一体どんなことをしたのか。
アメリカ本社でダイバーシティ推進を担っているトム・フィリップス氏によれば、カルチャーの重要性を社員に意識してもらううえで、次の10の行動規範が役に立ったという。
3,400冊以上の要約が楽しめる