近年、私たちの周囲で、APIを使ったソフトウェアやサービスが増えている。例えば、「Googleマップ」。ホテルやお店などのホームページを検索すれば、たいていそこにはGoogleマップが表示されている。これが可能なのは、GoogleがGoogleマップのAPIを公開しているからだ。
APIは「Application Programming Interface」の略である。いわゆる、「ソフトウェアの機能を別のソフトウェアやサービスなどと共有する仕組み」だ。APIを利用するメリットは何か。それは、あるソフトウェアやサービスが持つ機能の一部を、簡単に自社のWebやアプリに組み込み、利用できる点にある。APIは自社のビジネスの拡大や利便性の向上に役立つ。
APIを公開する企業は世界的に増加傾向にある。IBM社の試算では、2018年におけるAPI市場の規模は、2兆2000億ドル(約250兆円)にのぼる。まさに、大規模な経済圏(APIエコノミー)といえる。いまやAPIは、IT企業やWebコンテンツ関連以外の多くのビジネスパーソンにとっても、無視できないものになりつつある。
APIには、利用者側はもちろん、その提供側にも大きなメリットがある。自社の機能やサービスを、APIという形で切り出す。これにより、それまで自社と接点のなかった新規企業に活用してもらえる。それは、コラボレーションを生む可能性がある。
例えば、チャットツール「Slack(スラック)」を提供する米Slack社。同社は、チャット機能のAPIを公開したことで、ソフトバンクグループから約2億5000万ドル(約280億円)の出資を受けるに至ったという。これによってSlack社は、未上場企業でありながら、5000億円を超えるともいわれる高い企業評価額を得た。
Slack社がこれほどの高評価を得られた最大の理由は、同社が「Slack」というチャット機能をAPIで公開したことにある。自社のサービスをAPIで提供したことで、それが広く利用されることになった。そして、そこに大規模な経済圏が生まれた。だからこそ、ソフトバンクは「Slack」の未来に価値を見出し、高い評価をつけたのだ。
このように、企業同士のつながりを効率的に作り出せる点が、APIエコノミーの本質的な魅力である。APIの提供側からすると、「APIで事業をどう切り出し、どう利用してもらうか」が極めて重要だといえる。
タクシーをスマホで簡単に呼べるサービスとして、利用者が拡大しているUber。Uberは、「乗客とドライバーを結ぶマッチングサービス」といえる。なぜなら、米Uber Technologies社は車両を保有せず、専属のドライバーと契約したり、別のタクシー会社と提携したりして配車するからだ。乗客はスマホアプリを利用して、ドライバーとやり取りをする。
このような配車サービスの提供においては、「地図」「決済」「コミュニケーションツール」などの機能が必要になる。Uberはこれらの機能を、他社が提供するAPIでカバーしている。
注目すべき点は、Uberに組み込まれているAPIは、「すでに完成された他社のサービスそのもの」だという点である。Uberに組み込まれた地図機能は「Google マップ」だ。他社のサービスそのもの(Google マップ)を、自社のサービス(Uber)を構成する部品のひとつとして組み込んでいるのだ。
この事例が示すとおり、APIは他社サービスと連携するためのものに移行しつつある。さらに今後は、いくつかのAPIの組み合わせからだけでなく、既存のサービスの組み合わせからも、新サービスが生まれるだろう。
APIは、「既存のサービス+既存のサービス=新しいサービス」という公式を実現する可能性を秘めている。既存のサービスを組み合わせれば、ゼロから作らなくても新規事業を立ち上げられるようになるからだ。今後は、APIの重要性に気付いてそれを活用できる人が成功を収めるだろう。
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