APIエコノミー

勝ち組企業が取り組むAPIファースト
未読
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APIエコノミー
出版社
出版日
2018年02月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

近年、さまざまなWebツールの開発とその活用で、企業の生産性は最高の域にまで高められたかのように見える。だが、著者曰く、日本企業の生産性はまだまだ低い。そうした事態の改善に役立つのが、本書のテーマ、APIである。

APIはビジネスプロセスを大幅に効率化し、かつ高速化する。業務効率だけでなく経営効率の向上に非常に効果的な手段である。既存の多くの市場は、すでに飽和状態に達し、頭打ちとなっている。APIはそうした現状に風穴を開け、さらなる革新を促す可能性を持っているのだ。最も身近なAPIの例といえば、いまや多くのホームページに見られる「Googleマップ」の表示だろう。これが可能なのはGoogleがGoogleマップのAPIを公開しているからにほかならない。私たちはそれを活用するだけで、新しいサービスを生み出せるようになっている。

APIの利用環境は今後ますます整備され、使いやすさを増していくだろう。それに伴い、新規事業を立ち上げるハードルも下がるはずだ。それはとりもなおさず、APIをうまく活用できるかどうかが事業の成功、ひいては企業の存続にさえ影響を与えうることを意味する。

海外ではすでにAPIが積極的に活用され、巨大な経済圏「APIエコノミー」が広がっている。もちろん、世界的な統一規格がないなど、課題も多い。しかし、このような潮流が私たちにまたとないチャンスを提供することは疑いようがない。本書はその波に乗り遅れないための必読の書となるだろう。

ライター画像
金井美穂

著者

佐々木 隆仁 (ささき たかまさ)
1964年、東京都生まれ。1989年、早稲田大学理工学部卒。大手コンピューターメーカーに入社し、OSの開発に従事したのち、1995年に起業。AOSテクノロジーズ社を立ち上げ、代表取締役社長に就任。2000年より、データ復元ソフト「ファイナルデータ」を発売し、2001年に日経サービス優秀賞受賞。2010年から2018年まで9年連続でBCN AWARDシステムメンテナンスソフト部門最優秀賞受賞。2012年にAOSリーガルテック株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2015年に第10回ニッポン新事業創出大賞で経済産業大臣賞(アントレプレナー部門最優秀賞)を受賞。2018年に日本初のAPI取引所となるAPIbankを設立。著書に「デジタルデータは消えない」(幻冬舎)、「30分で理解!イラストでわかるマイナンバーQ&A30」(日経BP)、「リーガルテック」(アスコム)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    APIとは、「ソフトウェアの機能を別のソフトウェアやサービスなどと共有する仕組み」をいう。例えば、「Google マップ」といった他社のサービスを、自社のサービスの一部として組み込み、利用することが可能だ。
  • 要点
    2
    APIを公開する企業は世界的に増加傾向にある。その市場規模は2兆2000億ドル(約250兆円)にも達するという試算もある。
  • 要点
    3
    複数のAPIを組み合わせれば新しいサービスを生み出せる。APIの重要性は経営効率を飛躍的に向上させるという点において、今後さらに増大するだろう。

要約

APIを知ろう

なぜAPIが必要なのか
Nuthawut Somsuk/iStock/Thinkstock

近年、私たちの周囲で、APIを使ったソフトウェアやサービスが増えている。例えば、「Googleマップ」。ホテルやお店などのホームページを検索すれば、たいていそこにはGoogleマップが表示されている。これが可能なのは、GoogleがGoogleマップのAPIを公開しているからだ。

APIは「Application Programming Interface」の略である。いわゆる、「ソフトウェアの機能を別のソフトウェアやサービスなどと共有する仕組み」だ。APIを利用するメリットは何か。それは、あるソフトウェアやサービスが持つ機能の一部を、簡単に自社のWebやアプリに組み込み、利用できる点にある。APIは自社のビジネスの拡大や利便性の向上に役立つ。

APIを公開する企業は世界的に増加傾向にある。IBM社の試算では、2018年におけるAPI市場の規模は、2兆2000億ドル(約250兆円)にのぼる。まさに、大規模な経済圏(APIエコノミー)といえる。いまやAPIは、IT企業やWebコンテンツ関連以外の多くのビジネスパーソンにとっても、無視できないものになりつつある。

APIエコノミーの魅力

APIには、利用者側はもちろん、その提供側にも大きなメリットがある。自社の機能やサービスを、APIという形で切り出す。これにより、それまで自社と接点のなかった新規企業に活用してもらえる。それは、コラボレーションを生む可能性がある。

例えば、チャットツール「Slack(スラック)」を提供する米Slack社。同社は、チャット機能のAPIを公開したことで、ソフトバンクグループから約2億5000万ドル(約280億円)の出資を受けるに至ったという。これによってSlack社は、未上場企業でありながら、5000億円を超えるともいわれる高い企業評価額を得た。

Slack社がこれほどの高評価を得られた最大の理由は、同社が「Slack」というチャット機能をAPIで公開したことにある。自社のサービスをAPIで提供したことで、それが広く利用されることになった。そして、そこに大規模な経済圏が生まれた。だからこそ、ソフトバンクは「Slack」の未来に価値を見出し、高い評価をつけたのだ。

このように、企業同士のつながりを効率的に作り出せる点が、APIエコノミーの本質的な魅力である。APIの提供側からすると、「APIで事業をどう切り出し、どう利用してもらうか」が極めて重要だといえる。

【必読ポイント!】 APIの可能性

他社サービスと連携するUber
mhong84/iStock/Thinkstock

タクシーをスマホで簡単に呼べるサービスとして、利用者が拡大しているUber。Uberは、「乗客とドライバーを結ぶマッチングサービス」といえる。なぜなら、米Uber Technologies社は車両を保有せず、専属のドライバーと契約したり、別のタクシー会社と提携したりして配車するからだ。乗客はスマホアプリを利用して、ドライバーとやり取りをする。

このような配車サービスの提供においては、「地図」「決済」「コミュニケーションツール」などの機能が必要になる。Uberはこれらの機能を、他社が提供するAPIでカバーしている。

注目すべき点は、Uberに組み込まれているAPIは、「すでに完成された他社のサービスそのもの」だという点である。Uberに組み込まれた地図機能は「Google マップ」だ。他社のサービスそのもの(Google マップ)を、自社のサービス(Uber)を構成する部品のひとつとして組み込んでいるのだ。

この事例が示すとおり、APIは他社サービスと連携するためのものに移行しつつある。さらに今後は、いくつかのAPIの組み合わせからだけでなく、既存のサービスの組み合わせからも、新サービスが生まれるだろう。

APIで新規事業を生み出す

APIは、「既存のサービス+既存のサービス=新しいサービス」という公式を実現する可能性を秘めている。既存のサービスを組み合わせれば、ゼロから作らなくても新規事業を立ち上げられるようになるからだ。今後は、APIの重要性に気付いてそれを活用できる人が成功を収めるだろう。

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要約公開日 2018.10.08
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