コンビニ各社はいま、加盟店向けに外国人雇用の説明会を開いたり、多言語対応のマニュアルを作成したりと、急ピッチで外国人スタッフの受け入れを進めている。たとえばローソンは他社に先駆けて、海外に専用の研修施設を作った。いまはベトナムと韓国に計5カ所の施設があり、日本の文化や店舗作業の事前研修をおこなっている。即戦力を育てるのが狙いだ。
日本のコンビニで働く外国人の多くは、日本語学校や大学で学ぶ留学生である。「留学ビザ」で日本に滞在する彼らが、コンビニでアルバイトすること自体は違法ではない。ただし「原則的に週に28時間まで」と定められている。
この「28時間」という規制は、世界的に見ればかなり緩いほうだ。英米などでは「学生ビザ」でのアルバイトは原則禁止だし、カナダやフランスでは20時間程度までである。「週に28時間」は仮に自給1000円で計算すると、月に10万円ほどの稼ぎだ。
問題はいまコンビニで働いている留学生のほとんどが、多額の借金を背負って来日していることにある。日本語を勉強しながら働ける「留学ビザ」で入国するため、彼らは出国前に1年目の学費や斡旋業者への手数料など、合わせて100万円を超すような大金を支払っている。平均月収が数万円の国の若者が工面するには、借金をするしかない金額だ。
なかには「日本に行けば勉強しながら月に20万円稼げる」という斡旋業者の甘言に乗って来日する人もいる。しかし「週に28時間まで」のルールを守っていては、前述したように月10万円を稼ぐのがやっとだ。
2年目以降の学費を払えずに退学してしまうと、当然だが留学ビザでの滞在資格はなくなる。となると借金を背負ったまま帰国するか、強制送還を覚悟でオーバーワークするか、もしくは最終手段として失踪するかしかなくなる。
いずれにせよ、来日前に思い描いていた明るい未来はそこにはない。
2017年10月末時点の厚生労働省の集計によると、日本にいる約27万人の外国人留学生のうち、約26万人が「資格外活動(=アルバイト)」をしている。つまりほとんどの留学生が、何らかのアルバイトをしていることになる。
留学生アルバイトの数は5年前と比べて約2.5倍に増えた。外国人労働者全体の数も増加傾向にあり、この10年で約2.6倍に増加、現在は128万人である。これは届け出が義務化されてから過去最高の人数だ。
外国人労働者の職種でもっとも多いのは「製造業」の30.2%で、そのほとんどが技能実習生である。次いで多いのがコンビニやスーパーなどを含む「卸売業・小売業」の13%、そして「宿泊業・飲食サービス業」の12.3%が続く。
すでに多くの職種で、現場に外国人労働者がいるのが当たり前の状況となっている。たとえばコンビニでおにぎりをひとつ買うとしよう。おにぎりを買うレジスタッフの多くは外国人だ。また工場から配送されたおにぎりを検品し、陳列するスタッフにも外国人が少なくない。おにぎりの製造工場や、具の「いくら」や「おかか」の加工工場でも、多くの技能実習生が働いている。さらに米農家やカツオ漁船でも、外国の技能実習生が働いている可能性が高い。
このようにあまり人目に触れていないだけで、日本はすでに外国人労働力抜きでは成り立たない経済構造になっているのである。コンビニの外国人スタッフは全国で約4万人いるが、128万人いる外国人労働者全体から見れば、そのほんの一部にすぎない。
外国人技能実習制度の新たな対象職種に、いま「コンビニ」が加わる可能性が出てきている。
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