破壊者

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出版社
出版日
2018年07月15日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

学生時代に経験したレンタルレコード店の運営。それが著者のビジネスの原点だった。そこからどのようにしてビジネスを成長させていったのか――著者の音楽に対する思い、仕事に対する姿勢、人生観などが本書にはぎっしりと詰まっている。

本書のスタイルは少々変わっている。著者はこれまで毎月1回、8年7カ月にわたって、雑誌『ゲーテ』の連載でその時々の想いを話してきた。その103の「ひとりごと」を結集させたのが本書だ。著者自身は、読者に向かって話しているようでいて、実は自分自身に対して自問自答していたのだと振り返っている。古いものは2009年に書かれており、今とは考えが異なる部分もそのまま収録されている。

著者が浜崎あゆみ、倖田來未、EXILEなど、ヒットを連発するアーティストたちを生み出せたのは、いったいなぜなのか。本書からは、その理由が垣間見える。著者と要約者、身を置く業界は違えど、本書から学ぶものは期待していた以上に多かった。

その一つが「俺ならこうする」という発想だ。すでに成功している人と違うことをするのは、得てして及び腰になるものだ。しかし著者は、周囲に流されたり同調したりすることがない。自分の感性を信じ、自分の頭で考えて行動する。その結果がエイベックスなのだ。

プロフェッショナルとして自分を高みに引き上げたいと考えている読者に、自信を持っておすすめしたい。

ライター画像
金井美穂

著者

松浦 勝人 (まつうら まさと)
1964年神奈川県生まれ。
エイベックス株式会社代表取締役会長CEO。
1983年日本大学経済学部に入学し、1985年貸レコード店「友&愛」にアルバイトとして入る。1986年に(株)ミニマックスを設立。代表取締役になり、「友&愛」上大岡店の経営を行う。1988年エイベックス・ディー・ディー(株)を東京都町田市に設立し、レコード輸入卸販売業を始める。1990年に自社音楽レーベル「avex trax」を設立し、「JULIANA’S TOKYO」CDシリーズなど様々なダンスコンピレーションアルバムを発売。1993年に邦楽第一弾アーティスト、TRFがデビュー。Every Little Thing、浜崎あゆみ、倖田來未、EXILEほか数々のアーティストを手掛け、2004年エイベックス・グループ・ホールディングス(株)代表取締役社長就任。総合エンタテインメント企業として音楽・映像に関連した様々な事業を展開。2018年エイベックス(株)代表取締役会長CEOに就任し、新規事業やイノベーション領域に注力する。

本書の要点

  • 要点
    1
    大学時代に経験した小さなレンタルレコード店の店舗運営が、著者のビジネスの原点だ。その経験があるからこそ、お客さんの感覚を身体で感じ取れる。
  • 要点
    2
    著者は、その人と真正面から向き合い、思ったことは何でも口に出す。その背景には、自分を印象づけたいという気持ちがある。失礼なことをすることもあるが、それは相互理解があってこそだ。
  • 要点
    3
    若い頃とは違い、著者に見栄はなくなった。しかし相手への気づかいは忘れない。レストランに行けば、売り上げを期待されていることを感じ取ってワインやシャンパンを注文するし、決してドタキャンはしない。

要約

【必読ポイント!】はじまり

ユーロビート
Rawpixel/iStock/Thinkstock

著者のビジネスは、大学時代に経験した小さなレンタルレコード店の店舗運営から始まった。300円で借りられるレコードを棚から引き抜き、ちらっと見ただけで戻してしまうお客さんを見ているうちに、お客さんの感覚を身体で感じ取れるようになっていった。ライバル店に勝ちたいという想いから、レコードランキングを作って掲示したり、入会金無料キャンペーンを実施したり、夜中に電柱に捨て看板を貼ってまわったりもしたという。

レコード会社としてのエイベックスは、イタリアでユーロビートのレコードを制作し、それを日本に輸入することから始まった。業界では「ユーロビートなんか売れない」と言われたが、普段から何千曲ものユーロビートを聴き込んでいた著者には勝算があった。ユーロビートと日本の歌謡曲は同じ構造だからだ。

イタリアで制作したのはわけがある。日本では権利上、レコード会社の垣根を越えたコンピレーションアルバムは作れない。ところが、いい曲だけを集めたコンピレーションアルバムをイタリアで制作して輸入するのは、何ら問題がなかったのだ。

そうしてできたのが『SUPER EUROBEAT』シリーズだ。800円で作り、2300円で販売した。2万枚売れればペイするが、結果は大儲けだった。

ライバル

著者のモチベーションは「敵をたたきつぶすこと」である。レンタルレコード店で働いていたときは向かいの店が、ダンスミュージックのCD販売を始めると、東芝EMI(現・EMIミュージック・ジャパン)やアルファレコードがライバルになった。そして小室ファミリーがミリオンセラーを連発するようになると、小室さんがライバルになった。

小室さんのやり方は、すべてひとりで手掛けるというものだった。作詞作曲とアレンジにとどまらず、歌わせるアーティストすら自分で見つけるうえ、プロモーションまで一貫してやる。そんなやり方は小室さんにしかできない。

一方で、著者の周りには各分野に秀でた人材がたくさんいた。レコード店での経験から、売れる音楽かどうかは自分で判断できたので、彼らと力を合わせて曲を作る道を選んだ。小室さんに追いつくだけではなく、もっといいやり方があると考えたのだ。

浜崎あゆみ
dannikonov/iStock/Thinkstock

初めて自分の名義でプロデュースしたのが浜崎あゆみだ。そのときも、周りの意見に左右されることはなかった。「浜崎あゆみは絶対に売れない」という業界関係者もいたが、そんな声には耳を貸さなかった。著者が浜崎にかかりきりになっていることをよく思わない社員には、「お前らのボーナスをこの子が稼いでくれるようになるよ」と言っていたという。

浜崎には、最初から「素でいけ」と言っていた。自分のことを「あゆ」と呼ぶなど女の子に嫌われる要素はあったが、彼女にはきちんとした内面がある。その内面さえ理解してもらうことができれば、最初に嫌われていればいるほど「好き」への振れ幅が大きくなるとわかっていた。いい詞を書くんだから、人生すべてを暴露してしまえという戦略である。

実際、

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要約公開日 2018.09.24
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