暗闇でも走る

発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由
未読
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発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由
未読
暗闇でも走る
出版社
出版日
2018年04月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

発達障害、うつ、ひきこもり、DV、家庭崩壊……「生きにくさ」の原因を、いくつも抱えてきた著者。生まれもった環境は、自分ではどうにもならないものだ。しかし何度人生に絶望しても、彼はそれだけでは終わらなかった。この地獄から脱出したい、幸せになりたいという願いを強く抱き、事業を立ち上げた。そして暗闇の中にあっても、何度でもやり直せるという思いを伝えるため、本書を執筆した。

いまの日本では、うつ病やひきこもりなど挫折を経験した人、勉強する意味や働く意味に悩む人が少なくない。著者自身、家庭や学校に信頼できる人のいない状況から、友人を得て人に感謝できるようになるまでには、血のにじむような努力を必要とした。だが最終的には自分のミッションに巡り合った。そうした経験が、現在の原動力となっているという。

本書は困難を抱える人々に、暗闇で絶望しないコツと人生をやり直す勇気を与えてくれるだろう。暗闇のまっただ中で一歩も動けなくなったとき、どうしようもない困難にぶつかったとき、寄り添ってそっと背中を押してくれるはずだ。

これはただのサクセスストーリーではない。人生への希望を捨てずに走りつづけ、現代の日本で本書を発表してくれた著者に感謝しながら、噛みしめるようにして読みたい一冊である。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

安田 祐輔 (やすだ ゆうすけ)
1983年横浜生まれ。不登校・中退・ひきこもり・うつ・発達障害・再受験など、もう一度勉強したい人のための個別指導塾「キズキ共育塾」などを経営するキズキグループ(株式会社キズキ/NPO法人キズキ)代表。発達障害によるいじめ、一家離散、暴走族のパシリ生活などを経て、偏差値30からICU(国際基督教大学)教養学部国際関係学科入学。卒業後、大手商社を経て2011年に「キズキ共育塾」開塾。講師の多くが挫折経験をもち、生徒の心に寄り添う指導が評判を呼び、様々な理由で学校に行けない若者やその親から問い合わせが殺到、多くのメディアに取り上げられる。2018年4月現在、全国に5校(代々木・池袋・秋葉原・武蔵小杉・大阪)。外出困難者のためにスカイプ授業なども展開。また、中退予防のための大学への講師派遣・研修、貧困家庭の子どもの学習支援プロジェクトなども立ち上げ、多岐にわたり若者を取り巻く社会問題を解決する活動をおこなう。

本書の要点

  • 要点
    1
    努力はどんな願いでも叶うわけではないが、過去の自分よりも成長した気分にさせてくれる。とくに勉強や進学は成果がわかりやすく、若者にとって困難から脱出するきっかけとなりうる。
  • 要点
    2
    人生をやり直すためのコツは2つある。1つは「こうじゃなきゃいけない」という思い込みを外すこと、もう1つは自分で変えられるものだけに注目することである。
  • 要点
    3
    大きな挫折経験は、のちの自分を形作る「物語」となる。他人の評価軸ではなく自分の「物語」に沿って、何が自分の幸福なのかを見定め、自分の納得する道を選ぶことが、幸福につながる。

要約

生い立ち

発達障害・家庭崩壊

著者は幼いころから発達障害を抱えており、一言でいうとドンくさい子どもだった。集中すると他の音が聞こえなくなってしまう特性のせいで、小学校3年生でクラス中から無視されるいじめにあってしまう。

また女癖の悪い父はめったに家に帰らず、家族に暴力をふるうことが日常であった。小学校高学年になる頃には母も家を空けるようになり、著者は孤独を抱えると同時に、その孤独を両親に埋めてもらうことはできないと悟るようになる。

「人に期待しないこと」「孤独を必要以上に感じないこと」を処世術として学んだ著者は、一人で強く生きようと心に誓った。

立派な人間になるという「復讐」
Kitzzeh/iStock/Thinkstock

「いい大学に行って、いい仕事につけば幸せになれる」という母の言葉に、著者は反発していた。両親はともにいい大学を卒業していたが、けんかが絶えなかった。そうした姿を見て、学歴や給料が人を幸福にしてくれるわけではないと確信していたのだ。

著者は11歳のときに家庭からの自立を求めて必死に勉強し、全寮制の中学校に入学。しかしまたもいじめにあい、結局2年で公立中学に転校する。その後も勉強についていけず、偏差値の低い公立高校へと進むと、今度は不良たちに絡まれた。アルバイトを始めても人間関係がうまくいかず、職場を転々とする。さらに父の再婚で、継母からも心理的虐待を受けるようになった。

著者はある時、なぜ普通の家庭に生まれることができなかったのだろうと考えた。しかし生まれた環境のせいにしても何も状況は変わらない。運命に抗い、自分をいつもバカにしてきた人々に「復讐」するため、人の痛みがわかる立派な人間になりたいと、いつしか願うようになった。そしてこれまでの自分とは別の人生を歩むため、東京で大学生になることを思いつく。

生まれ変わる戦略

見つかった「勉強する理由」

中学から勉強をしておらず、そもそも勉強の仕方がわからなかった著者は、高校3年で予備校の門をたたく。しかし大手予備校では初級クラスにもついていけず、0から教えてくれると期待した別の予備校では、面談時に「風紀が乱れる」と一蹴されてしまう。

ほとんど受験を諦めかけた高校3年生の秋、9.11の同時多発テロ事件が起こった。テロの報復としてアフガニスタンが空爆された時、アメリカの学校で「アフガニスタンの人が多少死んでもしょうがない」と生徒たちが答えていた報道を見て、幼いころから不条理に敏感だった心が刺激された。

自分の力ではどうにもならないものに翻弄されている人々に対して、何かすべきだと考えるようになった著者は、国際関係を学ぶため、必死で勉強することを決意する。

中学レベルの学力から大学受験に挑む
kaipong/iStock/Thinkstock

勉強の甲斐あって、その年の大学受験では私立大学1校に合格。「やればできる」と自信をつけた著者は、希望通りの大学に合格するために留年した。アフガニスタンの空爆をきっかけに国連に興味をもったため、志望校を東大とICUに定める。

1日13時間、休憩する間も惜しんでひたすら勉強に打ちこんだものの、勉強の効率は悪かった。そこで進学校に通う弟に教えてもらい、勉強法を習得。勉強に疲れた夜は、哲学・社会学・政治学などの読書で、知識や読解力を鍛えた。

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要約公開日 2018.09.23
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