宇宙開発はもともと、NASAやJAXAなど、各国の国家機関が担っていた。そんななか、宇宙開発の商業化の流れが起きたきっかけは、2005年のアメリカ政府による政策変更といえる。スペースシャトルの後継機の開発は民間に任せて、NASAは一顧客として民間から打ち上げサービスを購入するという大転換があった。
2010年には、オバマ大統領が「新国家宇宙政策」を打ち出した。そこでは、民間企業の技術やサービスの購入、競争に通じる起業の促進、宇宙技術やインフラの商業利用、輸出の促進などがはっきりと示されていた。こうして、官民連携で宇宙開発の商業化が推進されるようになった。
宇宙ビジネスの世界市場「スペース・エコノミー」は、2005年に17兆円規模だった。これが、2016年には33兆円にまで拡大するという成長ぶりだ。これにともなって、世界の宇宙関連ベンチャーへの投資も急激に拡大している。
宇宙ビジネスの対象エリアは、「静止軌道」「低軌道」「深宇宙」の3つに大別される。
「静止軌道」は赤道上36000キロの軌道のことである。既に2000年以前から各国が気象衛星、通信衛星、放送衛星、測位衛星など、大型の衛星を打ち上げ、商業化に成功してきた。これらの衛星の寿命は通常、10年から15年だが、燃料の補給や修理によって、再利用、延命を図るサービスが始まろうとしている。
次に「低軌道」とは、宇宙と定義される高度100キロから2000キロ辺りまでを指す。2000年以降、この低軌道では様々な事業化が進んだ。例えば、高性能な小型衛星のコンステレーション(複数の人工衛星を連携させる運用法)により、精密な気象観測が可能となった。また、弾道飛行で約4分間の無重力体験ができる宇宙旅行が、新たな観光産業として注目を集め、実現に向けて加速している。
つづいて「深宇宙」とは、月、小惑星、火星などの遠い宇宙を指す。宇宙基地としての月開発、小惑星の資源開発、火星への有人宇宙飛行などをめざしている。
これまで開発対象としての宇宙は、専門家だけが携われる世界というイメージだった。しかし、この15年の間、ITビリオネアたちの宇宙開発参入が投資を呼び込み、市場の創出・拡大につながった。各国の宇宙予算、いわゆる公的なマーケットは、もはや全体の25%に満たない。民間のサービスやプロダクトが大きく伸びてきたのである。しかも、10数年でほぼ2倍という市場スケールになった。小惑星の資源開発や月の開発、火星への有人宇宙飛行が、もはや夢物語ではなくなったといってよい。
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