日本の分断

切り離される非大卒若者(レッグス)たち
未読
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切り離される非大卒若者(レッグス)たち
著者
未読
日本の分断
著者
出版社
出版日
2018年04月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

私たちは、自分たちが生きる現代日本を構成する人びとについて、どれだけ知っているだろうか。当たり前のことだが、社会には、自分が全く接したことのないタイプの人びとがいる。私たちは、彼ら彼女らとは全く異なる環境で生きているために、その人たちの生活や考え方を十分に理解できないし、推測すら容易ではない。しかし同じ日本社会に生き、自分と同じく日本社会を支える立場にある人びととして、彼らの存在は無視できないはずだ。

本書は、現代日本社会における格差の諸問題を「分断」という新たな切り口で捉えなおしている。生年とジェンダー、そして学歴という要素によって現役世代を8つのセグメントに分け、各セグメントを構成する人びとの生活を浮き彫りにする。ここでの学歴とは、どの大学を卒業したかという大学銘柄のことではなく、大卒か否かの違いである。そのうえで著者は、社会においてあまり言及されない「学歴」という要素が社会経済的地位を決定している事実を明示している。

本書によると、8つのセグメントのうち、若年非大卒男性たちは切り離された存在だという。なぜ彼らと他のセグメントとの間に大きな隔たりがあるのか? 日本社会を支える上で、彼らの力が不可欠なのはなぜか? 本書を読めば、自分が置かれた立場をはっきりと自覚するとともに、「彼ら」の存在を気にせずにはいられなくなるに違いない。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

吉川 徹(きっかわ とおる)
1966年島根県生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門は計量社会学、特に計量社会意識論、学歴社会論。SSPプロジェクト(総格差社会日本を読み解く調査科学)代表。主な著書に『現代日本の「社会の心」』(有斐閣)、『学歴分断社会』(ちくま新書)、『学歴と格差・不平等』(東京大学出版会)、『学歴社会のローカル・トラック』(世界思想社)、『階層・教育と社会意識の形成』(ミネルヴァ書房)、共著に『学歴・競争・人生』(日本図書センター)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    現代日本において「学歴」は、社会経済的地位を決定する上で根幹をなす要素である。非大卒者層は、雇用機会と待遇において大きな不利益を被っている。
  • 要点
    2
    現役世代は、生年とジェンダー、学歴の3つの観点から、8つのセグメントに分けられる。セグメントごとに、次世代を産み育てる、この先の日本社会を育てるなどといった異なる役割を担っている。
  • 要点
    3
    8つのセグメントのうち、「レッグス」と名付けられた若年非大卒男性は、労働市場に最も長く居続けなければならないにもかかわらず、十分に力を発揮できない状況にある。

要約

分断社会とは

格差社会から分断社会へ

日本社会の秩序は、封建制の身分社会から「労働者」対「資本家」という階級社会、そして総中流社会、格差社会、貧困社会というふうに表現を変えてきた。そしてこの先の日本は、分断社会と表現されるだろう。

「分断」は、4つの点において特有の意味を持つ。

(1)境界の顕在性:集団間の境界が客観的に見えるということである。

(2)成員の固定性:集団間を行き来できないということだ。

(3)集団間関係の隔絶:各集団に属している人たちの交わりが少ないということである。

(4)分配の不均等:集団間に優劣があり、対等でないということだ。

【必読ポイント!】学歴分断社会

格差の正体は「学歴」だ
Photobuay/iStock/Thinkstock

本書では、団塊の世代が退出した後に日本社会を担う20代から50代の男女を現役世代と呼び、現役世代に視点を定める。そして現役世代を「生年区分」「ジェンダー境界」「学歴分断線」の3つの観点で分け、分断状況を分析する。

本書における生年区分とは、現役世代をちょうど真ん中の40歳で分けるものだ。2015年時点の40歳から上を壮年層、下を若年層とする。この分け方では、壮年層が団塊ジュニア以上の世代となる。人口サイズはほぼ半々だ。

ジェンダー境界では、社会文化的な性が男か女かという観点で区分する。現代日本社会においては、男女双方の役割が日々変化しているものの、男女という観点は外せない。

そして分断社会の核心にあるのが、社会経済的地位の上下の構造だ。その三大要因は「学歴」と「職業」、そして「経済力」である。そのうち、最も固定的なのが学歴だ。また、学歴が職業キャリアを構成し、そのアウトプットとして経済力があることからも、学歴こそが社会経済的地位の根幹をなすものであるといえるだろう。

大卒層と非大卒層には、明らかな格差がある。それは、就いている職種や産業、管理職への昇進のチャンス、仕事を失うリスクの大きさ、求職時の有利・不利、そして賃金における格差だ。2つの層は、職業に関してだけでなく、ものの考え方や行動様式も異なる。

一度成立した学歴分断の構造は、世代を超えて継承される。大卒の両親は子どもの大学進学を望み、非大卒の両親の子は大学進学率が低い傾向にあるからだ。

つまり、現代日本においては、大学・短大に進学するかどうかがその後の人生を分断しているだけでなく、それが世代を超えて繰り返されているのだ。若年ワーキングプアや正規・非正規格差、教育格差などといった現代日本の格差は、「大卒学歴の所有/非所有」がつくりだしている。著者は、大卒/非大卒の境界線を「学歴分断線」と呼ぶ。

日本の学歴分断社会の構造
JuliaLototskaya/iStock/Thinkstock

「学歴」というと、大学ごとのネームバリューや難易度のことだと思う人もいるかもしれない。こうした大学ごとのブランド力は、学歴ではなく学校歴と呼ばれる。

学校歴の競い合いは、学歴分断社会の上に成り立っている、「大卒学歴の所有/非所有」とは別のゲームだ。学歴分断社会においては、学校歴は重要ではない。大卒学歴を持っていさえすれば非大卒よりも仕事を得やすくなるし、待遇もよくなる。労働市場の半分より下に落ちる心配はない。大卒学歴を持っている人たちは「ガラスの床」の上にいるようなものだ。

一方、非大卒層にとっての学歴とは、高卒程度の求人に応募できるという雇用資格のことであって、

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要約公開日 2018.09.13
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