御社の「売り」を見つけなさい!

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出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2018年08月22日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

静岡県にある富士市産業支援センター、通称f-Biz(エフビズ)。著者の小出さんはセンター長として、約6000社の中小企業支援に携わってきた。売上低迷にあえぐ企業からヒット商品を生み出すなど、その斬新な発想力と手腕は「小出マジック」と評されるほどだ。

「どんな会社にも光る部分は必ずある」。そんな信念のもと、企業の唯一無二の強みを見出すことに心血を注ぐ小出さん。打ち出すべき「売り」が明確になってはじめて、その後の戦略が決まる。とはいえ、「うちの会社に強みなんてない」と思う人もいるかもしれない。しかし、支援先の企業の成長秘話を読み進めるにつれ、「自社も可能ではないか」と気持ちを奮い立たされるはずだ。同時に、実体験に基づいた実効性の高い打ち手をどんどん吸収できる一冊でもある。

要約者は2014年に小出さんにインタビューする機会をいただいた。その際、強烈に印象に残ったエピソードがある。小出さんが静岡銀行から創業支援施設「SOHOしずおか」に出向した41歳のときだ。当初は銀行員のバッジをはずしたとたん、企業から相手にされず悔しい思いをしたという。この状況は相談に訪れる経営者たちも同じではないか。この原体験があるからこそ、圧倒的な成果を出して、名もなきチャレンジャーたちの価値を知らしめようと小出さんは決意した。そして経営者たちに真摯に向き合い、「光る部分」にスポットライトを当てようと力を尽くしている。そんな姿に後押しされ、経営者たちは「光る部分」をさらに磨き上げられるのだろう。

中小企業の経営者、起業家、起業を志す方はもちろん、新商品・サービスの開発に携わる方にも、本書を最強のバイブルとしておすすめしたい。

ライター画像
松尾美里

著者

小出 宗昭(こいで むねあき)
1959年生まれ。法政大学経営学部卒業後、(株)静岡銀行に入行。M&A担当などを経て、2001年、創業支援施設SOHOしずおかへ出向、インキュベーションマネージャーに就任。起業家の創出と地域産業活性化に向けた支援活動が高く評価され、Japan Venture Awards 2005(主催:中小企業庁)経済産業大臣表彰を受賞した。08年に静岡銀行を退職し、(株)イドムを創業。富士市産業支援センターf-Biz(エフビズ)の運営を受託、センター長に就任し、現在に至る。静岡県内でも産業構造の違う3都市で計4か所の産業支援施設の開設と運営に携わり、これまでに1400件以上の新規ビジネス立ち上げを支援した。そうした実績と支援ノウハウをベースに運営しているエフビズをモデルに、愛知県岡崎市のOKa-Biz、広島県福山市のFuku-Biz、熊本県天草市のAma-biZなど各地の地方自治体が展開するご当地ビズや、国の産業支援拠点「よろず支援拠点」が開設されている。

本書の要点

  • 要点
    1
    小出さんが企業支援で大事にしているのは、その企業の唯一無二の「セールスポイント」を探し出すことである。どんな会社にも光る部分は必ずある。それを見極め、磨き上げることが重要となる。
  • 要点
    2
    ターゲットは明確に絞り込んだほうがうまくいく。絞り込みに効果的なのは、その商品やサービスが利用されるシーンを想像することだ。
  • 要点
    3
    他社と連携する際には、「1+1=3」以上になる相手を探すべきである。

要約

【必読ポイント!】 御社にも「オンリーワン」が必ずある

「行列のできる相談所」とは?
shironosov/gettyimages

静岡県富士市に拠点を置く富士市産業支援センター(通称f-Biz/エフビズ)。静岡県内で、創業・新事業を計画、あるいは経営上の課題をもつ個人、団体、企業を対象に、無料で起業の経営相談に応じる公的機関である。

2001年、小出さんは静岡銀行から創業支援施設「SOHOしずおか」への出向を機に、企業支援家の人生を歩み出した。2008年には故郷である富士市からの強い要請で、銀行を退職。f-Bizの運営を受託し、センター長へ就任した。「公的中小企業支援の成功モデルをつくる」というビジョンを体現すべく、約6000社の中小企業支援に携わり、新規ビジネスの立ち上げ件数は1400件を超える。2018年5月時点で、来場相談件数は3万件に達した。まさに「行列のできる相談所」といえる。

本書では、f-Bizが過去に支援してきた成功事例から、「小さき者が最強」になるために必要な、再現性のある方法を紹介していく。

意外と気づきにくい自社の真の「売り」

小出さんが支援の中で最も注力しているのは、その会社の唯一無二の「セールスポイント」を探し出すことだ。どんな会社にも光る部分は必ずある。それを見極め、埋もれた原石のごとく磨き上げることで、他の追随を許さないようなセールスポイントとなる。

この真の強みを見つける一歩は、常識や思い込みを捨てることだ。プレス用金型メーカー「株式会社増田鉄工所」の事例を紹介しよう。同社は、通常なら部品を1つずつ製作してつくる金型を、「一体構造で加工する」という画期的な技術をもっていたものの、売れ行きが伸び悩んでいた。

小出さんが提案したのは、金型という「モノ」を売るのではなく、この金型がもたらす効果を「ソリューション」として売り出すことだった。そこで誕生したのが「金型革命5(ファイブ)ダウン」である。加工面数減、部品点数減、購入品数減、原価管理減、経理処理数減の5つの点から、品質アップ、短納期、コストダウンが見込めるというものだ。このサービス名を載せたチラシで取引先にPRした。すると1つ500万円もの金型が、半年で50件ほど契約に結びついたという。

これは後に、同社の最大の強みの発掘につながった。ヒアリングの結果、同社は納入先に対して定期的なメンテナンスを行っており、それが大きな損害を防いでいたことがわかった。これを「金型ドックBestコンディション」というサービス名で展開すると、たちまち問い合わせが殺到した。

お客様目線で、他社の「光る部分」を探す

このように、自社の「売り」となるオンリーワンの強みを見つけるのは意外と難しい。そこで、まずは他社をじっくり観察し、他社の「光る部分探し」をするとよい。身近な会社や経営者のことなら、リアルなお客様目線で客観的に見渡せるからだ。

観察の対象は異業種でもかまわない。異業種交流会を、他社の「光る部分」を見つけてヒアリングする機会にするのも有効だ。こうして360度自在に見渡せる目を養ったら、今度は自社をお客様目線で見てみよう。自社の「光る部分」が見えてくるはずだ。

ユニークな依頼を洗い出し、ニッチなオンリーワンへ
phototechno/gettyimages

成功する人や組織の共通項は何か。それは、「オンリーワンである」こと、「継続する情熱がある」こと、そして「行動力がある」ことの3つだ。ここでのオンリーワンとは、業界初、世界初といったものに限らない。「ありそうでなかった付加価値」くらいのものでもよい。特定の業界・分野での「ニッチなオンリーワン」も立派なオンリーワンである。このオンリーワンはどんな企業や人の中にも存在している。

オンリーワンを探し出すうえでおすすめなのは、通常業務外で「ユニークな依頼がなかったか」を洗い出すことである。

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要約公開日 2018.10.24
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