いつもの仕事と日常が5分で輝く

すごいイノベーター70人のアイデア

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すごいイノベーター70人のアイデア
出版社
出版日
2018年07月24日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は画期的なイノベーションを行った70人を取り上げ、その人生を紹介しながら、彼らがイノベーションを起こすに至った契機やプロセスを解説したものである。各イノベーターの成功から何を学ぶべきかという点まで、鮮やかに提示してくれる。

たとえば、生涯を通じてイメージと音楽性を変化させ続け、多くのミュージシャンとコラボレーションしたデヴィッド・ボウイ。彼から得られるアイデアは、「幅広い人と手を組むこと」「自分に変化を課すこと」といったものになる。

登場するイノベーターの活躍ジャンルは多岐に渡る。イケア、マクドナルド、アマゾンといった大企業の創業者たち。フレディ・マーキュリー、マイルス・デイヴィス、ジョン・レノン&ポール・マッカートニーといったポップカルチャーでの成功者たち。ミケランジェロ、パブロ・ピカソら芸術家たち。マリー・キュリーやドミトリ・メンデレーエフなどの科学者たち。そして、マハトマ・ガンジー、ムハマド・ユヌスといった、人権、貧困などの課題と向き合った社会改革者たち。まさにイノベーター図鑑の様相を呈している。

読者にとって興味のあるページから読んでもいい。役に立ちそうなページをめくるのもアリだ。読者の裁量で自由に楽しめる。各章は短く隙間時間に読めるので、仕事に詰まった時などに手に取ってみてはいかがだろうか。頭に新鮮な風が吹き抜け、イノベーションを生み出すための良い刺激となるに違いない。

著者

ポール・スローン (Paul Sloane)
ケンブリッジ大学で工学を学び、IBM社に入社するとトップセールスマンとなる。マーケティング部門長や専務にまで上りつめたのち、ソフトウェア会社各社のCEOに就任した。著書に『ポール・スローンのウミガメのスープ』(エクスナレッジ)、『ポール・スローンの思考力を鍛える30の習慣』(二見書房)などがあり、リーダーシップやイノベーション、ラテラルシンキング(水平思考)、パズルに関する著作は25点を超える。

本書の要点

  • 要点
    1
    ハイアールグループCEOの張端敏は、不良冷蔵庫をハンマーで叩き壊すという行動によって、不良品を許さないというメッセージを従業員に明示した。その後は顧客から学ぶ姿勢を貫き、事業を成功に導いた。
  • 要点
    2
    リーバイ・ストラウスは、山積みの在庫となったテントの布からズボンを作って販売した。これがブルージーンズのヒットを生んだ。
  • 要点
    3
    J・K・ローリングは苦しい生活のなか原稿を書き続け、多くの出版社に断られても諦めなかった。これが『ハリー・ポッター』シリーズの成功につながった。

要約

【必読ポイント!】 イノベーターの伝え方に学ぶ

中国の家電メーカー ハイアールグループCEO
Chesky_W/gettyimages

1984年、若き経営者だった張端敏(チャン・ルエミン、1949~)は、青島で赤字操業を続ける冷蔵庫製造会社の経営権を手に入れた。彼はその工場の製品の出来の悪さと質の低さに愕然とする。

その怒りを劇的に示すため、彼は大勢の従業員たちにハンマーを配り、こう呼びかけた。「これから欠陥品の冷蔵庫76台を一緒に壊そう」。そのメッセージの意味は、「粗悪品は二度と認めない」というものだった。その後、張はハイアールを世界最大の家電メーカーとするべく、事業の拡大と変革に邁進した。その結果、売上高は300億ドルを突破した。

同社の成功要因の一つは、顧客から学ぶ姿勢である。張は技術者を定期的に地方へ送り込み、顧客が自社製品をどう使っているのかを観察させた。これによりイノベーションのヒントを得たのだ。

例えばある地方では、ハイアールの洗濯機で野菜を洗う人がいるという報告があった。張はこれを聞いて、野菜専用の新型洗浄機を設計させた。また、アメリカからは、当地の学生がハイアールの小型冷蔵庫2台を離して置き、その間に板を渡して机代わりに使っているという報告があった。そこでハイアールは、引き出し式の天板が付いた冷蔵庫を発表した。

張は70歳に近づいた今も、ほぼ毎日仕事をしている。彼による近年の破壊的イノベーションは、会社の中間管理層の廃止だ。彼の会社にはほとんどの大企業で見られる独立した部門はない。従業員8万人は約2000ある流動的なチームで仕事をしている。従業員は誰でもアイデアを提案でき、それが採用されると提案した人がチームリーダーとなる。チームは自ら経営を行い、プロジェクトの損益の責任を負う。まさに「自己組織化チーム」を体現している。

張は流動的で活力に満ちた環境を意図的に作り出している。これが顧客の声に耳を傾けやすい空気をつくり、イノベーションの促進に寄与しているのだ。

近代看護法の創始者、フローレンス・ナイチンゲール
KatarzynaBialasiewicz/gettyimages

フローレンス・ナイチンゲール(1820~1910)は、イギリスの裕福な上流階級に生まれた。勉強は父親から教わり、語学と数学が得意だった。1837年、彼女は善行を積むようにという神のお告げを受けた。看護に関心をもった彼女は、結婚の申し出をすべて断り、ドイツで看護を学んだ。

1853年、クリミア戦争が勃発。イギリス軍はクリミア半島へ出兵した。だが、兵士たちはコレラとマラリアにひどく苦しめられ、異常なペースで死者が増えていった。戦時内閣の大臣はナイチンゲールと知り合いだったことから、彼女に陸軍病院での看護団の監督を依頼。1854年、彼女は38名の篤志看護師らとともに、トルコへ渡った。

仮設病院は、劣悪な衛生状態、機能不全の下水道と換気設備、そして器具不足という恐ろしい状態だった。兵士たちはコレラ、赤痢、発疹チフスで、次々と命を落としていた。彼女はこの劣悪状況を厳しく批判した。しかし陸軍士官らは、陸軍病院の改革を主張するナイチンゲールに強く反発するばかり。軍医も、彼女の意見は自分たちのプロ意識への攻撃だと見なした。

そこでナイチンゲールは、『タイムズ』紙の編集者ジョン・ディレーンと連絡をとり、不衛生な状況に苦しむ兵士の惨状を世間に公表した。これにより、彼女には仮設病院を管理する権限が与えられ、徹底的な改善を行った。その結果、兵士の死亡率は42%から2%に下がった。

1856年に帰国したナイチンゲールは、国民的英雄となった。次に彼女が始めたのは、陸軍病院における看護の質を向上させる運動だ。ヴィクトリア女王とアルバート公に謁見するまでに至ったその努力は、陸軍医療学校の設立となって結実した。

近代看護の基礎を築いたことは、ナイチンゲールの不朽の功績だ。その過程では、既得権にあぐらをかく守旧派との対立があった。だが彼女は知人やマスコミの力を借りて、抵抗勢力を見事打ち破ったのである。

苦境の切り抜け方に学ぶ

ブルージーンズをつくったリーバイスの創業者

ドイツ生まれのリーバイ・ストラウス(1829~1902)の一家は、アシュケナジ系ユダヤ人で、宗教的迫害を受けていた。父の没後、母親と二人の姉とともに彼はアメリカに渡り、ニューヨークで暮らし始めた。

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要約公開日 2018.10.31
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