外食産業の市場規模は、1997年の約29兆円をピークに減少の一途をたどっている。開業3年で約7割が倒産し、10年後も営業している飲食店は、わずか1割程度という説もあるくらいだ。そんな中、2014年の8月以降、丸亀製麺では既存店の売上高は、40ヶ月以上対前年比100%以上を達成している。
丸亀製麺が参入してからの数年間は、はなまるうどんの方が店舗数も多く、先頭を切っていた。現在は約480店舗で2位。また老舗のうどんチェーン店も、現在では160から200店舗ほどの規模に収まっている。そんな中、丸亀製麺は国内では約800店舗、海外では約200店舗へと躍進。売上高、店舗数ともに業界ナンバーワンの地位を築いている。
丸亀製麺がナンバー1ブランドを築けた最大の理由は何か。それは、他社との競争を重視しなかったことだという。同業他社と売上競争をすれば、好立地をめぐる争いや値下げ合戦に巻き込まれ、疲弊してしまう。丸亀製麺はこうしたことを避け、常にお客様のニーズやウォンツを捉えて店舗運営に反映してきた。競争しない道を選んだ結果、気がついたら生き残り、ナンバー1になっていたのだ。
本要約では、ナンバー1ブランドになった秘訣と海外戦略の一部を紹介していく。
組織改革のキーワードとされる「効率化」。効率という言葉はたいてい、会社の利益を優先するために、社内の人間に向けて使われる。決して顧客の満足や感動のためではない。
これに対し、丸亀製麺の勝因は非効率を極めたことにある。丸亀製麺の店内に目を向けてみよう。すぐに目につくのは製麺機だ。製麺機は小麦粉と塩と水を混ぜてうどん生地をつくり、寝かしてあった生地をのばすために使われる。製麺機を店の入り口に置いているのは、手づくりのライブ感を出すためでもある。
出汁をとるのは1日6回以上。コーヒーや紅茶と同じで、すぐに風味や香りが飛んでしまうので、大量のつくりおきができないためだ。
丸亀製麵は他のうどんチェーン店に比べるとキッチンのスペースが広く、スタッフの人数も多い。本来チェーン店なら、客席数を増やしてスタッフは少なめに抑えるのが定石だ。うどんも出汁も、天ぷらやおむすびもセントラルキッチンでまとめて作り、店ではそれらを簡単に調理する方が効率的だろう。
また、製麵機は高額なので、初期費用もかかる。しかも、店内でうどん生地をつくり生のうどんを茹でるところから調理していたら、水道・光熱費もかさむ。現に丸亀製麺を出店した当時は、周囲から「そんな効率の悪い店が成功するはずない」と散々批判された。
しかし、丸亀製麺はあえて非効率を貫いた。なぜなら行き過ぎた効率化は人間味をなくし、他のお店と差別化を図ることが難しくなってしまうからだ。
粟田社長は、「店の人が自分のうどんをつくってくれている」という臨場感がおいしさを高めると考えていた。人のぬくもりを感じられる店をつくるという信念を貫いたことが、丸亀製麺をナンバー1に押し上げたといってもいい。希少価値を生み、お客様の感動を追求すれば支持されるのだ。
丸亀製麺には、身だしなみや挨拶の仕方など、ごく基本的なマニュアルしかない。マニュアルで細かく定めすぎると、「覚えた通りにすればいい」という意識になってしまう。
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