「今後、世界を牽引していく国はどこか?」と質問されたら、その答えはもちろん米国だ。米国では日本や欧州の国々を尻目に、今後も人口(特に若年層人口)が増加し続けると予想されており、長期的な成長が見込まれる。
全米50州でも高い成長率が期待されているのが、テキサス州にある交通の要衝、ダラス市を中心とした「ダラス経済圏」だ。隣接するフォートワース市とともに「ダラス・フォートワース都市圏」とも呼ばれるこの経済圏には、2009年からの5年間だけで約800もの企業が移転や事業拡張を進めている。
これまで米国はニューヨークやワシントンを中心とする「東海岸経済圏」と、ロサンゼルスやシリコンバレーを中心とする「西海岸経済圏」の2軸で発展してきた。しかし両経済圏とも人件費や不動産価格、物価が高騰。企業は将来のために、さまざまな可能性を検討しなければならなくなった。そこで浮かび上がってきた選択肢のひとつが、次世代を牽引する第三の経済圏「ダラス経済圏」を核とする、南部経済圏への移転である。
トヨタは2014年、カリフォルニア州、ケンタッキー州、ニューヨーク州に分散して置かれていた米国本社機能をテキサス州プレイノに集約し、約4000名の従業員をこの地に異動させると発表した。プレイノはダラスの北に隣接する都市である。
この移転の理由、すなわち「テキサス・メリット」を一言で表現すれば、「地理的な優位性」と「圧倒的に優位な税制」の2つに集約される。海運と空運で全米有数の規模を誇る拠点があり、陸運でもダラス経済圏からトラックで48時間以内に全米の93%の地域に到達が可能だ。
また税制面でも恵まれており、州が徴収する法人税および個人所得税がともにゼロである。この他にも家賃や物価水準が比較的安価なこと、資源やエネルギーに恵まれていることなどもメリットとして挙げられる。
トヨタの拠点集約に続くように、建機製造大手のクボタが米販売子会社の本社をカリフォルニア州からテキサス州に移した。また電機大手のパナソニックも、デジタル関連の拠点をダラスに開設している。
このように大手メーカーが拠点を置くと、周辺には部品メーカーをはじめとした関連企業も集まるため、テキサス州では日本人コミュニティがいま急拡大している。ダラス日本人会は1983年に48社164世帯で発足したが、現在は142社946世帯の規模だ。
テキサス州というと、どのようなイメージが浮かぶだろうか。西部劇のようにカウボーイが闊歩し、巨大なステーキにかぶりつく姿だろうか。たしかにテキサス州には西部劇をモチーフとした飲食店や建物がたくさんあり、食べ物は米国でも特にビッグサイズだが、人口や経済規模も巨大な州であることを忘れてはならない。
テキサス州は2800万人の人口を誇り、これは3900万人を擁するカリフォルニア州に続いて米国2位である。また各州の名目GDPでもカリフォルニア州に続いて2位だ。
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