日本企業が世界で戦うために必要なこと

「ブランド品リユース市場の世界No.1」を目指す大黒屋の戦略
未読
日本企業が世界で戦うために必要なこと
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「ブランド品リユース市場の世界No.1」を目指す大黒屋の戦略
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日本企業が世界で戦うために必要なこと
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2018年09月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「経済のグローバル化」や「グローバルスタンダード」が叫ばれて久しい。つい最近、日本最大手の製薬会社の武田薬品工業が、海外大手の製薬会社を日本企業として過去最高額で買収することが決まったばかりだ。今や同社に限らず、海外との取引があったり海外の企業と資本関係がある会社が日本中いたるところに存在する。

実際、著者の小川浩平氏が代表を務める大黒屋もグローバル展開を進めているものの、社員数は450名ほどと企業としてはそれほど大規模ではない。にもかかわらず、中国最大の金融グループ企業と対等な合弁会社の設立を実現させた。しかもこの中国企業が対等な条件を許容したのは初めてのことだったそうだ。多くの人は驚いたことだろう。だがこれは、著者に言わせれば決して譲れない、最低限の条件だったという。逆に言えば、それを当たり前だと思わずにグローバルビジネスを行うと、いたるところに存在するトラップに引っかかって失敗してしまう可能性が高いということだろう。

本書には、グローバルビジネスの意味、リスク、ダイナミズム、日本企業が抱える問題点などについてのエッセンスが詰まっている。これからグローバルな環境で活躍したいと考えるビジネスパーソンに、特におすすめしたい一冊だ。

ライター画像
三浦健一郎

著者

小川 浩平(おがわ こうへい)
中古ブランド品買取・販売大手の大黒屋を傘下に持つ大黒屋ホールディングス代表取締役社長。1979年、慶應義塾大学経済学部卒業後、総合商社トーメン(現:豊田通商)入社。1987年、コロンビア大学経済大学院修了。同年ゴールドマン・サックス・アンド・カンパニーに入社し、数多くのLBO案件を手がける。1994年、香港10大財閥の一角ファー・イースト・コンソーシアム・インターナショナル・リミテッドの社長に抜擢された、日本人として唯一の経験を持つ。華僑の創業者とともに、全世界で200社におよぶ投資先企業及び事業の経営にハンズオンで関わる。2005年頃から財閥を離れ、独自に上場会社の経営を始める。2006年、大黒屋買収。2013年より、大黒屋代表取締役社長に就任。その後、同グループのグローバル展開を推進。

本書の要点

  • 要点
    1
    大黒屋はグローバル展開を進めており、既にブランド品の本場欧州と、市場規模が大きくなった中国に進出した。さらに、かつて中古ブランド品販売においては不可能だと言われていた「キュレーション型のEC」を開発した。
  • 要点
    2
    大黒屋のグローバル展開にあたっては、著者自身のアメリカと香港での経験が礎になっている。グローバルビジネスにおいては、リターンを最大化するために行動することと、ファイナンスの知識が最重要だ。
  • 要点
    3
    グローバルビジネスはどんどんスピード重視型になっている。だがいくら時代が変わろうと、「信用」を原理原則とすることは変わらない。

要約

大黒屋の海外進出

イギリスにおける企業買収
SARINYAPINNGAM/gettyimages

本書は、著者と大黒屋の関係および、グローバル展開する現在の大黒屋の概要から始まる。

大黒屋の主な事業は質業と中古ブランド品の買取・販売だ。創業は1947年。1997年、著者が大黒屋ホールディングスの前身企業の社長に就任した。紆余曲折を経て現在の大黒屋が出来上がったのが2006年だ。そして2012年、「ブランド品リサイクル事業で世界へ」というビジョンのもと、グローバル展開に向けて動きはじめた。

グローバル展開の柱は3つあった。まず、イギリスのSFLグループの買収である。もともと著者にとって、ブランド品の本場、欧米に進出することは目標のひとつだった。大黒屋の企業価値向上のためだ。

SFLグループは、中古宝飾品の買取・販売業のブランドと質屋業のブランド、2つのブランドの店舗をあわせて114店舗持っていた。著者はその拠点や人材を活用し、徐々に大黒屋ブランドを浸透させるつもりだったが、プロジェクトは順風満帆には進まなかった。買収交渉において相手が法外に高い値段を吹っかけてきたり、経営を任せた人物が反旗を翻したりというトラブルに悩まされた。

無理難題を要求されることは決して珍しいことではない。だがそんなとき、「相手になめられたらおしまい」である。こちらが一度でも弱みを見せたり、引いてしまったりしたら、相手が味をしめることになるからだ。

「危険な芽は早めに摘む」ことも大事だ。自己の利益や保身しか考えない人物や、信頼を裏切って背後から刺してくるような人物もいる。そんなときには意見を精査し、相手を言い負かしたり、一蹴したりする強さを持っていなければならない。

SFLグループに関しては、著者がCEOに就任し、社内の情報システムの刷新や本社の役員・社員の入れ替えを通して、やっとイギリスにおけるビジネスをスタートさせた。海外企業を買収するにあたっては、その企業がもつ習慣や文化を一新するような、抜本的な改革が不可欠なのである。

中国における合弁会社設立
Jirapong Manustrong/gettyimages

グローバル展開の2つ目の柱が、中国への進出だ。中国では国自体の成長とともに、日本のおよそ3倍とも言われる、中古ブランド品の巨大市場が形成されつつあった。

中国では、中国最大の企業グループCITICと合弁会社を設立することにした。そこでこだわったのは、50:50という対等な合弁比率だ。なぜなら著者は「自分で自分の運命を握れない投資はしない」という経営・投資哲学を持っていたからだ。

合弁比率が50%を下回ると、経営の最終決定権は握れない。当然、相手も同様の理由から合弁比率を高めようとするのだが、結局はお互いの思惑、立場、メンツを鑑みて50:50が着地点となった。

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要約公開日 2019.02.02
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