本書は、著者と大黒屋の関係および、グローバル展開する現在の大黒屋の概要から始まる。
大黒屋の主な事業は質業と中古ブランド品の買取・販売だ。創業は1947年。1997年、著者が大黒屋ホールディングスの前身企業の社長に就任した。紆余曲折を経て現在の大黒屋が出来上がったのが2006年だ。そして2012年、「ブランド品リサイクル事業で世界へ」というビジョンのもと、グローバル展開に向けて動きはじめた。
グローバル展開の柱は3つあった。まず、イギリスのSFLグループの買収である。もともと著者にとって、ブランド品の本場、欧米に進出することは目標のひとつだった。大黒屋の企業価値向上のためだ。
SFLグループは、中古宝飾品の買取・販売業のブランドと質屋業のブランド、2つのブランドの店舗をあわせて114店舗持っていた。著者はその拠点や人材を活用し、徐々に大黒屋ブランドを浸透させるつもりだったが、プロジェクトは順風満帆には進まなかった。買収交渉において相手が法外に高い値段を吹っかけてきたり、経営を任せた人物が反旗を翻したりというトラブルに悩まされた。
無理難題を要求されることは決して珍しいことではない。だがそんなとき、「相手になめられたらおしまい」である。こちらが一度でも弱みを見せたり、引いてしまったりしたら、相手が味をしめることになるからだ。
「危険な芽は早めに摘む」ことも大事だ。自己の利益や保身しか考えない人物や、信頼を裏切って背後から刺してくるような人物もいる。そんなときには意見を精査し、相手を言い負かしたり、一蹴したりする強さを持っていなければならない。
SFLグループに関しては、著者がCEOに就任し、社内の情報システムの刷新や本社の役員・社員の入れ替えを通して、やっとイギリスにおけるビジネスをスタートさせた。海外企業を買収するにあたっては、その企業がもつ習慣や文化を一新するような、抜本的な改革が不可欠なのである。
グローバル展開の2つ目の柱が、中国への進出だ。中国では国自体の成長とともに、日本のおよそ3倍とも言われる、中古ブランド品の巨大市場が形成されつつあった。
中国では、中国最大の企業グループCITICと合弁会社を設立することにした。そこでこだわったのは、50:50という対等な合弁比率だ。なぜなら著者は「自分で自分の運命を握れない投資はしない」という経営・投資哲学を持っていたからだ。
合弁比率が50%を下回ると、経営の最終決定権は握れない。当然、相手も同様の理由から合弁比率を高めようとするのだが、結局はお互いの思惑、立場、メンツを鑑みて50:50が着地点となった。
3,400冊以上の要約が楽しめる