著者は毎日、大量のメモをとる。クリエイティブな思考や自分にしかできないような思考など、より本質的なことに時間を割くためだ。
過去のミーティングで議論した内容や参加者、打ち合わせ日時などといった情報自体は単なる「ファクト(事実)」だ。一方で、そのファクトから何が言えるのか、そこからどうアクションするのかを考えるのがクリエイティビティである。著者は、過去のファクトを思い出すことに時間を割かなくていいように、メモをとっている。メモを「第2の脳」として活用してファクトを記憶させ、自分の脳の容量を使ってクリエイティビティを発揮すれば、より多くの付加価値を生むことができるというわけだ。
メモには2種類ある。まず、ファクトを記録するためのメモ。もう1つが「知的生産のためのメモ」だ。本書では、後者の重要性が強調される。新しいアイデアや付加価値を生み出すためのメモ術である。
本書では、具体的なメモの書き方が指南される。だが著者は、メモの書き方よりも先に、「メモは姿勢である」ということを理解してほしいという。目的意識を持ち、あらゆる情報に対して毛穴むき出し状態でいること。常にアンテナを立て、得た情報から知的生産を行う意識を持つこと。知的好奇心と知的創造に対する貪欲なスタンスを大切にしよう。
ここから、著者のメモの方法論を紹介する。まず、ノートは見開きで使う。その理由は3つある。1つ目に、思考が窮屈にならないよう、メモのスペースを広くとるため。次に、左側に左脳的な「事実」、右側に右脳的な「発想」をと、脳の使い方によって書くスペースを分けるため。最後に、左から書いていくことによって「右側を埋めなくてはならない」という思考を導くためだ。
ノートを見開きにして、左ページに横線と縦線を1本ずつ、右ページに縦線を引く。左側に書くのは「ファクト」、客観的な事実だ。ミーティング内容をメモするのであれば、そこで交わされた会話を書きとめておこう。
右ページの左側には、ファクトを「抽象化」した要素を書く。左ページに書いたファクトから抽象化すべき要素を見つけたら、右ページへと矢印を引き、抽象命題を書く。
右ページの右側には、「転用」の要素を書く。この要素によって、抽象化した気づきをもとに、行動を変えることができる。「○○という真理・命題を受けて、これをこう変えてみよう」と、実際のアクションにつながる粒度まで落として書くのがポイントだ。
メモにおける「転用」の重要性は、強調してもしきれない。ファクトから得た気づきをアクションに転用することを通じて、自分の日々と人生が変わっていく。だから、ノートの一番右側も必ず埋めるようにしたいものだ。
著者のメモ術は、3点のエッセンスに集約できる。すなわち、(1)インプットした「ファクト」をもとに、(2)気づきを応用可能な粒度に「抽象化」し、(3)自らのアクションに「転用する」だ。
著者によるメモの例を紹介しよう。著者はある打ち合わせで、「東京・大阪それぞれの街中で宣伝用のチラシを配布した」というプロモーション事例の話を聞いた。
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