LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

100年時代の人生戦略
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おすすめポイント

日本でも旋風を巻き起こした『ワーク・シフト』の著者リンダ・グラットンと、経済学の権威アンドリュー・スコットによる待望の新作が登場した。今回のテーマは「100年時代の人生戦略」である。

これからを生きる私たちは、長寿化の進行により、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすこととなる。新しい人生の節目と転機が出現し、「教育→仕事→引退」という人生から、「マルチステージ」の人生へと様変わりする。それに伴い、引退後の資金問題にとどまらず、スキル、健康、人間関係といった「見えない資産」をどう育んでいくかという問題に直面するというのが著者の見方だ。ロールモデルもほとんど存在しない中で、新しい生き方の実験が活発になることは間違いない。また、生涯を通じて「変身」を続ける覚悟が問われると言ってもよい。

今後どんな時代が訪れ、どんな生き方を模索すればいいのか。その際、どのような有形、無形の資産が重要性を増すのか、どんな人間関係を築いていけばいいのか。企業や政府が取り組むべき課題は何か。本書は、こういったテーマと向き合うための手がかりを、豊富な「人生のケーススタディー」とともに与えてくれる。読み進めるにつれ、「自分は何を大切に生きているのか」「何を人生の土台にしたいのか」と自問せずにはいられないだろう。

これまでの成長至上主義から脱却し、自分らしい人生の道筋を描くための羅針盤として、何度もお読みいただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

リンダ・グラットン
Lynda Gratton
ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。
2年に1度発表される世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」では2003年以降、毎回ランキング入りを果たしている。
フィナンシャルタイムズ紙「次の10年で最も大きな変化を生み出しうるビジネス思想家」、英タイムズ紙「世界のトップ15ビジネス思想家」などに選出。
邦訳されベストセラーとなった『ワーク・シフト』(2013年ビジネス書大賞受賞)などの著作があり、20を超える言語に翻訳されている。

アンドリュー・スコット
Andrew Scott
ロンドン・ビジネススクール経済学教授、前副学長。オックスフォード大学を構成するオール・ソウルズカレッジのフェローであり、かつ欧州の主要な研究機関であるCEPRのフェローも務める。2005年より、モーリシャス大統領の経済アドバイザー。

本書の要点

  • 要点
    1
    長寿化により、ステージの移行を数多く経験する「マルチステージ」の人生が到来する。人生の選択肢が多様化するため、自分のアイデンティティを主体的に築きながら、人生をどのように計画するかが問われる。
  • 要点
    2
    今後は、金銭的な有形の資産と、家族や友人関係、知識、健康といった「見えない資産」とのバランスをとることがますます重要となる。「見えない資産」は生産性資産、活力資産、変身資産の3つに大別される。これらに投資を続け、自らを再創造することが実り多い100年ライフには欠かせない。

要約

100年ライフ

100年以上生きる時代をどう過ごすべきか?

本書の中心テーマは、どうすれば個人や家族、企業、社会全体が長寿化の恩恵に最大限浴せるか、というものである。

現在、長寿化が進んでいる国では、高齢者医療や年金の問題ばかりが取り沙汰されている。しかし、今後は健康的に、若々しく生きる年数が長くなるため、「老い」自体の概念が大きく変わる。すると、引退後の生活だけでなく、人生全体を設計し直さなければならない。

これまで多くの人々は「教育→仕事→引退」という3ステージの人生を歩んできた。しかし、寿命が延びれば、70代、さらには80代まで働くことが当たり前となっていく。また、仕事のステージの長期化に伴い、ステージの移行を数多く経験する「マルチステージ」の人生に突入するだろう。

そこで必要となるのは、画一的な生き方にとらわれず、生涯「変身」を続ける覚悟だ。キャリアの選択肢だけでなく、パートナーシップのあり方も問い直される。夫婦が二人とも職を持つ家庭が増えると同時に、いずれかがステージを移行する際に、互いの役割を柔軟に調整し、サポートし合うことが求められる。すると、必然的に家族のあり方は多様化していくはずだ。

多くの移行を経験することになる時代では、「何を大切に生き、何を人生の土台にしたいのか」という問いに向き合わざるを得ない。自分のアイデンティティを主体的に築きながら、人生をどのように計画するか。これこそが本書の最大のテーマである。

長寿という贈り物
monkeybusinessimages/iStock/Thinkstock

約100年前の1914年に生まれた人が、100歳まで生きている確率はわずか1%だった。しかし、2107年の世界では、100歳生きることが普通の光景になっている。日本にいたっては、2007年生まれの50%は107歳まで生きると推測されているのだ。

健康、栄養、医療、衛生といった多分野におけるイノベーションによって、平均寿命は大きく上昇してきた。重要なのは、健康に生きる期間が長くなるということだ。認知症の解明と対処にも、今後大きな前進があると目されており、想像以上に長く生きられる可能性が高いといってよい。

機械化・AI後の雇用の未来

一方で、長寿化に伴い、老後の生活資金をどうするかという問題が差し迫ってくる。貯蓄率を高めるか、より高齢になるまで働くか、あるいはその両方の選択が必要となる。

また、新しいテクノロジーが労働市場を激変させていくことは明らかである。産業の新陳代謝が起こり、新しい職種が既存の職種を代替する。また、ロボットやAIに、高スキル労働者が代替される一方で、新しい雇用が生まれ、経済成長を牽引するという明るい見方もある。こうした変化の中で重要なのは、人々が精力的かつ創造的に生きるための新しい人生のシナリオを考えていくことだ。

【必読ポイント!】 見えない資産

有形、無形の資産のバランスをとる
RomoloTavani/iStock/Thinkstock

ここからは、お金に換算できない「無形の資産」に光を当てていく。家族や友人関係、知識、健康といった無形の資産は、それ自体が有意義な人生に不可欠であるだけでなく、有形の金銭的資産の形成を助けてくれる。100年ライフを過ごすうえでは、両方の資産のバランスをとり、相乗効果をねらう必要がある。長寿化の観点から重要とされる「見えない資産」は、生産性資産、活力資産、変身資産の3つに分類できる。

生産性資産

生産性資産とは、生産性や所得、キャリアの見通しを向上させるのに役立つ資産を指す。わかりやすい例は、長年かけて培ってきたスキルや知識である。ただし、キャリアの初期に身につけた専門技能を頼りに、長い勤労人生を生き抜くことは難しい。そのため、生涯を通じて、複数の新しいスキルと専門技能を獲得し続けることが重要になる。

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要約公開日 2016.10.20
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