あらゆるモノがインターネットにつながることによって、全業界のタテの壁が崩れ去り、フラットに開かれた社会が誕生した。これからは、業界の壁を軽やかに飛び越える「越境者」にこそ、チャンスがあるという。「越境者」に必須となる能力が、次から次に好きなことをハシゴしまくる「多動力」だ。
修行や下積みなど、苦しいことを我慢して行うという美学から、日本人は解放されたほうがよい。寿司職人が修行に何年も費やすのは、貴重な時間の無駄遣いでしかない。現に、大阪の「鮨 千陽(ちはる)」の土田秀信店長は、専門学校で3カ月寿司づくりを学んだだけで、開店からたった11カ月にして『ミシュランガイド京都・大阪2016』の「ビブグルマン」部門に選ばれるという快挙を成し遂げた。
これまで、情報や技術、権利は、限られた人間の専売特許として囲い込まれていた。しかし、インターネット出現後は「オープンイノベーション」が前提となっている。こうした時代においては、情報収集に貴重な時間をかける必要はなく、そもそも情報自体の価値はゼロといってよい。みんなで情報を共有し、それをもとに新しい発想や発明を積み重ねるほうが技術の進化は速くなる。今後必要なのは、とにかくチャレンジする行動力と、アイデアを進化させる力なのだ。
あらゆる産業の「タテの壁」が崩壊した今、一つの肩書きにこだわっている人は、その他大勢に埋もれてしまう。ダイヤモンドの価値が高いのは、それが美しいからではなく、珍しいからだ。
元リクルートの藤原和博氏は「レアカードになる方法」を提唱している。一つのことに1万時間、つまり1日6時間として5年間取り組めば「100人に1人」の人材になれるという。ここで別の分野に1万時間取り組めば、「100人に1人」×「100人に1人」の掛け算で、1万人に1人という貴重な人材になれる。さらに別の分野に1万時間かければ、100万人に1人の人材が誕生し、結果的に価値が上がる。三足のワラジは二足のワラジ以上の相乗効果を得られる。
ポイントは、似通ったワラジよりも異なるワラジを掛け合わせたほうが希少性を高められるという点だ。複数の肩書きを掛け算し、レアな存在になろう。
「全部自分でやらなければいけない」、「準備万端でなければいけない」。これらは思いこみにすぎない。中でも、「すべての仕事で100点をとらなければいけない」という思いこみは根強いものである。しかし、常に全力投球ではすぐに息切れしてしまうだろう。
重要なのは、たまに手を抜くことである。試合中、常に全力疾走のサッカー選手は肝心のチャンスで100%の力を発揮できない。一方、超一流の選手は試合のうち大半をサボっていて、ここぞというときに得点を奪う。
仕事に忙殺されている人は完璧主義をやめ、一度手をつけた仕事をサクサクと完了させる「完了主義」を意識しよう。そうすれば、大量のプロジェクトを動かせる。
多動力とは、異なる、いくつものことに次から次へとハマる力である。その源泉となる好奇心と集中力を培い、何百もの物事にハマるには、まずは何か一つのことにサルのようにハマるとよい。
バランスを重んじる日本の教育は、子どもの好奇心と集中力をそぐようにできている。例えば給食の時間に「三角食べ」を指導するのは、無理やり子どもたちを「バランス信仰」に洗脳しようとしていたとしか思えない。しかし、ノーベル賞をとるような研究者や医師など、頭一つ抜きん出た人物は総じて、バランスを欠いた変人だ。こうしたことからも、子どもには平均的になるような教育をするのではなく、好きなことをとことんやらせておくほうがよいといえる。
著者はゲームにハマった経験を、スマホゲームのアイデアの着想や、グルメアプリ、サロン運営などに活かしている。一つのことに夢中になり、根っこまで掘り下げれば、そのジャンルの真髄がわかり、あらゆるものに応用できるのだ。
飽きやすいというと、ネガティブにとらえられることが多い。しかしそれは、
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