スタンフォードの自分を変える教室

未読
スタンフォードの自分を変える教室
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スタンフォードの自分を変える教室
出版社
出版日
2012年10月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

意志力(注意力や感情や欲望をコントロールする力)は、先天的なものであり、後天的には変えられない、鍛えることができないものなのであろうか? 著者によれば、意志力は、①禁煙、ダイエット、節約等、「行わない」ための力、②目標に対して努力する等の「行う」ための力、そして③自分が本当に望んでいることを思い出す、望む力から構成される。

学業で成功するかどうかも、優れたリーダーシップを発揮できるかどうかも意志力にかかっていると著者は指摘する。しかし世間一般では、「自分は意志力が弱いから」という言い訳をし、その意志力の弱さを先天的なものと捉える風潮がある。それに対し著者は、極めて実証的な脳科学の分析を加え、意志力が後天的に強化することができるものであることを語りかける。意志力は、食べ物、住居環境、エクササイズ、睡眠等の物理的なもの、ドーパミンの特性や親しい人物との関係等、知っておけば対処できるものであり、自らの意志で強化することが可能だ。

意志力は、人生の成功のためには、不可欠なものである。その強化のための具体的な理論、実践的な方法を体系的に説明している本書は、精神論に留まる他書とは一線を画した書である。一読をされた上、日常生活に落とし込むことを強く望みたい。

ライター画像
大賀康史

著者

ケリー・マクゴニガル
ボストン大学で心理学とマスコミュニケーションを学び、スタンフォード大学で博士号(心理学)を取得。スタンフォード大学の心理学者。専門は健康心理学。心理学、神経科学、医学の最新の研究を応用し、個人の健康や幸せ、成功および人間関係の向上に役立つ実践的な戦略を提供する講義は絶大な人気を博し、スタンフォード大学で最も優秀な教職員に贈られるウォルター・J・ゴアズ賞をはじめ数々の賞を受賞。各種メディアで広く取り上げられ、「フォーブス」の「人びとを最もインスパイアする女性二〇人」に選ばれる。ヨガ、瞑想、統合医療に関する研究をあつかう学術専門誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ヨガ・セラピー」編集主幹を務め、著書に『痛みを和らげるヨガ-心を落ち着け、痛みを緩和するためのシンプルヨガ』(未邦訳)などがある。

神崎 朗子(かんざき あきこ)
翻訳者。上智大学文学部英文学科卒業。外資系生命保険会社の社内翻訳等を経て、第一八回DHC翻訳新人賞優秀賞を受賞。訳書に『ぼくたちが見た世界』(柏書房)『ベストアメリカン・短編ミステリ』(共訳、ディーエイチシー)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    意志力は、「やる力」「やらない力」とともに、「望む力」により構成される。それらは具体的な対策により強化できるものである。
  • 要点
    2
    意志力は、「食べ物」「住居環境」「エクササイズ」「呼吸」「睡眠時間」の調整により、高められる。
  • 要点
    3
    意志力は、他者からの影響を大きく受け、それとは逆に自分は他者の意志力に影響を大きく与える。

要約

【必読ポイント!】 意志力を科学する

意志力の理由を理解すると、それは今からでも改善できる

「やる力」と「やらない力」は、自己コントロールの二つの側面を表しているが、意志力はこの2つだけでは成り立たない。イエス、ノーを言うべきときに言うための「望む力」、すなわち自分が本当に望んでいることを思い出す力が必要になる。意志力とは、この3つの力を駆使して目標を達成する力のことだ。

学業で成功するかどうかも、優れたリーダーシップをはっきできるかどうかも、意志力が決め手だ。そのため、生活を改善したいのなら、意志力の強化から取り組むのは悪くない。

私たちの心の中には2つの自己が存在する。一方は衝動のままに行動して目先の欲求を満たそうとし、もう一方は衝動を抑えて欲求の充足を先に延ばし、長期的な目標に従って行動する。意志力を強化するためには前者に対して「なまけもの」などのあだ名をつけると賢い自己を呼び覚ますのに有効だ。

また、意志力を強化するには、まず自己認識力を高める必要がある。そのためには、「自分がいつ目標を達成するための選択、あるいは妨げてしまう選択をしたのか」を分析し、自分の選択をふり返って反省することで、いい加減な選択が減り、意志力は確実にアップする。

iStockphoto/Thinkstock
あなたの体はチーズケーキを拒むようにできている

突然、さっと興奮が走る。まるで体じゅうが「イエス!」と叫んでいるようだ。かと思えば、急に不安に襲われる。「欲求の世界」へようこそ。欲しくてたまらないのは一本のタバコ、お酒やトリプル・ラテ? さあ、あなたは選択を迫られる。欲求に従うか、我慢するか。意志力が試されるときは、自分でも体で感じ、ちゃんとわかる。

サーベルタイガーとチーズケーキには、両方とも健康で長生きをする妨げになるという大きな共通点がある。しかしそれ以外の点ではこのふたつは決定的に異なるタイプの脅威だ。幸運にも人類の進化によって、あなたには両方の脅威から身を守るための能力が与えられている。

サーベルタイガーに対しては、心臓がドキドキして思わず歯を食いしばり警戒している。「闘争・逃走ストレス反応」と呼ばれるものだ。脳の真ん中にある扁桃体から危険を察知した場合に脳の他の領域や体じゅうへ信号を送る。すると、ストレスホルモンが副腎から分泌され、エネルギー、すなわち脂肪と糖分が肝臓から血液中に分泌されるのである。心臓血管系はフル回転し、戦うにせよ逃げるにせよ、血中のエネルギーが必要な筋肉に行きわたるようにする。つまり闘争・逃走反応はあなたがもっと衝撃的になるように仕向けるのである。

では、太古の昔へさかのぼる旅を終え、大通りを散歩中とする。その時ケーキ屋さんに見たこともないほどおいしそうなチーズケーキがあったとしよう。チーズケーキを見た瞬間、脳の中央からドーパミンという神経伝達物質が出され、注意力やモチベーションや行動をつかさどる脳の領域に到達する。そうこうしているうちに、血糖値が下がってくる。こってりしたチーズケーキの最初のひと口を脳が予測したとたん、神経系に作用する物質が分泌され、血中に流れているありったけのエネルギーを集めるよう体に命じる。チーズケーキはサーベルタイガーとは異なり、フォークを手にとらない限りあなたを脅かすことはない。今回は内なる敵が相手だ。闘争・逃走反応はこの場合、役に立たない。

上記のような意志力のチャレンジが失敗しそうになると、私たちは怠け者だからなど自分の性格のせいにしがちだ。しかし大抵の場合は、慢性的にストレス状態にあるなど、脳と体が自己コントロールに適さない状態にあるだけだ。その場合は前面に出てくるのは衝動的な自己となる。意志力のチャレンジで成功するためには、心と体の状態を整える必要があるのだ。

罪と報酬のシステム

よいことをすると悪いことをしたくなる

人は少しよいことをすると、こんどは自分の好きなように行動してもいいというような、心理学者の言う「モラル・ライセンシング」に陥る。

私たちは誰でも少し進歩すると、それをいいことについサボりがちになってしまうことを、心理学者はよく知っている。教授たちはある実験でダイエットが順調に進んでいる参加者たちと面会し、各自の理想体重にどれだけ近づいたかを確認した。参加者は激励賞としてリンゴかチョコレートバーをもらえる。すると、進歩を自覚して気分がよくなった参加者の85パーセントはリンゴではなくチョコバーを選んだ。これに対し、進歩の進捗の状況を確認しなかった参加者の場合、チョコバーを選んだのは58パーセントにすぎなかった。

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要約公開日 2013.10.31
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