マネジメントに関する自己啓発書を読んでも、本当に難しいことは書かれていないことが多い。
本当に難しいのは、大胆な目標を設定することではなく、目標を達成できないときに社員をレイオフすることだ。優秀な社員を採用することではなく、優秀な社員が不当な要求をしたときに対処することだ。そのような問題には決まった対処法が存在しない。ただ、困難な経験から得られる教訓はある。本書は著者が直面した困難を中心に展開する。ゼロから何かを作り上げようとして、苦闘する人々こそ、本書からインスピレーションを得られるに違いない。
著者は大学でコンピュータ科学を専攻していた頃、シリコン・グラフィックス(SGI)という会社でインターンをしていた。『ターミネーター2』の特殊効果に使われるソフトウェアや、フライトシミュレーター等、様々なクールな製品を作っている会社だった。
そして大学院を卒業後、著者はSGIで働くことになった。夢が実現した心持ちだった。1年後、SGIの元マーケティング部長でスタートアップ(ベンチャー企業)を経営するロゼリーから熱烈な誘いがあり、彼女の会社、ネットラボで働き始めた。
しかしネットラボは創業者ではなく、ベンチャーキャピタリストによって送り込まれた経営陣で運営され、彼らの製品やテクノロジーへの理解不足から、右往左往していた。ネットラボで働き詰めの中で、著者の2人目の子供、マリアが自閉症と診断され、家族への負担は増していた。
エアコンも買えないような生活をしている最中、著者の父が訪ねてきた。40度の暑さの中、3人の子供は泣き続けていた。父は離婚こそが最も高くつくものだと忠告する。著者はこのままでは家族を失いかねないと感じ、一番大切なことである家族を重視することにした。翌日に、ネットラボを辞め、ロータス・ディベロップメントでの職を見つけ、家庭生活を取り戻していった。
ロータスで働いている時、同僚から「モザイク」というインターネット閲覧ソフトを紹介された。それまでインターネットは大学や研究所だけで使われていたが、「モザイク」のグラフィカルなインターフェースは未来のインターネットを形にしたようなものだった。そして、シリコン・グラフィックスの創業者であるジム・クラークと、モザイクの開発者のマーク・アンドリーセンがネットスケープというスタートアップを創業するという記事を読み、著者は応募することを決めた。
ネットスケープでは、エンタープライズ・ウェブサーバーの開発事業を任された。ネットスケープは設立後1年4カ月で株式上場を果たす。マイクロソフトの上場でも設立後10年以上かかったことからも、ネットスケープの早期の上場は世界に大きな衝撃を与えることになる。
しかし、ネットスケープはマイクロソフトの反撃を受けた。マイクロソフトはパーソナル・コンピュータ市場の95パーセントを握る強みを活かして、ウィンドウズ95にブラウザを無料でバンドルしてきたのだ。
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