2006年11月7日、サンフランシスコで開催されたウェブ2.0サミットにおいて、ジャック・マー(アリババの創業者)は壇上に登った。会場にはしゃがみ込みながら、ジャックの言葉を書き留める人がいた。なんとそれは、アマゾンの創業者かつCEOのジェフ・ベゾスだった。電子商取引の父とも言えるジェフ・ベゾスがアリババから学ぼうというのだ。
ジャックがジェフに会いたいと強く願っていたこともあり、講演後に両者は話をした。ジェフはジャックに、素晴らしい講演だった、是非シアトルに遊びに来てほしいと言った。その7カ月後、ジェフが話題に出した中国展開の方法は、ジャックの講演の内容が反映されたものとなっていた。
ジャックは1964年9月19日に生まれた。ちょうど毛沢東の文化大革命が始まる2年前のことだ。幼少時は政治の混乱の最中で、知識人、芸術家、資本家が虐げられた時代だったため、父親が弾き語りの民族芸能の芸人だったジャック一家は、共産主義者から目の敵にされた。
そんな現実を忘れるために、ジャックは武侠小説を読み、強大な敵を打ち倒すストーリーに思いを馳せていた。身長が低いジャックは、父親から、「それから、こいつ(ジャック)はごみ捨て場から拾ってきました」というように紹介されるような扱いも受けたが、それもジャックの胆力を鍛える要因だったのだろう。また、西湖の近くに外国人がいることを聞いたことをきっかけに、自転車で出かけ英語の練習をすることを日課とした。そのことはジャックの英語力と国際感覚を高めることに繋がった。大学卒業後、ジャックは大学で英語教師として働くようになった。
ジャックは杭州師範学院の恩師から5年間は英語教師を続けてほしいと言われていたため、その約束を果たした上で、翻訳の会社を立ち上げた。その後、シアトルの友人を訪ねた際に、インターネットと出会い、世界中の情報が掲載されているのに、中国の情報が一切見つからない現実に直面し、この分野に身を投じようと心に決めた。
3,400冊以上の要約が楽しめる