動物と植物の違いは何か? 細胞壁の有無、光合成の有無、栄養摂取のために動物は動き回り植物は動き回らない、という3つが大きな相違点らしい。特に3番目の動物は動くという点について注目する。
我々人間も動物であるため、当然ながら「動く」特徴がある。その目的は、学校へ行ったり、職場に行ったり、友人と会ったり、レストランに行ったりと様々であり、我々は人間的で文化的な生活を営むため、動き回っている。
人間が意識的に速度を要求し始めたのは、古代オリエント時代のチャリオットと呼ばれる戦闘用馬車だろう。馬を複数立てにした二輪車は、戦争に勝利するために生み出された。その後、馬車や帆船が速い移動手段だったが、蒸気機関の発明により鉄道や大型の船舶が生まれ、自動車や飛行機、リニアモーターカーに至っている。
交通手段の技術が目覚ましく進歩する一方で、ある程度のまとまった移動時間である「かたまり時間」や、性質の異なる時間として電車の乗り換えの時間などに発生するこまぎれの時間である「すきま時間」も生じている。
しかし、この枠組みは急速に普及したスマホやタブレットPCにより根底から瓦解する。それらの登場により、長時間移動の「かたまり時間」や、通勤時の地下鉄での一駅通過するために生じる「すきま時間」を有効に活用することが可能になったのだ。
スマホを保有することで、移動に伴う「かたまり時間」も「すきま時間」も自在に活用できるようになった。最新のヒット曲を探してストリーミング配信でその音楽を楽しみ、銀座のネイルサロンを予約し、ニュースのキュレーションサイトで最近のギリシャ問題に関する内容をチェックすることもできる。
したがって、動物と植物の相違点である「動く」という行為において、人間と他の動物の間で、「動く」という行為の中での複数目的の実現可能性という違いも生まれた。
スマホを駆使して使用可能となった「すきま時間」は、移動という行為のみで発生するとは限らない。本を読みながら気分転換に窓の外を眺める時間、朝食のバナナをかじりながらボーっとする時間、会議の相手が5分遅れて来ることになり急に発生した空き時間などだ。
このような偶発的かつアトランダムに発生する「すきま時間」の価値は哲学的にはあるかもしれないが、経済合理的な意味においては価値が高くなかったのである。しかし、スマホにより「すきま時間」の価値が飛躍的に増大した。そのため、商売を行う企業側も、そのような消費者の変化に対して、マーケティング戦略や商品戦略で大きな転換が迫られることになる。
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