映画・テレビスタジオのワーナー・ブラザーズは、1999年、年間で25本製作された映画の中から、看板映画を4、5本選び、その映画の製作とマーケティングに多額の予算を集中的に投資した。多数の作品に少しずつ賭けて「利ざやを求めて管理する」ほうが賢明に見えるが、回収不可能と思えるほどのコストを少数の作品に費やすのはなぜなのか。
これは映画やテレビ、音楽、出版などのエンタメ業界がその有効性を証明してきた「ブロックバスター戦略」を根拠にしている。ブロックバスターとは、第二次世界大戦時に空爆によってブロック(町の区画)を一気に破壊するほどの強力な爆弾にちなんだ、圧倒的な影響力を持つ大ヒット作品を指す。ブロックバスターを狙って多額の費用をつぎ込み、「その他大勢」の作品の費用を抑えることが、確実に成功を収める方法なのである。
この戦略が映画業界にどんな影響を及ぼしているかを紹介しよう。
ブロックバスター戦略をとる映画スタジオは、最もヒットしそうな作品に大金を投入し、莫大な売り上げと利益を狙う。この大型投資は、「集中と選択」の経営理論の実践としてとらえることができる。
2010年を例にとると、先述のワーナー・ブラザーズは製作費予算の3分の1を、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』『インセプション』『タイタンの戦い』というスター作品につぎこんだ。最大の予算を投入した映画は高収入、高利益を見込めると期待されていた。ワーナーの業績を見ると、高額を投じた上位3作品は、2010年の興行収入に占める割合が全米で40%以上、全世界で50%以上となった。
映画作品の群雄割拠といえる現在においては、観客の注目を勝ち取るために、競合作品より抜きん出ることが目標となる。ワーナーの社長兼COOであるアラン・ホーンは次のように語る。「筋金入りのファンでさえ、1週間に1本しか映画を観ない。その人たちに必ず選んでもらえる映画をつくらなくてはならない」。
また、広告宣伝費を含めると、ブロックバスター戦略の有効性はますます明白となる。
3,400冊以上の要約が楽しめる