新訂 孫子

未読
新訂 孫子
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新訂 孫子
出版社
岩波書店
出版日
2000年04月14日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書は古代中国の兵法書として名高い一冊で、紀元前から長年にわたり広く読み継がれている、まさに大古典である。戦争における現実認識の重要性と戦略の必要性を伝えるこの本は、現代においては経済の分野で戦うビジネスパーソンのバイブルとなっている。経営者の必読書とされることもしばしばである。

この中で述べられる内容には大きく三つの特徴がある。まず第一に、戦争の方法について書かれた本でありながら、戦争を非効率的であると考えていることが挙げられる。つまり、戦わずに勝つことが最上とされる。そして次に、冷静な状況把握が徹底されている点もポイントである。負けないために何が必要なのかを現実に立脚しながら考えている。最後に、徹底した戦略重視のスタンスが貫かれている。スパイの重要性について述べる段はその典型である。

以上のように、いかに効率的に勝利を引き寄せるかが説かれている本書は、現代においてもまったく古びない価値を持っている。一読すれば、経営戦略の原型のほとんどがここにあることに気付くであろう。この決して分厚いわけではない一冊を読みこなし、自分のものにすることができれば、それだけでいま巷を賑わしている何冊もの本の核心を一挙にものにできるに等しい。

本書は訳文も平易であり、丁寧な注釈もついている。解説書を手に取る前に、ぜひこの原典に挑戦してほしい。きっと想像力を刺激されるに違いない。

著者

孫武
『孫子』の著者と考えられている人物。中国の春秋時代の兵法家。斉(今の山東省)で生まれ、呉の王に仕えた。戦術を駆使して大国の楚を破るなど、武名を挙げた。孫子は敬称である。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書では、戦わずして勝つことが最上と主張され、戦争を奨励はしていない。しかし、いざ戦争となったとき、いかにして自国の被害を最小限に抑え、同時に大きな利益をあげることができるかを考察している。
  • 要点
    2
    この目的を達成するためには、敵を知り自軍を知ったうえで、冷静に状況分析をすることが必要になる。そして、自軍が戦いにおいて主導権を握れるような戦略を立てる。戦術の極致は、敵に自軍の形を見せず、相手が備えることを不可能にすることである。

要約

戦わずして勝つことが最上である

実際に戦うことは上策ではない
TerrySze/iStock/Thinkstock

戦争は国家にとって非常に大きな決断であり、国民の生死や国の存亡がそこで決まる。そして戦争には膨大な準備が必要となり、多くの費用もかかる。長期間陣営を保とうとすれば、国家の経済にも大きな影響を及ぼす。国が弱れば、外国の恰好の餌食ともなってしまう。こうした戦争の損害を知らない者は、戦争の利益も十分にわかっていないといえる。

このように、戦争は国家の一大事であるからして、慎重に事を進めることが重要である。戦争において、敵を撃破して降伏させることは最も良い作戦ではない。敵を傷つけずに降伏させることが最も良いのである。百回戦争をして百回勝つことは確かにすごいことではあるが、最高に価値のあることではない。戦わずに勝つことこそが最上なのである。

そう考えると、最も優れた勝ち方は、敵国が陰謀をめぐらせているあいだに、その陰謀を打ち破ることである。敵国同士が連合した時はそのつながりをほどくのがその次に良い。そうできなかったときに、ようやく敵の軍隊を打ち破るということになる。最も良くない勝ち方は、敵の城を攻めるということである。城を攻めようとすると、準備に莫大な時間と費用がかかり、自軍が被害を受けることも避けることはできない。戦争を上手く行う者はこうした戦い方をしない。無傷で利益を得ることを目指すのである。

戦わずして勝つためには戦術が必要である

戦争に勝つためには相手の裏をかかねばならない。例えば、仮に自分たちが強くても弱いと思い込ませる、勇猛さを隠して臆病と思わせる、あるいは、近くにいるにもかかわらず遠くにいるように見せかけること。そして敵の様子を観察し、混乱しているときにはそれに乗じて攻めたて、気力充実とみれば防御に徹する。このようにして敵の不意を突くことが重要である。

必ず勝つために何をすべきか
kiankhoon/iStock/Thinkstock

戦争においては、自軍が敵の十倍いたときは、敵を包囲すべきである。そして、五倍であれば敵を攻撃すべきである。二倍であれば敵の勢力を分散させることを優先し、同じ数なのであれば懸命に戦う。自軍が少ないとき、力がかなわないときは、退却し、あるいは隠れるべきである。

そして、必ず勝つためには、五つのことを頭に置いておかねばならない。

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要約公開日 2016.03.31
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