世間で推奨されているが科学的には効率が悪い。まずは、そんな勉強法の一部を紹介していく。
1つは、「ハイライトまたはアンダーライン」だ。教科書や参考書の大事だと思った部分に印をつける人は多いだろう。しかし、心理学者の多くはこれを、ただの気休めととらえている。問題は、ハイライトをひいただけで脳が満足してしまう点だ。脳はあくまで重要な情報を選別しただけで、「この内容には覚える価値がある」とまでは判断しない。よって、中身が頭に定着しない。さらには、脳の注意がハイライトされた特定の情報にだけ向かうため、情報の全体像を把握しなくなるというデメリットがある。
もう1つの効率の悪い勉強法は、学んだことを「忘れる前に学習する」ことである。アメリカで行われた「復習の最適なペース」を探る実験によると、勉強の内容を忘れないうちに復習した生徒は、学期末の成績が最も悪かったという。逆にテストの成績がよかったのは、学んだことを忘れかけた時点で復習した生徒だった。
忘れないうちに復習すると、脳は「すでに知っている情報だから記憶しなくてもよい」と判断してしまう。よって、忘れた頃に復習するのが正解だ。思い出す作業によって、脳が刺激され、記憶の定着に結びつく。
そのほか、語呂合わせやテキストの再読、自分の学習スタイルに合わせるといった定番勉強法も、科学的には効率が悪いという。
真に効果が高い勉強法には、共通する1つの特徴がある。それは「アクティブラーニング」である。アクティブラーニングとは、授業を聞きながらノートをとるような受け身の姿勢ではなく、進んで頭を使いながら積極的に学ぶ手法のことだ。数十年におよぶ研究データによると、効果が高い勉強法は、アクティブラーニングの要素を含むという。著者が本書で提唱するのは、「アクティブすぎるほどのアクティブラーニング化」である。
アクティブラーニング化の2大ポイントは、「想起」と「再言語化」だ。
1つ目の「想起」は、「思い出すこと」である。人間の脳に情報を刻み込むのに最適な時期は、思い出す作業をした直後になる。模試を何度も受けたほうがいいというアドバイスが科学的に正しいのは、必要な情報を思い出そうとして、脳がよい方向に強化されるからだ。勉強法を見直すときは、「思い出す作業をどこかに組み込めないか」と考えるとよい。
2つ目の「再言語化」は、「自分の言葉に置き換えること」である。これは何かを記憶するよりも、何かを理解するときに大事になる。
たとえば、英語の「on」という前置詞の使い方を理解したいとする。辞書的な用法をそのまま覚えたり、「on the desk」などのフレーズを丸暗記したりしていないだろうか。これでは応用が利かない。一方、「onとは、具体的なものに限らず、何かに接触していること」などと、自分の言葉で表現すると、理解がしやすくなる。このように、「わかりやすく言い換えるとどうか」と考えることが、アクティブラーニングの基本である。
ここからは、学習において最も大事な「想起」を使いこなすためのテクニックを紹介する。それは、「クイズ化」「分散学習」「チャンク化」の3つである。
まずは「クイズ化」である。覚えたい情報をクイズにして、自分の記憶度をテストする方法だ。代表例は単語カード、模擬テストなどである。これらを行うと、単にテキストを再読したときと比べて、約50~70%も記憶の定着率が上がることが明らかになっている。
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