0から1をつくる

地元で見つけた、世界での勝ち方
未読
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出版社
出版日
2019年01月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

平昌五輪で銅メダルを獲得したカーリング女子日本代表「ロコ・ソラーレ」。「そだねー」は2018年の流行語大賞にも選ばれ、「もぐもぐタイム」とともに日本中に一大旋風を巻き起こした。

カーリングの試合に出場できるのは4人。しかし、ベンチには5人目の選手がいる。五輪の会見で、試合に出場していなかった5人目を見て「誰だろう?」と思った人もいるかもしれない。その人こそが、本書の著書である本橋麻里さんだ。

著者は、今大会こそ試合には出場しなかったが、06年のトリノ五輪、10年のバンクーバー五輪に連続出場したカーリング界のスター選手だ。しかも、日本カーリング史上初のメダルを獲得した「ロコ・ソラーレ」を立ち上げた人物でもある。ロコ・ソラーレは北海道・常呂町の「何もない田舎町」で産声をあげたチームだ。資金も選手もない、まさにゼロからのスタートだった。

とかく可愛らしさに注目されがちな「カー娘。」だが、本書は芯の通ったビジネス書だ。五輪の舞台裏やプライベートな話も盛り込みながら、「チームビルディング」「リーダー論」「コミュニケーション術」「地方創生」「女性の生き方」といった、カーリングとは無縁の私たちにも刺さる要素がふんだんに詰めこまれている。

カーリングに興味がある人もない人も、ぜひ手にとってお読みいただきたい。必ず得られるものがあるはずだ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

本橋 麻里(もとはし まり)
1986年、北海道北見市(旧常呂郡常呂町)生まれ。12歳で本格的にカーリングを始め、チーム青森のメンバーとして2006年トリノ、2010年バンクーバーの両五輪に出場する。バンクーバー五輪後に新チーム、ロコ・ソラーレを立ち上げ、2018年平昌五輪に出場、銅メダルを獲得した。2018年8月にチームを一般社団法人化し、自身は代表理事としてチームのマネジメントおよび後進の育成に携わっている。本書が初の著書となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    強いチームづくりにはコミュニケーションが欠かせない。遠回りであっても、メンバー同士が本音でぶつかり合うことが大事である。
  • 要点
    2
    カーリングが人生ではなく、人生の中にカーリングがある。結婚や出産を含めた女性としての人生を大切にすること。その経験もカーリングに活かされる。
  • 要点
    3
    全力で楽しむことで想像以上の力が発揮できる。練習の苦しさは、その先にある楽しさを味わうためのものである。
  • 要点
    4
    著者は今後、業界の底上げをめざし、人材育成、トップチームの強化、そして地域貢献に取り組む予定だ。

要約

銅メダルの裏で

相手への敬意が何より大事なカーリング
klikk/gettyimages

2018年2月24日は、日本カーリング史に残る日となった。平昌オリンピックで日本とイギリスが銅メダルを競い、日本が見事勝利。カーリング女子日本代表は、初のメダルを獲得したのだ。

勝利が決まってまず著者がしたことは、5人目の選手として、相手チームのコーチボックスに行って「Good game」とお互いの健闘を讃え合うことだった。カーリングは審判のいない、相手との信頼関係ありきのスポーツだ。だから、試合後はどんな結果であろうと、まずは相手と笑顔で握手をし、感謝を伝えるのだ。

平昌オリンピックは著者にとって3度目のオリンピックであった。そして、初めてコーチボックスに座ることを選択したオリンピックでもあった。「アイスに立ちたい」という気持ちがあったことは否定しないが、コーチボックスから見た景色は思っていた以上に気づきに満ちていたという。相手チームメンバーと交流したり、ハーフタイムに「最小限の正しいこと」を選手に伝えたりと、チームをサポートする重要性を学ぶ、貴重な経験となった。

コミュニケーションが強さを生む

著者は北海道の常呂町(ところちょう)で生まれた。常呂町はオホーツク海に面した人口約3700人の小さな町だ。ホタテやジャガイモが名産の「何もない町」だが、オリンピック出場経験のあるカーラー(カーリングの選手)を10数名も抱える「カーラーの名産地」だ。

著者は小学4年生の時、体育の授業で初めてカーリングに触れた。そしてその後、中学3年の時に日本ジュニア選手権で優勝し、世界ジュニア選手権に出場する。

高校卒業後は「チーム青森」に加入するため、故郷を離れて青森市内の短大に進学した。2006年2月には初めての五輪、トリノ大会に出場。続けて2010年のバンクーバー五輪にも出場を果たす。しかし結果はいずれもふるわず、7位、8位という結果に終わった。ショックだった。

4年に一度の五輪という舞台に出るため、選手には厳しいスケジュールが組まれている。そのスピード感の中、大事な「コミュニケーション」がふるい落とされてしまったのではないか。著者はバンクーバーの後、そう思うに至ったという。

2度の五輪で連覇を果たしたのはスウェーデン代表だ。しかもバンクーバーでは全員が「ママプレーヤー」になっていた。カーリングが人生なのではなく、人生の中にカーリングがある。そして、人生とカーリングがお互いに良い影響を与え合っている。スウェーデン代表チームの姿から、そのことを学んだ。

ロコ・ソラーレ結成
jewhyte/gettyimages

2010年、著者は故郷の常呂町に戻り「ロコ・ソラーレ」を結成。「密なコミュニケーションを武器にした地元に愛されるチーム」「楽しいカーリング」を目指して助走を始めた。

当初のメンバーは看護師の馬渕恵(25歳)、地元製菓会社勤務の江田茜(21歳)、まだ学生だった鈴木夕湖(18歳)と吉田夕梨花(17歳)、そして著者の5名だ。年齢も職業もバラバラ、ゼロからのスタートだった。

「4年に一度」に振り回されないチームをつくりたい。それが著者の願いだった。そのためには、お互いが何でも言い合える、深いコミュニケーションを重ねる必要があった。

また、地元に愛されるチームでありたいとも考えていた。チーム名に「ローカル」を意味するロコをつけたのもそのためだ。

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要約公開日 2019.03.25
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