企業変革の実務

いつ、何を、どの順番で行えば現場は動くか
未読
企業変革の実務
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企業変革の実務
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2018年11月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「企業変革」という言葉をよく聞くようになってきた。組織で働いていれば、お題目のように耳にしている人も多いのではないだろうか。

ただ本書は、そんなお題目とは完全に一線を画しており、まさに企業変革を全身全霊で進めていくための一冊だ。15年の長きにわたり事業再建請負人として活躍している著者は、ひたすら企業変革に向けてひた走ってきたという。もはや「企業改革」という言葉をいちいち強調する必要がないぐらい、それを当たり前に実行してきた人物だといえる。

企業変革というと、それを進めるべきはまず社長や役員であるように感じられるかもしれない。もちろん彼らの役割はとても大事だ。しかし本気の現場では、たとえ若手であっても「あなたが○○についてリーダーシップを取ってください」と言われることもあるはずである。そこで適切なサポートと教育、モチベーションが与えられ、自分も大きく成長できるとしたら、それはきっと挑戦しがいのある仕事となるだろう。

本書を読めば、「本気の企業変革」のダイナミズムがどのようなものか理解できるようになる。実際に企業変革に取り組む人にとって学びが多いのは間違いないが、そうでなくても部下や現場を動かすうえで、マネジメントの勉強になる一冊である。

ライター画像
三浦健一郎

著者

小森 哲郎 (こもり てつお)
昭和33年12月1日生まれ、神奈川県出身。昭和59年早稲田大学大学院理工学研究科生産工学修士課程修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。平成5年同社プリンシパル(パートナー)就任。平成14年株式会社アスキー代表取締役社長CEO、平成18年カネボウ株式会社(のちのクラシエホールディングス株式会社)取締役兼代表執行役社長CEO、平成27年株式会社建デポ代表取締役社長CEOに就任。現在は、株式会社巴川製紙所取締役監査等委員会委員長、ユニゾン・キャピタル株式会社マネジメントアドバイザーをはじめ、いくつかの企業や非営利団体に対するアドバイザーを務める。著書に『高業績メーカーは「サービス」を売る』(共著、ダイヤモンド社)、『会社を立て直す仕事』(日刊工業新聞社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「不振企業」と「冴えない企業」が目指すべきは、課題解決ガバナンスが確立された「優れた企業」だ。そのためには企業変革を1~2年の間に達成する必要がある。
  • 要点
    2
    企業変革プログラムの策定は、まず企業を診断し、変革の方向性を定めるところからスタートする。そこから具体策に落とし込み、実施優先度を決め、中身を設計していく。
  • 要点
    3
    企業変革において最も大事なのは、課題解決ガバナンスを機能させ、同時に変革プログラムの策定を行う最初の6カ月だ。

要約

不振企業と冴えない企業が目指すべきもの

不振企業と冴えない企業
liza5450/gettyimages

企業再生を15年にわたって手掛ける著者が、事業再建請負人(ターンアラウンドマネージャー)としての方法論をまとめ上げたのが本書だ。ではどんな企業の再生を著者は手がけたのか。その解説から本書は始まる。

最初に挙げられるのが「不振企業」だ。これは業績の慢性的な不振が何年も続き、「問題山積み」「複合汚染」「複雑骨折」の三重苦にある企業のことである。戦略、オペレーション、組織のいたるところで多くの課題を抱えており(問題山積み)、組織構造や運営システムの不備といったハード面から、企業文化の問題などソフト面までが絡み合い、複合的な汚染状態に陥っている(複合汚染)。こうした状態を健全な姿へ戻すには、しっかりとした変革の設計図を用意して組織を切開し、処置した後はギプスで固定し、必要ならリハビリまで手掛けなければならない(複雑骨折)。

一方で「冴えない企業」もある。これは慢性的に収益がぎりぎりな業績低迷企業や、不振企業とまではいかなくとも、直面している課題の解決が進まない企業のことだ。冴えない企業では、課題解決のPDCAサイクルにおいて「ズレ・モレ」が生じており、その結果として機能不全に陥っていることが多い。

不振企業においても冴えない企業においても、問題の根幹は課題解決のプロセスがうまく回っていないことにある。

優れた企業が持つ課題解決ガバナンス
Tom Merton/gettyimages

不振企業や冴えない企業が目指すべきは、もちろん「優れた企業」だ。では優れた企業とはどんな姿をしているのか。

まず優れた企業は、高業績を維持している。ただしこれは財務数値面のみに限らず、顧客満足度や社会貢献といった、目に見えにくい定量的・定性的な広い意味での業績も含んでいる。また優れた人材を育成・輩出していることも、優れた企業の特徴だ。たとえその企業にずっと留まっていなくても、優れた企業の出身者はよく鍛えられ、他の企業でも大活躍することが多い。

こうした優れた成果を生む要因は3つある。1つめは業績志向でありながら、透明性が高く、顧客に向けてオープンな企業風土を有している点だ。優れた企業は結果や数字に対しては厳しいものの、組織自体はギスギスしていない。さまざまな意思決定や議論の透明性が高く、オープンに行われているからである。

2つめは日々のオペレーションでの優位性を有している点だ。事業戦略や組織の運営システムが優れているのはもちろんのこと、ひとつひとつのオペレーションが卓越しているのである。

3つめは環境変化に対応しうる、組織としての問題解決能力を備えている点である。多少の景気変動や経営環境の変化があっても、優れた企業は高い問題解決スキルをテコにして、自らをより高いレベルに向上させることが可能だ。

これらの中でも優れた企業の根幹を成しているのが、3つ目に挙げた組織としての問題解決能力である。これが当たり前のものとして定着している企業は、自律的な「課題解決ガバナンス(企業統治)」が確立された状態にあるといえる。不振企業や冴えない企業を変革するうえでは、この課題解決ガバナンスをなによりも優先して確立しなければならない。

変革のタイムフレーム

では企業変革は、どのくらいのタイムフレームで考えるべきなのか。この問いに対する答えは、企業変革の成功に必要な要素を考えれば自ずと明らかになる。

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要約公開日 2019.03.19
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