82年生まれ、キム・ジヨン

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82年生まれ、キム・ジヨン
出版社
出版日
2023年02月13日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

「社会現象」と呼ばれ、異例の大ヒットとなる作品はときどきある。この小説は、まさにそれだ。書店で平積みされているのを見かけた方も多いかもしれないが、日本で、外国文学、とくにアジア圏の文学がこれほど注目を集める事態は類がない。原書が刊行された韓国では136万部の売れ行きを突破した(ちなみに、韓国の全人口はおよそ5千万人だ)。本作は世界32カ国・地域での翻訳出版も決定し、映画化もされた。

これほど支持を集める理由は、本を開けば明らかである。女として生まれ落ちたキム・ジヨン氏は、一見、それなりに幸せな人生を歩んでいるように見える。けれどそこには、ふつうの日常にうずもれた、小さな理不尽がたくさんある。女性であるということだけを理由にした理不尽が。読者は自分の体験や、言葉にならなかった気持ちを思い出し、怒りに心をざわつかせながら読み進めずにいられなくなる。

昔と比べれば、もちろん女性は生きやすくなった。けれど、進学、就職、結婚、育児といったさまざまなライフステージを見渡してみてほしい。わたしたちの社会には、まだまだ男女が同じようには幸せになれない慣習や構造が残っている。

韓国では、そうしたつらい思いを自分の娘にはさせたくないと考えた父親ら、多くの男性たちも本書を手に取っているという。この本を300冊買って、手紙とともにすべての国会議員に贈った男性国会議員もいるそうだ。次世代がより幸せに生きることができるように、性別にかかわらず、たくさんの方がご一読くださることを心から願う。

※本要約は、過去に作成した要約を最新版に合わせて一部再編集したものです。

ライター画像
小日向悦子

著者

チョ・ナムジュ
1978年ソウル生まれ。「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年)、ミリオンセラーとなる。著書に『彼女の名前は』(小山内園子、すんみ訳)、『サハマンション』(斎藤真理子訳)、『私たちが記したもの』(小山内園子、すんみ訳)いずれも筑摩書房刊、『ミカンの味』(矢島暁子訳、朝日新聞出版)。

本書の要点

  • 要点
    1
    女性が人生で経験する、女性であることを理由としたささやかな理不尽を暴いた、韓国の話題作。本国ではベストセラー街道を驀進し、多くの国での翻訳刊行が決定している。
  • 要点
    2
    1982年生まれのキム・ジヨン氏は33歳。夫は仕事が忙しく、どちらの実家も頼れないため、一人で子育てを担当している。キム・ジヨン氏は、あるときから、身近な女性が憑依したかのような言動をするという奇妙な症状を発症し、精神科のカウンセリングを受けることになった。キム・ジヨン氏のこれまでの人生が明らかにされる。

要約

キム・ジヨン氏、33歳

2015年秋
kumikomini/gettyimages

キム・ジヨン氏は三年前に結婚し、一年前に女の子を出産した。33歳だ。夫は帰宅時間が遅く、土日も片方は出社する。どちらの実家も頼れないので、ジヨン氏は一人で子育てを担当している。

キム・ジヨン氏に異常が見られたのは9月8日のことである。朝食で突然、自分の母のような物言いをした。しゃべっている内容だけでなく、話し方の様子も身振りの癖もそっくりだった。夫は驚いたが、冗談だと思って応対した。

けれどその後もジヨン氏の異常は続いた。自分は去年死んだ二人の共通の知り合いだと言い出したり、彼女の料理の技術では作れず、彼女自身も好きではない料理を作ったりする。

事件は秋夕(チュソク。里帰りして先祖の墓参りをするのが恒例)の連休に、夫の実家へ行ったときに起きた。ジヨン氏は、姑と一緒にたくさんの料理をして食膳の準備をした。夫の妹のチョン・スヒョン氏が、自分の母親に向かって、こんなに苦労して準備をしなくてもいいのではないか、ジヨンさんだって大変だし、ということを発言した。姑は「家族に食べさせたくてやってることじゃないか。これのどこが苦労なんだい?」と返し、ジヨン氏に、「あんた、大変なの?」と尋ねた。そのときだ。ジヨン氏の表情が変わり、自分の母のような語り口で、「ああ、もう、お義母さん。うちのジヨンはねえ、実は、帰省のたびに体をこわすんですよぉー」と答えたのだ。その場に緊張がみなぎった。不機嫌になってしまった舅に対し、ジヨン氏はさらに、「うちだって、家族なんですよ」「うちの子だって里帰りさせてくださいよ」と落ち着き払って言った。

ジヨン氏の夫は一人で精神科を訪れ、治療法を相談した。精神科医は、ともかくカウンセリングを受けることを提案した。ジヨン氏には自覚症状がなかったが、気分が沈みがちで育児うつかと思っていたとのことで、精神科医の提案に感謝した。

【必読ポイント!】キム・ジヨン氏のこれまでの人生

1982年~1994年
NataliaDeriabina/gettyimages

キム・ジヨン氏は1982年4月1日、ソウルのとある産婦人科病院で生まれた。そして、父方の祖母、公務員の父親、主婦の母親、姉と弟と暮らした。

ごはんは父、弟、祖母の順に配膳され、かたちのきれいな豆腐や餃子は弟が食べた。傘が二本あれば、一本を弟が使い、姉妹はもう一本で相合傘をした。けれど、キム・ジヨン氏は弟をうらやましいとは思わなかった。年上だから譲ってやらなくては、同じ性別の姉と自分がものを共有するのは当然だと、自ら理屈をつけて納得していた。

キム・ジヨン氏の祖母は、嫁でありキム・ジヨン氏の母であるオ・ミスク氏が女の子を産むたびに、次は男の子を産めばいい、と声をかけ続けた。三人目に身ごもったのも女の子だとわかったとき、オ・ミスク氏は泣きに泣いた。その夜、オ・ミスク氏は夫に、もし生まれてくる子がまた娘だったらどうする、と尋ねたところ、返ってきたのは「縁起でもない」という言葉だった。

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要約公開日 2023.02.17
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