著者は、ダイヤモンドからナイフやフォークといったものまで、多様な貿易で世界のユダヤ商人相手に取引をしてきた。そんな著者自身が商売の手本としてきたのが、まさにその相手であったユダヤ商人の考え方であり、本書はそれを世に広めるための一冊である。
ユダヤ商人の商法は、まず「七八対二二の法則」という大法則によって成り立っている。これは、人間の力ではいかんともしがたい大自然の宇宙の法則とイコールだ。例として、正方形とその正方形に内接する円の関係がある。面積が一〇〇の正方形の場合、その正方形に内接する円の面積は七八・五。厳密にはプラスマイナス一の誤差があるとして、円の面積を約七八とすると、正方形の残りの面積は約二二だ。それ以外にも、空気中の成分が窒素七八に対して酸素等が二二の割合であることはよく知られている。また人間の体も、水分が七八、その他の物質が約二二だ。七八対二二は、人間がどうあがいても曲げることはできない、不変真理の比率であることがわかるだろう。ユダヤ商法が、この「七八対二二の法則」の大法則に支えられている限り、決して損をすることはない。
著者自身も、この大法則に則って成功した経験がある。それはデパートでダイヤモンドを売り出す商いで、当初は誰もが懐疑的だった。しかし著者の考えはこうだった。世の中に出回っている金を一〇〇とすれば、七八を握っているのが金持ちの層であり、この金持ちクラスを相手に商売をすれば儲かるのは明白なのだ。案の定、ダイヤモンドの売上は予想を超え、各所で数億円を上回った。
ユダヤ人、と著者がいうのは、ユダヤ民族のことである。彼らは世界中に散らばっており、当然ながらそれぞれの国籍は様々だ。ただし、世界の全ユダヤ人が集まっても、その人数は一三〇〇万ほどで、東京一都市の総人口とさして変わらないくらいである。
人数は決して多くないのに、歴史上の重大発見であるとか、人類不朽の名作などはユダヤ人の手によるものが多い。ピカソ、ベートーベン、アインシュタイン、マルクス、イエス・キリストなど、こうした人物は皆ユダヤ人である。
それ以上に重大なことは、欧米の名だたる商人の大半が、ユダヤ人であるということだ。貿易商として欧米で商売をしようとすれば、好むと好まざるとにかかわらず、ユダヤ商人を窓口とする以外にない。ユダヤ商人は、世界を支配しているといっても過言ではないのだ。
そんなユダヤ商人の相手をしてまず驚かされるのは、彼らの判断の確かさと速さだ。
ユダヤ商人は世界をまたにかけて飛び回っているから、最低二カ国語はマスターしている。自国語でものを考えながら、同時に外国語でも考えることができるということは、物事を違った角度から幅広く理解できることにつながる。自国語しかしゃべれない商人よりはるかに的確な判断が下せるようになるわけで、これができるユダヤ商人は、国際商人としては大変強い。
またユダヤ商人の判断が迅速なのは、彼らが暗算の天才であることによるものだ。例えば、日本の工場の係員が、工員の月額給与から一時間当たりの賃金を計算するのにたっぷり二、三分はかかるところ、ユダヤ商人は
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