テレビをつけると、連日のように謝罪会見が行われている。有名企業や大学、スポーツの強豪チーム、病院、タレント、アーティストなど、権威や社会的信頼のある人たちが謝っている。
謝罪会見を見ていると、謝罪そのものが目的化しているように感じる。加えて、謝罪会見がショーアップ化してしまっているようにも思える。メディアはきっと、謝罪会見を、視聴者や読者を惹きつけるコンテンツだととらえているのだろう。
だがそもそも「謝罪」はゴールではないはずだ。謝罪とは、反省の気持ちや再発防止などを表明し、相手からの許しを請うための行為である。本当のゴールは謝罪そのものではなく、その先にある。
2018年5月6日、A大学とB大学のアメフトの試合にて「大学アメフト反則タックル事件」が起こった。事件とその後に行われた「2つの記者会見」を通して、謝罪のあり方や注意すべき点などを考えていこう。
事件の概要は次のとおりだ。B大学のクオーターバック選手がパスを投げ終え、ホイッスルも鳴った後、その選手の背後からA大学の選手が激しくタックルした。B大学の選手は身体を倒されてしまい、全治3週間の怪我を負った。
後日、A大学は「危険タックルは監督の指示ではなかった」と表明。その時点で明確な謝罪はなかった。B大学は「誠に遺憾だ」とコメントし、A大学監督とコーチは責任を取って辞任することとなった。
事件から2週間後、A大学選手が記者会見を開き、監督とコーチから反則行為を指示されたと説明するとともに「大きな被害と多大な迷惑をかけたことを深く反省している」と謝罪。すでに被害選手と両親らに面会して謝罪したと明かした。A大学の対応の遅さなどを理由に、自ら記者会見を開くことを決めたという。この会見開催については前日に各マスコミにリリースがなされ、テレビのワイドショーも生放送で報道した。
その翌日、A大学前監督と前コーチが記者会見を開き、「危険タックルの指示」を再度否定した。会見開催の告知があったのは午後7時で、会見開始のわずか1時間前だった。「集まるメディアの数を減らしたい」とでも言わんばかりに。
この会見では、A大学広報部の司会者が注目を集めた。会見の終盤で「同じ質問ばかりなので、打ち切ります」などと発言し、報道陣が反発して混乱する場面もあった。
もしあなたがA大学の「危機管理責任者」として、この事件の解決を任されたとしたら、何をすべきか。
まず行うべきは、「謝罪チーム」の編成だ。危機管理責任者のあなたをリーダーとして、大学としての判断や決定ができる立場の総責任者、対外的な窓口となる広報担当、学内的な調整を担う総務担当、法的な問題をクリアさせる弁護士、アメフト部の状況を把握する関係者をメンバーに加えよう。
その上で、次の6つのステップを実行する。
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