統計によれば、ダイエットを始めた人の4割が1週間以内に失敗し、半数以上がダイエット開始前より体重を増やしてしまう。リピート顧客を増やせずに倒産してしまう企業も多い。
一見、ダイエットの挫折と企業の倒産という2つの「失敗」は、原因が異なるように見える。だが実は、問題のカギは共通している。それは、「人が何かを途中でやめてしまう」ことだ。逆に言えば、科学的な裏付けのある方法で「なし遂げる力」を高めれば、あらゆる問題を解決できるということだ。
一般的に、何かをなし遂げたい人には、「性格を変えろ」というアドバイスがなされる。物事を続けるには、強い意志と困難を乗り越えられる情熱が必要だと。だが実際のところ、何かを続けるのに、性格を変える必要はない。科学的な裏付けのある方法を、自分に合った形で取り入れればよいのである。
本書のスタンスは、人間の行動の3つのタイプを科学的に理解し、読者の人生によい変化を起こすための具体的な方法を示すというものだ。
後述するが、人間の行動には、自動行動、衝動行動、一般行動の3つのタイプがある。それらを変えるのは、「心に効く7つの力」だ。私たちが「なし遂げる」ことができないのは、心に効く力がうまく作用していないからであって、意欲や動機付けが足りないからではない。行動を変えるには、意欲や動機付けよりももっと繊細な方法が必要である。
まず、変えたい行動が3つのうちどれに当てはまるのかを判断し、それに相応しい「心に効く7つの力」を活用する。私たちの心に効く力をうまく扱えば、自分や他人の行動を意のままに操ることができる。その7つの力とは、次のとおりだ。
(1)目標を小さく刻む:「ステップ」「目標」「夢」のモデルに基づいて行動する。ステップをできるだけ小さくすることがポイントだ。
(2)コミュニティ:望ましい行動を続けている人たちの仲間になれば、周りから支援を受けたり、他者と競争したりすることができる。
(3)重要性を認識する:行動を続けるには、それを「本当に」重要なものにする必要がある。
(4)簡単にする:人は難しいものよりも簡単な行動をとろうとするものだ。だから物事を「本当に」簡単にしなければならない。
(5)ニューロハックス:まずは行動を変えるべきだ。行動を変えて脳を「騙す」ことで、心も変えられる。
(6)夢中になる:夢中になるために、行動を魅力的なものにする。
(7)ルーチン化する:同じことを最小限の労力でしようとする脳の働きを利用し、行動を何度も繰り返す。
登山をしているとき、頂上につながる切り立った壁を登ることになったとする。そこには、いくつかの梯子が設置され、階段を登れば頂上まで行けるようになっている。そんなとき、頂上に到達することを夢見ているだけでは、梯子は登れない。ここでなされるべきアドバイスは「頂上にたどり着くことは頭から消し、目の前の梯子で次の一歩を進むことだけに集中せよ」である。
だからといって目の前のことだけに集中すればいいというわけではない。大切なのは「正しい一歩」を見つけることだ。夢と目標を抱きながらも、目の前の小さなステップを乗り越えるために全力を尽くす。そして今までの歩みを振り返り、また次の小さなステップを見つけて実行する。一つひとつのステップをクリアするごとに自信がつき、一番上まで登り続けられる可能性が高まっていく。これが「目標を小さく刻む力」である。
「目標を小さく刻むこと」の大切さを頭では理解していても、実際にはステップが大きすぎるケースがほとんどだ。なぜなら、小さなステップを計画するのは楽しくないからだ。誰だって、「今日ジムに行く」よりも「来月に参列する結婚式までに5キロ痩せる」と考えたほうがワクワクするだろう。
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