子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す!

「自己肯定感」育成入門

未読
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「自己肯定感」育成入門
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「自己肯定感」育成入門
出版社
出版日
2019年03月20日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は次の問いから始まる。親は子どもに対し、どんな道を進んだとしても、幸せに暮らしていてほしいと願わずにはいられない。だが、そのために親がすべきこととは何なのか。学歴、プログラミング、それともコミュニケーションスキルだろうか。たしかに、これらは子どもの可能性を広げてくれる。しかし、子どもの幸せを保証してくれるものではない。

現代は、「やりたいことがない」という子どもが増加している。放課後NPOアフタースクールの代表理事として5万人の子どもを見守ってきた著者によると、失敗を恐れる子どもたちは、「自己肯定感」が不足しているという。本書では、この自己肯定感をキーワードに、親がどのように子どもに関わっていくとよいかをわかりやすく解説している。

子どもはいつか親元を離れ、自分で道を切り開かなければならない。来るべき日に向けて、親が今すべきことは何か。それは、子どもの失敗につながるような、あらゆる障害を取り除くことではない。子育ての目的は自立であり、自己肯定感を育むことは、子どもの自立を促す。それは、親御さんの子育てへのイライラを軽減することにもつながる。それが著者の一貫した主張だ。

子どもの自立を願う親御さんはもちろん、子どもをすぐ叱ってしまう、子どもにイライラしてしまうなど、接し方に悩んでいる方にも本書をおすすめしたい。読みやすい語り口調と、かわいいイラストが相まって、子育ての合間の読書にもぴったりな一冊である。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

平岩 国泰(ひらいわ くにやす)
1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。30歳のとき、長女の誕生をきっかけに“放課後NPOアフタースクール”の活動を開始。2011年会社を退職し、日本の子どもたちの「社会を巻き込んだ教育改革」に挑む。“アフタースクール”は活動開始以降、5万人以上の子どもが参加。グッドデザイン賞を過去に4度受賞、他各賞を受賞。2013年より文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年より渋谷区教育委員、学校法人新渡戸文化学園理事を務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    子育ての究極目標は、子どもの自立である。親は子どもの自立を促す「コーチ」としての役割に徹するとよい。
  • 要点
    2
    子どもが自己肯定感を育むためには、子どもがありのままでいられる「安全基地」の存在が重要となる。他人との比較はせず、その子自身の成長をほめるのが望ましい。
  • 要点
    3
    大人が子どもの人生の責任を負いすぎる必要はない。「自分は自分、子どもは子ども」という姿勢を貫くことが、子どもの自立を促すことになる。

要約

【必読ポイント!】 なぜ「自己肯定感」なのか

チャレンジしない子どもたち

子どもは好奇心旺盛なもの。そんな著者の思い込みに反して、「子どもがチャレンジをしない」という悩みを持つ親は少なくないという。親は子どもに新しいことにチャレンジしてほしいと願っている。その一方で、当の子どもはチャレンジせず、そもそも自分のやりたいことがわからない、どうでもいいという状態にある。こうした状況の根源には、子どもたちの自己肯定感の低さがあると著者はいう。

自己肯定感とは、「自分はここにいていい」という感覚のことである。自己肯定感を充分に持てない子どもは、失敗を恐れ、新しいことに取り組もうとしない。

子育てや教育の目標は、子どもの「自立」である。子どもが自立し、成長し続けるには、大人たちが子どもの自己肯定感を支えることが重要なのである。

成果ではなくプロセスに着目する
ulkas/gettyimages

子どもの自己肯定感を育むうえで留意したいのが、「ほめる」という行為だ。子どもがテストでいい点を取ったり、サッカーの試合で勝ったりしたとする。そのとき多くの親は、子どもの能力や成果に注目しがちだ。

しかし、親が成果や結果だけを評価してしまうと、子どものなかにこうした感情が芽生えていく。「価値があるのは自分ではなく、あくまで〇〇ができる自分であり、ただの自分には価値がない」。こうした価値観は無意識に刷り込まれ、漠然とした不安や焦りとなって、子どもの心に棲みついてしまう。

子どもの自己肯定感を支えるのは、無条件に自分の存在を受け入れてくれる「安全基地」の存在である。親には、成果に関してはどんな結果であっても受け入れる一方で、挑戦したプロセスを認めることが求められる。たとえば、子どものテストの結果が良かったとしよう。その際は、点数だけに着目するのはNGだ。「週末によく勉強していたからだね、頑張ったね」などと、プロセスに着目した声かけが望ましい。

子どもを「ちょっと前の子ども」と比べよう

子どもとの関わりで避けたほうがいいのは、我が子を他の子どもと比べることだ。子どもは周囲と比べられると、自分の努力よりも、周囲の客観的な評価ばかり気にするようになる。何かを達成したときには、自分が成長している実感を得られる。にもかかわらず、比較によって委縮してしまうのは、もったいない。

子どもを評価するときには、「以前のその子と比べる」のがよい。誕生日、年末などの節目で、子どもを一年前と比べてみると、その子のさまざまな成長に気づける。「だいぶ〇〇ができるようになったね!」という伝え方なら、うまく子どもをほめられるため、子どもを叱りがちな親御さんにおすすめである。

「大人も失敗する」ことを教える

そもそも子どもがチャレンジしなくなった背景には、大人の失敗経験が減り、寛容さが減ったことがあるのではないか。そう著者は推察している。いまや、何をするにしても、その場で効率のいい方法や他者の評価を調べられる。そのため、失敗して恥をかいたり、周囲に迷惑をかけたりする機会が少なくなっている。親も子どもに失敗をさせて恥をかきたくないため、先回りして手を打つことが増えた。その結果、子どもが挑戦を恐れるようになったと考えられる。

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要約公開日 2019.06.23
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