老化には2種類ある。1年ごとに積み重ねられていく「正常な老化」と「病的な要因が加わった老化」だ。病的な要因とは、食べ過ぎ、飲み過ぎ、タバコ、運動不足などによって起こるメタボや高血圧などのこと。これらは一種の病気である。つまり治療や予防によって「病気」を治し、「若さ」を取り戻すことができるのだ。
まずは自分の体のどこが老化しているのか、そしてその老化がどのような原因で起きているのかを知ろう。どこから老化していくのかは、人によって異なる。筋年齢、血管年齢、神経年齢、ホルモン年齢、骨年齢の5つの機能年齢(老化度)を算出すれば、自分のどこが最も老化しているのかが明らかになる。加えて、免疫ストレス、酸化ストレス、心身ストレス、生活習慣、糖化ストレスの5つの危険因子の中で、最も進んでいるものを見極める。
老化の原因は人それぞれだ。アンチエイジングにおいて重要なのは、自分の老化の原因を探り当て、エビデンスにもとづいて自分の弱点を治すことである。
アンチエイジングの目的は、健康長寿である。健康寿命とは、コグニ(認知症)でもなく、がんや体の麻痺、大きな病気もなく、自立した状態でいることだ。
国内外で百長寿者の研究が行われているが、そのデータから読み取れることは、「百長寿者は老化のバランスがいい」ということだ。極端に衰えている部分がなく、大きな危険因子もない、「いい老化」をしている。
老化のバランスが悪いとどうなるか。たとえば、動脈硬化があったとする。動脈は、酸素や栄養分を体のいろいろな組織、臓器に供給している。そのため、動脈が硬化すると、脳への酸素や栄養の供給が滞り、脳神経細胞が減る率が早くなる。その結果、コグニが早く進んでしまうことになる。
また、頭がしっかりしていても、足腰や骨が弱っていると、ちょっとしたきっかけで転び、骨折してしまうことがある。いったん寝たきりになるとコグニになりやすくなる。そうなると、骨折が治っても、今までどおりの生活はできなくなってしまう。
このように、たった1つの危険因子が老化を促進させたり、寿命を縮めたりするわけだ。
糖化はアンチエイジングの敵だ。糖化とは、過剰に摂取した糖分が体内にあるタンパク質と結びつき、糖化したタンパク質が体内に蓄積することを指す。これを著者は「体内がコゲる」と表現している。小麦粉の中のデンプン(炭水化物)とタンパク質に熱を加えて糖化させることで、こんがりきつね色のホットケーキが出来上がるように。糖化反応は、食品を香ばしくおいしくするが、人間の体の中で起こると、糖尿病、高脂血症、肥満、メタボといったさまざまな疾患を招く。
糖化ストレスのしくみは、まだ十分にはわかっていない。対処方法も確立しておらず、私たちのアンチエイジングにとって最大の敵でありつづけている。
糖化したタンパク質はAGEsという最終生成物を生み出し、これが老化を早めることになる。
AGEsができる原因はさまざまだ。当初は、糖尿病の合併症などが糖化によって起こるため、血糖だけの問題かと思われていた。しかし今、血糖値が高い人や食後高血糖(血糖スパイク)になる人だけでなく、中性脂肪が多い人にもAGEsが多いことがわかってきている。
とくにお酒を飲むと顔が赤くなる人の場合、アルコールからできるアルデヒドを分解する酵素をあまり持っていないことが原因だ。そのため、アルデヒドとタンパク質が反応し、AGEsがどんどん作られてしまう。顔が赤くなる人は、お酒に人一倍注意しなければならない。
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