KGBスパイ式記憶術

未読
KGBスパイ式記憶術
出版社
出版日
2019年02月15日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
5.0
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おすすめポイント

「スパイ」と「記憶術」がどのように結びつくのか、訝しがる人もいるかもしれない。しかしスパイ活動において、記憶はその根幹を成すものである。

本書は実話にもとづいたフィクション作品であり、同時に「記憶力を強化する」という実用書としての側面を持つ。主人公はKGB(旧ソビエト連邦国家保安委員会)に所属する、とあるスパイだ。その任務を遂行する上で求められる「記憶」に焦点をあてながら、記憶力を高めるトレーニング方法が多数紹介される。スパイの任務で重要なのは、膨大な情報を残さず記憶して完全に再現すること。スパイは記録を残せず、メモもできない。また他人になりすますために、偽りの人生を正確に矛盾なく話せる能力や、複数の立場を使い分けることも求められる。記憶力に長けていないスパイは、命を失いかねない。

本書で書かれている記憶術はどれも、ロシアの一流の諜報部員の養成に使われているものだという。正しい段階を踏みながらレベルを上げていけば、あなたの記憶力は着実に強化されるだろう。読んでいて実感したのは、イメージする能力と、既存の知識と新しい知識を繋げる手法の大切さである。とりわけ数字のイメージ化とストーリー化の具体例は参考になった。

主人公がスパイとして成長するストーリーを楽しみつつ、本書に書かれている記憶術の訓練にもぜひチャレンジいただきたい。脳のリミッターを解除し、最大限に記憶力を高めるための一冊だ。

ライター画像
加藤智康

著者

デニス・ブーキン
経済学者、経営者、心理学者。サンクトペテルブルク工科大学経済学部卒。ロシアのコンサルティング会社・Empatika社の共同経営者でありコンサルタント。

カミール・グーリーイェヴ
写真家。現代美術学校「インディペンデント・ワークショップ」(モスクワ市近代美術館主催)を修了。

本書の要点

  • 要点
    1
    記憶力を鍛えるにあたって必要なのは、物事に気づく注意力と、その情報をすでに知っている物事に関連付ける想像力である。
  • 要点
    2
    忘れることは重要である。忘れないと脳が情報であふれかえってしまうからだ。いったん忘れることで、新鮮な目で問題を捉えられるようになる。記憶はその後によみがえらせればよい。
  • 要点
    3
    未来記憶とは、何かをしようという意図や予定を覚えることである。過去の記憶とは違い、本人が主体的に思い出す必要があるため難易度が高い。単に意図しただけで、実際にはまだ起きていないことだからだ。

要約

短期記憶から長期記憶へ移行させる

スパイの第一段階は注意力から
Artem Peretiatko/gettyimages

本書の目的は、ロシアで一流の諜報部員の養成に使用された訓練を使い、記憶力を高めることにある。特に短期記憶と長期記憶の両方を鍛え、意識的に情報を短期記憶から長期記憶へ移行する方法を学ぶ。

本書には2つのタイプの課題がある。1つは本書を読みながら実践する課題、もう1つはいつでも取り組める課題だ。最初から課題を完璧にこなそうとしてはいけない。人は限界に挑戦するときにこそ、もっとも多くを学べる。脳は筋肉のようなもので、鍛えることでどんどん使えるようになる。

最初のトレーニングは、注意力を鍛えることだ。注意力を鍛えると、それを思ったようにコントロールできるようになるし、より細かく物事に気付けるようになる。すると情報を選択的に認知し、記憶することに集中できる。

一流のスパイに必要なのは、見聞きしたことのなかに重要な情報があれば、どんなに小さなことにでも気付き、すでに知っていることとリンクさせて解釈する能力なのだ。

3つの原則

想像力が豊かだと、目にした物を描写するだけでなく、新しいイメージをつくり出せるようになる。そのイメージを動かしたり回転させたり、新しい要素を付け加えたりといったことも可能だ。

記憶術には共通する3つの原則がある。

1つ目は関連付けることである。記憶力の良さというのは、いかに情報を呼び出せるかにかかっている。何かを覚える際は、すでに知っていることに関連付けると簡単になる。脳はさまざまなイメージや概念を互いに結びつけることが得意だからだ。クリスマスと聞くと、すぐにクリスマスツリーやプレゼントが思い浮かぶだろう。それは記憶の中に、長く複雑な記憶の連鎖があるためである。

2つ目の原則は、情報を視覚的にイメージすることである。記憶力を良くするには、想像力を使って視覚的にイメージすることがきわめて重要だ。というのも視覚的イメージは、文字よりも記憶しやすいためである。見たものを覚えたければ、想像の中で絵に変換するといい。奇抜なイメージだと特に覚えやすいはずだ。より鮮明に記憶するには視覚だけではなく、聴覚、触覚、嗅覚、味覚も使うといいだろう。細かいところまでイメージすればするほど、記憶力は上がる。

3つ目の原則は、感情を伴わせることだ。脳はもっとも強烈な感情が伴うものを優先して覚える。関心を持てば持つほど、感情が活性化されるので、記憶しやすくなる。

【必読ポイント!】 記憶を再生する

忘れることは有益である
nicoletaionescu/gettyimages

忘れることは、記憶にとってきわめて重要な機能である。

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要約公開日 2019.05.26
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