本書の目的は、ロシアで一流の諜報部員の養成に使用された訓練を使い、記憶力を高めることにある。特に短期記憶と長期記憶の両方を鍛え、意識的に情報を短期記憶から長期記憶へ移行する方法を学ぶ。
本書には2つのタイプの課題がある。1つは本書を読みながら実践する課題、もう1つはいつでも取り組める課題だ。最初から課題を完璧にこなそうとしてはいけない。人は限界に挑戦するときにこそ、もっとも多くを学べる。脳は筋肉のようなもので、鍛えることでどんどん使えるようになる。
最初のトレーニングは、注意力を鍛えることだ。注意力を鍛えると、それを思ったようにコントロールできるようになるし、より細かく物事に気付けるようになる。すると情報を選択的に認知し、記憶することに集中できる。
一流のスパイに必要なのは、見聞きしたことのなかに重要な情報があれば、どんなに小さなことにでも気付き、すでに知っていることとリンクさせて解釈する能力なのだ。
想像力が豊かだと、目にした物を描写するだけでなく、新しいイメージをつくり出せるようになる。そのイメージを動かしたり回転させたり、新しい要素を付け加えたりといったことも可能だ。
記憶術には共通する3つの原則がある。
1つ目は関連付けることである。記憶力の良さというのは、いかに情報を呼び出せるかにかかっている。何かを覚える際は、すでに知っていることに関連付けると簡単になる。脳はさまざまなイメージや概念を互いに結びつけることが得意だからだ。クリスマスと聞くと、すぐにクリスマスツリーやプレゼントが思い浮かぶだろう。それは記憶の中に、長く複雑な記憶の連鎖があるためである。
2つ目の原則は、情報を視覚的にイメージすることである。記憶力を良くするには、想像力を使って視覚的にイメージすることがきわめて重要だ。というのも視覚的イメージは、文字よりも記憶しやすいためである。見たものを覚えたければ、想像の中で絵に変換するといい。奇抜なイメージだと特に覚えやすいはずだ。より鮮明に記憶するには視覚だけではなく、聴覚、触覚、嗅覚、味覚も使うといいだろう。細かいところまでイメージすればするほど、記憶力は上がる。
3つ目の原則は、感情を伴わせることだ。脳はもっとも強烈な感情が伴うものを優先して覚える。関心を持てば持つほど、感情が活性化されるので、記憶しやすくなる。
忘れることは、記憶にとってきわめて重要な機能である。
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