文章を書く際、何から取りかかるだろうか。「とりあえず書き出してみる」「文章構成を考えてみる」など、人によって答えはさまざまだろう。東大作文のポイントは、「あとがき作り」から始めることである。文章の最後を決めておかないと、伝わる文章を書けないからだ。
例えば、評論なら「結論」を書き、レポートなら「まとめ」を書く。スピーチやプレゼンなら説明した後に、「要するに~」と自分の主張で締めくくることが多いだろう。共通する大原則は、「最後に自分の言いたいことをもってくる」ということである。
読者にとって、最後に言われたことは印象に残りやすい。さらには書き手にとっても、文章の目的地を明確にしておいたほうが、圧倒的に文章を書きやすくなる。だからこそ、書き始める前に「最後に何を書くか」を決めておきたい。
言いたいことが決まったら、次は「主張作り」を行う。「主張作り」とは、「主張の型」を意識することで、「最後の結論」「自分が言いたいこと」を明確化することである。具体的な手順はこうだ。
(1)4つの「主張の型」から自分の主張の性質を選び、付箋に書く
(2)その型に沿って、付箋に「自分が書きたいこと」を3つ以上書く
(3)その付箋の中から「これを伝えたい!」という1つを選ぶ。残った付箋も作文するときの材料として利用する
では、その「主張の型」とは何だろうか。主張は「相手に何が言いたいか」によって、次の4通りの型のいずれかに当てはめられる。
1つ目は、自分が感じたことを伝えたいときに書く「感情型」である。例えば、感謝状、チャットなどで使われることが多い。自分の思い・感情を相手に伝えることで、相手とより親密になりたいときに用いるのが、「感情型」である。
2つ目は、相手に何かを知ってほしい、または理解してほしいときに書く「共有型」だ。議事録など、客観的に相手に情報を届けたい場合に、この「共有型」が役立つ。
3つ目は、相手に対してお願いしたいときに書く「要望型」である。要望書のように、相手に自分の主張を理解してもらい、そのうえでなんらかの行動をお願いしたい場合には、この「要望型」を使うとよい。
4つ目は、当たり前とされていることに一石を投じたいときに書く「警鐘型」である。論文やブログなどでこの型を用いることが多い。「要望型」との違いは、主観的か客観的かどうかである。主観的にお願いするのが「要望型」で、客観的に「こうしたほうがいいと思うよ!」と伝えるのが「警鐘型」である。
「主張作り」で自分の言いたいことを明らかにしたら、次は「目的作り」を行う。「目的作り」とは、言いたいことを伝えた相手にどうなってほしいかを明確化することである。例えば、「文章を読んだ相手がどうなることが理想的なのか」「相手がどういう行為をすれば意味があったことになるのか」といったことだ。こうした「相手がどうすれば成功なのか」という意図を考えるのが、「目的作り」である。
「主張作り」は「自分→相手」であるのに対し、「目的作り」は「相手→自分」だ。これにより、東大作文の真髄である「双方向的な作文」が可能となる。
具体的には、「主張作り」で選んだ型に合わせて、「目的」と「手段」を次のように決めていくとよい。
・感情型 → 手段=「共感」、目的=「理解」
・共有型 → 手段=「納得」、目的=「理解」
・要望型 → 手段=「共感」、目的=「変化」
・警鐘型 → 手段=「納得」、目的=「変化」
ここでの「手段」は、相手に理論的に訴える「納得」、相手の感情に訴える「共感」の2種類に分けられる。一方、「目的」は、相手に変化を求める「変化(アウトプット)」、「相手に知ってほしいという「理解(インプット)」の2種類に分類できる。
例えば、「若者がもっと勉強しないと、日本は将来脆弱な国になる」という主張ならば、主張の型は「警鐘型」を使うとよい。相手に論理的に訴えかけ、具体的な変化を与える。つまり、「納得」が手段で「変化」が目的となるからだ。
売れている本や、読まれている記事の多くは、読んだ相手が具体的に変化してアウトプットすることまでを、はじめから目的にしているケースが多い。めざすのは相手を「変化」させる文章である。
主張が決まったら、いよいよステップ2の「目次作り」を行う。このステップでは、読者をきちんと理解して、目的に応じた正しい「文章の型」に文章を当てはめる。そして、その後はその型に合わせて書いていく。そうすれば、誰でも簡単に、伝わる文章の骨子を作成できる。具体的な「文章の型」を紹介しよう。
3,400冊以上の要約が楽しめる