1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法

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出版社
プレジデント社

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出版日
2019年03月01日
評点
総合
4.2
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
5.0
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おすすめポイント

とにかく本質を考えろ。自分の頭で、本質を見抜いて、メスを入れる方法を考え出せ。それができれば、計算するだけのAIなんて怖くないし、1日3時間だけ働いておだやかに暮らすことだってできるようになる。これが本書のメッセージである。

本書は前半で、「考えるとはどういうことか」「どうやって考えたらいいのか」をおさえる。続く後半では、実際に著者が、2020年以降の世界について思考してみせる。そして、来るべき信用主義経済、マルチコミュニティという状況の中で生き抜く術を提示するという構成だ。

著者は「本書の役割は、読むプロセスを通して読者の意識を様々な方向へ誘うことだ」と述べている。確かにそのとおり、本書は一本道に読者を導くものではない。読者が自分なりの問題意識に必要ななにかを拾い集められるよう、豊かな森を現出させているような一冊だ。

本質をつかむために思考することは、なかなか骨が折れる作業だ。「1日3時間だけ働いて……」のフレーズに大いに魅力を感じてしまう要約者のような読者は、「お、けっこうたいへんだな」と思わざるをえない。しかし、急がば回れのことわざどおり、地道に「考える」ことこそ、自分らしい幸せな生き方を手に入れるための着実な道なのだ。そして「考える」ことは、素晴らしいことに、人間なら誰でもできる。本書を片手に、いっちょがんばって「考えて」みようではないか。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

山口 揚平(やまぐち ようへい)
事業家・思想家。早稲田大学政治経済学部卒・東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は貨幣論、情報化社会論。
1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと、30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラム事業をはじめとする複数の事業、会社を運営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。NHK「ニッポンのジレンマ」をはじめ、メディア出演多数。
著書に、『知ってそうで知らなかったほんとうの株のしくみ』(PHP文庫)、『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座』(日本実業出版社)、『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』(KADOKAWA)、『なぜ ゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』(ダイヤモンド社)、『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今身につけるべきこと』(SBクリエイティブ)、『新しい時代のお金の教科書』(ちくまプリマー新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    物事の上位概念(メタ)を考えて本質に迫り、再度具体的な問題に立ち返って案を出すことが「考える」ことといえる。「考える」ことは最強のスキルだ。
  • 要点
    2
    「考える」力を確立するには、「考える」「話す」「書く」の3つをサイクルとして確立することが重要だ。意識と知識が思考の両輪だが、あくまで主体は意識であるべきだ。
  • 要点
    3
    アフターオリンピックの日本では、信用が新たな取引のツールとなる。小さなコミュニティが乱立するフラットなヨコ社会が現れ、仕事は労働ではなく、コミュニティへの貢献へと性質を変える。

要約

考えることの再定義

考えることこそ最強のスキルである
metamorworks/gettyimages

20世紀は、知識が豊富であることが頭の良い人の定義だったが、21世紀は違う。思考力、想像力こそが求められているのだ。

「考える」こととは、「概念の海に意識を漂わせ、情報と知識を分離・結合させ、整理する行為」と著者は定義する。この行為においては、メタ思考が大切になる。メタ思考とは、物事の上位概念(メタ)を考えて本質に迫り、再度具体的な各論に落とす思考のことである。そのようにして「考える」ことが可能ならば、問題に潜む最も重要な因子に注力して圧倒的に稼ぐことも、著者のように1日あたり3時間だけ働いて不自由なく暮らすこともできるようになる。「考える」ことは、最強のスキルなのだ。

「本当に考えた」といえるのは、「代替案を出すこと」「具体案を出すこと」「全体像を明らかにすること」「本質を見抜くこと」の4つができたときだ。順に説明していこう。

1つの案にこだわらずB案、C案を出せることが「代替案を出すこと」だ。また、案は行動可能なレベルまで具体化せねば意味がない。それが「具体案を出すこと」だ。「全体像を明らかにすること」では、「時間軸」と「空間軸」を意識して物事を俯瞰する。「本質を見抜くこと」は、応用がきき、時が経ってもかわらない、シンプルな核心を見出すことである。先述のメタ思考の最終的な目的は、この核心を見抜き、ここにメスを入れる案を見つけることである。

考える技法

思考力を鍛えるサイクル

では、日々どのようにすれば、考える力を鍛えることができるのか。

そのためには、つねに本質を追求すべく、「考える」「話す」「書く」の3つをサイクルとして確立することだ。まずは、自分の分析について、何か気持ち悪いという感覚を大切に、その気持ち悪さがなくなるまで「考える」。「本質的には~」を口グセにして、プレゼンなど積極的に話す機会を作る。そして、思考を形にすべく、図なども取り入れながら紙に「書く」。書いてはじめて思考が固定される。

思考力を鍛えるサイクルをまわし、先へ進むには、知識が不可欠である。しかしあくまで、自分の意識を思考の主体として自由に動かせるという前提で、知識を得ていくべきだ。意識と知識が思考の両輪となる。

効率よく知識を取り入れる最強の方法は読書である。とくに古典もしくは教科書を読むとよい。現代まで読み継がれている古典は、本質を突いていると考えられるからだ。教科書を読めば、体系化された知識が得られる。自分が問題意識を持ったテーマについて学びたいときは、入門書で全体像をつかみ、次に専門書で問題意識を掘り下げるとよい。

思考の補助線となるツール
Chillim/gettyimages

メタ視点を持って物事を考えるための助けになるものとして、著者は4つのツールを挙げている。「MECE(ミーシー)」「二項対立」「ロジックツリー」「コーザリティマップ」である。これらのツールは、物事を分解したり、関係を考えたりするために使う。

ここでは、著者の「二項対立」の使い方にふれてみよう。物事の全体を正しく分けるために、「ペア」を想起し、相手方を考えるのが「二項対立」である。著者がいつも使う二項対立の1つは、「目的と手段」である。目的は、さらに上にある目的の手段と考えられるため、「これが手段だとしたら目的は何か」という思考ができる。また、手段は常に代替可能と考えられる。そのため、ある手段がうまくいかなくても、二項対立の考え方を通じて別の手段を想定しておけば、そちらがうまくいくことが多い。

このように物事を分解した上で大切なのは、あらゆる問題は有機的につながっていて、問題の本質は根本的なところにある、と考えることだ。ひたすら考え続けても本質解にたどりつけないときは、一度考えるのをやめてみると、解が自然と浮かび上がってくることもある。こうしたことは辛い作業でもあるが、意思と努力をもって考えることこそ、日々凝り固まる固定観念に抵抗し、自分の世界を自由にする力となるのだ。

【必読ポイント!】 2020年以降の世界を考える

目の前に迫るパラダイムシフト

本書では、著者が具体的なテーマに焦点を当てて「考える」ことを実践してみせている。テーマは、2020年以降の社会・お金・仕事・個人の、意識の変化の本質である。2020年の東京オリンピックを境として、日本の社会システムや産業に大きな変化が訪れるという。

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要約公開日 2019.05.18
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