人生は攻略できる

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著者
出版社
出版日
2019年03月06日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

日本では、安定した企業で長く働きたいというニーズはまだまだ根強い。ところが、かつて就職人気ランキングの常連だった大手銀行が、軒並み順位を落としている。銀行の仕事がこの先、高い給与のまま残る見込みが薄いと考える人が増えてきたからだという。これまで安泰とされた成功のための「レール」は、確実になくなりつつある。

そもそも考えるべきなのは、同じ会社で働き続けることが、これからの時代を生きるうえで自分にとって正しい選択なのかどうかという点だ。

『言ってはいけない』などのベストセラーを世に送り出してきた著者、橘玲氏は、人生を「ロールプレイングゲーム」ととらえて若いうちにさまざまな可能性を探ろうと呼びかける。大事なのは、若いうちに自分が好きで得意な「スペシャル(専門)」を身につけ、自分なりの魅力的な物語を築いていくことだ。こうした人生の「攻略法」を、「お金(金融資本)」「仕事(人的資本)」「愛情・友情(社会資本)」の3つの観点から解き明かしていくのが本書である。

新しい時代のルールを理解したうえで、「スペシャル」を基盤とし、ここぞというときに正しい選択をする。その積み重ねで、これからの時代だからこそ可能な「自由な生き方」への道が開けていく。若手社会人はもちろん、これから就職活動をしようとする学生にもぜひすすめたい、これからの時代の「キャリアデザインの教科書」だ。

ライター画像
三浦健一郎

著者

橘 玲(たちばな あきら)
作家。
2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。2006年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補となる。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラー、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)が50万部を超えるベストセラーとなり、2017新書大賞を受賞。近著に『朝日ぎらい』(朝日新書)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書には「幸福のための土台のつくり方」が書かれている。その土台は「お金(金融資本)」「仕事(人的資本)」「愛情・友情(社会資本)」の3つである。
  • 要点
    2
    新しい時代のルールを理解し、大事なところで正しい選択をすることで人生は攻略できる。
  • 要点
    3
    「人的資本」を大きくするには、できるだけ長く働くことと、会社に依存せず、自分が好きで得意な「スペシャル」なものを見つけて、それを極めることが重要となる。

要約

これからの時代の前提

お金があれば「自由」になれる
AntonioGuillem/gettyimages

これまでの日本人の生涯は、終身雇用制のもと、会社に依存したサラリーマン生活を送り、定年後は年金で余生を送るというモデルで表すことができた。このモデルは、少子高齢化や年金支給開始年齢の引き上げなどで崩壊したといわれている。しかし、今でも日本人の意識に根強く残っている。

本書が提示するのは、そうしたモデルから離れて、これからの時代を幸せに生きるための指針である。

近年、パワハラやドメスティックバイオレンス、年金支給額の減額といった話を聞くことは珍しくないだろう。しかしパワハラをされても会社を辞められないのは、お金(収入)を会社に依存しているからである。ドメスティックバイオレンスにあっても離婚できないのは、家計の収入を夫に依存しているからだろう。また、退職した高齢者は、年金を支給する国家に依存しているといえる。

大事なのは、理不尽なことが起こっても、自由に別の場所に移れるようになることだ。そのためには、国家にも、会社にも、家族にも依存せずに生きていくための十分な資産をもち、経済的自立を果たす必要がある。つまり、お金を得ることが、真の「自由」を獲得することにつながるのだ。

これからの時代は、「人的資本」「金融資本」「社会資本」という「幸福のための土台」を築くことが求められる。

【必読ポイント!】 人的資本

人的資本を運用する

「人的資本」とは「働いてお金を稼ぐ力」のことだ。「これからずっと働くことで、将来得られる収入の総額」でもある。「将来得られる」ということは、人的資本は若いときほど大きくて、年をとるにつれて減っていくことを意味する。

大卒サラリーマンの場合、生涯収入はおよそ3億円から4億円といわれている。どれだけリスクを差し引いても、20代なら1億円を超える人的資本をもっていることになる。

若いときほど、人的資本は大きい。また、人的資本の活用は、株式などの金融資産の運用とは異なって、「損をしない投資」のようなものだ。働けば必ず収入を得られるのだから、いくら活用しても損をすることはない。若いときこそ大きな人的資本を運用する、すなわち働くことは、元本を最大限、全くリスクのない資産に投資するようなものなのだ。お金持ちをめざすなら、若者はまず働くのが一番だといえる。

サラリーマンとスペシャリスト
nortonrsx/gettyimages

「働く」ということは、日本ではまだ終身雇用制のサラリーマンになることと結び付けられる。しかしサラリーマンは、人的資本の活用において弊害を生む。

サラリーマンの生き方は次のようなものだった。新卒でたまたま入った会社に滅私奉公し、定年後は退職金と年金で悠々自適の生活を送る――。こうした生き方なら、定年とともに人的資本がゼロになっても問題はなかった。

ところが現在、平均寿命は90歳に近づき、年金支給年齢を70歳に上げなければ年金制度がもたないといわれている。今後は長く働くことが求められるのに、定年で人的資本がゼロになっては困るわけだ。

働き方には、「クリエイター」「スペシャリスト」「バックオフィス」の3種類がある。クリエイターはクリエイティブ(創造的)な仕事をする人で、スペシャリストはスペシャル(専門)をもっている人だ。一方、バックオフィスはマニュアル化された、責任の少ない仕事をする人たちである。バックオフィスは仕事と会社が一体化しており、その多くは、今後AIやロボットに代替されていく。

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要約公開日 2019.04.22
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