家族思いだが金遣いが荒く、悪友に影響されやすい――それがこの物語の主人公、アレックスだ。多額の借金があるうえ、子どもの学費を工面しなければならないにもかかわらず、悪友から「最高の掘り出し物」とけしかけられ、オープンカーを購入する。そんな彼にとうとう愛想をつかし、妻のキムは家を出ていってしまった――。こうして物語は動き出す。
キムが家出して1週間。アレックスと2人の子どもたちは、すでに予約していたハワイ旅行へと旅立った。もちろんキムは同行していないが、今さらキャンセルできなかったのだ。彼は途方に暮れていた。これから先、どうすればいいのだろう?
そんなとき、アレックスに救いの手が差し伸べられる。子ども時代の親友であるボブの母親、ヴィクトリアだ。彼女には、まだ17歳だったボブを末期がんで亡くすというつらい過去がある。
ヴィクトリアは自らを「トラポロジスト」と自称する。「トラップ(罠)」と「オロジー(学問)」をかけ合わせた造語である「トラポロジー」を研究しているそうだ。そんなヴィクトリアに対し、アレックスは、堰を切ったように自分の置かれた状況を話した。
ヴィクトリアはマイケルの話を聞き終えると、次のように語りだした。「人生の落とし穴というのは、落ちるのはあっという間なのに、抜け出すのは至難の業なの」。「私たちが陥る罠は大昔から存在するけど、昔と今で違うのは、罠がより魅力的で厄介なものになっていることよ」。
そしてこう続けた。「忍び寄る罠から永遠に自由になるためには、これまでにないアプローチが必要になるわ。私はそれを『啓示的(エピファニー)ブレイクスルー』と呼ぶことにしている」。
ヴィクトリアはまず、アレックスとキムが「夫婦・恋人関係の罠」に陥っていることを指摘した。それは、夫婦が2人とも「既婚独身者」になっているということらしい。結婚して2人で暮らしているのに、お互いの価値観をすり合わせることなく、ひとり暮らしのように暮らしてしまっているというのだ。結婚生活の進め方を話し合っていないばかりに、意見が合わずに口論を繰り返している。
既婚独身者を生み出す理由は、3つある。自分が育った環境のほうが正しいと思い込むこと、考え方の軸を「私」から「私たち」にシフトできていないこと、相手が先に変わるのを待っていることだ。
この状況を改善するためにはどうすればいいのか。ありがちなアプローチは、意見の相違を認め、夫婦の意見が一致する部分にのみフォーカスするというものだ。しかしそれでは、いずれ困難や試練にぶつかることになる。
「夫婦・恋人関係の罠」から抜け出す啓示的ブレイクスルーは、「お金の使い方」「子どもの育て方」「家事の分担」の3つについて意見を一致させることだ。夫婦のあり方や展望についてお互いの考えを共有し、それを実現する方法を話し合わなければならない。
借金も致命的な害をもたらす罠だとヴィクトリアはいう。借金の罠に落ちてしまう理由は3つだ。すなわち、今を楽しむために将来に備えることを忘れてしまう「金銭的近視眼(マネー・マイオピア)」、見栄のための消費、そして、現実から目をそらし、自分は大丈夫と根拠もなく思いこんでしまうことである。
多くの本には、予算を立てて計画的にお金を使おうと書かれている。だが、それは長続きしない。短期間であれば自制できても、長期間となるとそうはいかないものだ。
「金・借金の罠」から抜け出す啓示的ブレイクスルーは、ゲーム感覚で借金返済や貯蓄に取り組めるプランを考えることだ。ヴィクトリアも以前、借金に苦しめられていた。そこで彼女は、借金の残額を示すスコアボードを作り、家に掲示した。これによってやる気がかきたてられ、あっという間に借金を完済できたという。
3,400冊以上の要約が楽しめる