1950年代頃、アメリカでは、心臓病が大幅に増加した。そこで確かな証拠がなかったにもかかわらず、食品に含まれる脂質が原因だと結論づけられ、低脂質の食事が推奨された。
低脂質の食事には、問題があった。3大栄養素のひとつである脂質を減らすなら、その分、たんぱく質か炭水化物を摂らなければならない。だがたんぱく質を多く含む食品には脂質も多く含まれているため、脂質を減らすにはたんぱく質も減らす必要がある。つまり、脂質を制限するなら、必然的に炭水化物を多く摂らなければならないということだ。ここから「低脂質=高炭水化物」という式が成り立つ。
このようなジレンマのなかで、エビデンスも歴史上の前提もないままに「炭水化物は食べても太らない」と提唱されることになった。こうして炭水化物摂取を推奨し、脂質とカロリーを避ける食事が一般化していった。
「低脂質・高炭水化物の食事の推奨」という指針が発表された年、アメリカ人にどんな変化が起こったか。心臓病の発症率はさほど減少しなかった一方で、BMIが30以上という定義に基づいた肥満の人の割合は劇的に増えたのだ。
肥満は「環境的な要因と個人の行動が招くもの」として、その人の自己責任であると思われがちである。
しかしデンマークで養子になった子供と生みの親・育ての親の比較を行った調査では、養父母と養子の体重にはまったく相関がなかった。その一方で、養子と生みの親の体重には一貫した相関関係が見られるという結果が出た。生みの親は、子の育児にほとんど、あるいはまったく関与していないにもかかわらずだ。
別々の環境で育てられた一卵性の双子を調査した別の研究では、肥満を決定づける要素のおよそ70%が遺伝によるものだという結果が出た。つまり、肥満は環境ではなく、遺伝で決まっている側面が大きいのだ。
逆に言えば、残りの30%は自らコントロールできる。私たちは、その30%をいかに活用するかを考えなければならない。
著者は、肥満と摂取カロリーは関係ないと断言する。複数の調査において、摂取カロリー量と肥満には相関関係がないことが繰り返し示されている。
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