著者のいう「自炊力」とは、買い物する能力、献立や栄養バランスを考える能力などを総合した、生きるための重要なスキルのことである。その時々で安い食材をうまく使いまわせる生活は、経済的にもメリットが大きい。また食事を工夫すれば、生活習慣病などの病にかかるリスクも減らせる。
しかし仕事や家事で忙しい現代人にとって、料理をするハードルはとても高い。著者がツイッターで行ったアンケートによると、「料理が好きではない」という回答を選んだ人はおよそ56パーセントにのぼった。
誰でも学校の教科では得意不得意があるように、料理にも向き不向きがある。にもかかわらず世間ではいまだに料理は誰でもできるものという認識が強い。そのため「料理ができない自分はダメだ」という気持ちから、ますます料理をしなくなるという悪循環に陥る人が実に多いのだ。
とはいえ生きている以上、食べることからは逃れられないし、栄養バランスの考えられた食事を毎回誰かが作ってくれるわけでもない。ゆえに忙しい生活の中で、いかに自炊力をつけるかが重要になるのだ。
平日にスーパーで買い物するのが難しい人にとって、コンビニ食は生活の中心になりがちだ。しかし「料理する」のではなく、コンビニで売られているものをどう栄養バランスよく「買う」のか考えることも、立派な自炊力のひとつである。
最初に頭に入れるべきは、「主食・主菜・副菜」という3要素だ。たとえばおにぎり、肉か魚のおかず1品、味噌汁の3つがあれば、これらの要素はひとつずつ揃う。漫然と食べたいものを買う状態から、自分の食べたいものの要素を考慮することが、自炊力をつける最初の一歩と心得よう。
分類がわかったら、3要素の「量」を考えることが次のステップとなる。現代人の食生活に不足しがちな野菜・フルーツは、コンビニで「ちょい足し」が可能だ。コンビニでも手に入るプチトマトを切って足すだけでも、十分自炊となる。料理習慣のない人には、ここから始めてみてはいかがだろうか。
野菜を買ってもなかなか使いきれないという人には、冷凍野菜という手がある。賞味期限が長く、買い置きができる冷凍野菜は、全般的にちょい足しに向いている。女子栄養大学出版部編集委員の監物南美(けんもつなみ)さんによれば、冷凍野菜は収穫後、新鮮なうちに急冷されるため、風味や栄養価が損なわれにくいという。さらに旬の時期に適切に冷凍されて管理されたものは、旬でない時期の生鮮野菜より栄養価が高い場合もある。天候に価格が左右されやすい生鮮野菜に比べ価格も安定しており、セールもよく行われるため、ぜひ買い置きして活用したいところだ。
平成28年度の「国民健康・栄養調査」によれば、日本人の塩分摂取量の平均は1日9.9グラムである。これに対しWHOによる成人の塩分目標数値は5グラムだ。日本人は総じて塩分を取りすぎる傾向にある。
病気になって医療費がかさむことを避けるためにも、減塩は心がけたい。コンビニで買うものに迷ったときは、減塩をするチャンスだ。
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