学生時代、勉強も運動も不得手であった著者は、「誰よりも自分は運が悪い」とまで思い込んでいた。先生から「お前には無理だ」と言われた過去も、まるで呪いのように著者を縛っていた。特別な何かを持っている人に対して、憧れと強いコンプレックスを抱いていたという。
そんな著者にとって人生のターニングポイントになったのは、風見しんごさんが踊り歌う姿をテレビで見たことだった。激しくも摩訶不思議な動きに釘付けになり、録画したテープを繰り返し再生して真似た。
ダンスに出会ったことで、受動的だった著者の毎日が一変した。自分で見つけてはじめたことだからこそ、うまくいかないときも転んだときもすべて自分のせいだった。その感覚がどうしようもなく楽しかった。
入学した高校には、ダンス部はなかった。ある日学校の体育館で踊る人たちを発見し、「あの中に入りたい」と強く思ったが、勇気が出なかった。自分とは違う「イケてる」人たちの輪に入れるはずがないと思ったからだ。だが、「どうしてもあの動きをしてみたい」という興奮に突き動かされ、ついには自分から「仲間に入れてほしい」と言うに至る。
それからはまるで人生が変わったかのように、ダンスがすべての中心になった。特に驚いたのは、トレーニング次第で自分の身体を使って不思議な動きができるということだ。体育館で先輩たちがやっていた憧れの技「ウィンドミル」をマスターするために、ひたすら練習を重ねた。
「ウィンドミル」の習得に要した期間は、実に9ヶ月。自分には無理かもしれないとも思っていたが、練習を続けることで、ついに習得できたのだ。この経験は著者にとって大きな自信になった。
将来は、親類の経営する会社で働かせてもらうつもりでいた。だからこそ、将来のことなど考えず、ダンスに夢中になれたのだろう。しかしあるとき、親類が経営を退き、用意されていると信じていた「レール」がなくなってしまった。
著者には、ダンスしかなかった。だが、ダンスで就職するにしても、就職に有利になるような実績を作ってきたわけでもなかった。同級生のように就職することも考え、内定ももらったが、ダンスを半端な形で諦めたくないという思いが勝った。
そこで考えたのは、思い切った挑戦をすること。
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