The San Francisco Fallacy

起業家を殺す10の迷信
未読
The San Francisco Fallacy
The San Francisco Fallacy
起業家を殺す10の迷信
未読
The San Francisco Fallacy
出版社
ナンバーナイン
出版日
2019年03月13日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

スタートアップの拠点として不動の地位を築いてきたサンフランシスコ。世界中の野望に満ちた起業家たちがこの地をめざすのはなぜなのか。理由は簡単。「みんながそこで戦っているから」だ。さも憧れのスタートアップ業界の一員になったかのような優越感を味わえる。しかし、このように周囲に流されることこそ、「サンフランシスコファラシー(サンフランシスコの迷信)」だという。

起業家にはこうしたさまざまな「迷信」がつきまとう。迷信というのは、徐々に積み重なって私たちの思考に根づいてしまっているものを指す。著者は20年もの間テクノロジー業界で戦い、現在はエンジェル投資家としてスタートアップを支援している。そのなかで、起業家の「失敗」の共通項を見出したという。「テクノロジーが全てを解決してくれる」「失敗を念頭に入れたプロジェクトは失敗する」など。名づけて「起業家を殺す10の迷信」だ。

著者の山あり谷ありの起業ストーリーを追体験しながら、迷信にとらわれず、いかに成功確率を上げるかという10の教訓を学べるのが本書だ。綺麗ごとは一切なし。堀江貴文氏が「これは、実践者のみぞ知る『起業の教科書』だ」と推奨するのも頷ける。

「起業なんてしないから私は対象外」。そう思った方も、まずは1章だけでも読んでほしい。本書が単なる起業の成功法でなく、人生のあらゆる局面で活かせる「哲学」を語ったものであることがわかり、夢中で読み進めてしまうだろう。読後には、困難に立ち向かうための思考力という、人生の重要な「武器」を得られているはずだ。

ライター画像
松尾美里

著者

Jonathan Siegel(ジョナサン・シーゲル)
RightCart、RightSignature、RightScale創業者。SaaS企業の成長、買収などのイグジットを支援するXenon Venturesの会長を務める。Ruby on Railsでのコンサル業を展開するELC Technologiesを創業から2010年にPriceGrabberのKamran
Pourzanjaniに買収されるまで10年にわたり経営した。サイドビジネスとしてアメリカ西海岸のアイリッシュパブ「Brendan’s」を創業。「大事なことは自分でやれ」というマントラに従い、不動産ブローカーの資格、連邦航空局認可の資格、ヘリコプターパイロット免許、ジェット機パイロット資格などを取得。サンタバーバラ、ラスベガス、ダブリン、東京での居住経験があり、妻と9人の子どもがいる(2019年3月1日時点)。

本書の要点

  • 要点
    1
    「テクノロジーの迷信」に陥らないためには、「テクノロジーですべて解決できる」という思いこみを捨てる必要がある。
  • 要点
    2
    素早く大胆な決断を行うには、チームの各メンバーが平等に会社の株をもてばうまくいくという「民主主義の迷信」にとらわれないことが重要だ。
  • 要点
    3
    「投資の迷信」に陥らないためには、資金調達を受けず、できるだけ長く事業を存続させるとよい。
  • 要点
    4
    アイデアを重視する「アイデアの迷信」に陥ってはいけない。起業を成功させるためには、アイデアを実行する力が欠かせない。

要約

テクノロジーの迷信

テクノロジーですべて解決できる?
g-stockstudio/gettyimages

恐ろしいほど発生確率が高く、あらゆる産業の賢い起業家たちを陥れてきた10の迷信。本要約では、そのなかから「テクノロジーの迷信」「民主主義の迷信」「投資の迷信」「アイデアの迷信」を取り上げて紹介する。

まずは、サンフランシスコに最も蔓延している、「テクノロジーの迷信」だ。新しい創造にはテクノロジーが一番大事で、技術さえしっかり磨けば、結果はおのずとついてくる。こう思いこむことは、完全な間違いである。

著者のジョナサンがそれを痛感したのは、16歳の頃にポルノ掲示板制作に携わったときのことだ。当時は電気通信の一昔前。地元のBBSへの接続は無料でも、遠くのBBSへの接続は高価だった。ジョナサンはそのギャップをついた「シェアウェアブローカー」というビジネスを手掛けた。遠くのBBSからソフトウェアをダウンロードし、地元のBBSで月額課金と引き換えにそのソフトウェアを提供するモデルだ。

ジョナサンは、昼夜問わず自分が運営するBBSのユーザー分析に勤しんだ。しかし、期待した収入は得られなかった。同様のモデルで年間120万ドルもの収益を稼ぎだしていたBBSは、じつのところ大量のアダルト画像の販売で収益を上げていたのである。

その後ジョナサンは、最新技術を備え、まともなデザインで、画像のレパートリーを豊富にし、BBSを再出発させた。1000人ほどの課金者数獲得を見込んだが、6週間後に獲得できたのは、わずか十数人程度。それは、ユーザーがクレジットカードで課金できず利便性に欠けていたからだ。こうして「テクノロジーの迷信」の落とし穴に、二度もハマってしまったのである。

勝つのは「市場にリーチできたプロダクト」

「素晴らしいテクノロジーを使ってプロダクトをつくれば、素晴らしい事業に直結する」。この考えは大間違いだ。事業とは、顧客が求めているものを提供することである。テクノロジーは、顧客が解決したい課題を解決するための「手段」にすぎない。

多くの企業はテクノロジー開発に資金を注ぎ、セールスやマーケティングにはほんの少しの資金しか回さない。創業間もない10名ほどのスタートアップでは、9人のエンジニアに1人のセールスという構成が多い。しかし、これではテクノロジーにばかりフォーカスしてしまう。

背景には、アイデア勝負で企業が次々に倒産した「ドットコムバブル」がある。この反動でテック系スタートアップは、プロダクト開発に命を懸けるようになった。

テクノロジーの迷信に陥らないようにするには、「テクノロジーですべて解決できる」という思いこみを捨てるのが一番だ。決してマーケティング戦略を忘れてはいけない。なぜなら優れたプロダクトが勝つのではなく、市場にリーチできたプロダクトが勝つからだ。

まずは、そのプロダクトが求められているかどうかを検証すべきである。検証自体は、テクノロジー開発と比べて安価で済ませられるのだから。

【必読ポイント!】 民主主義の迷信

チームワークが大事なら、株式は均等に分けるべき?
Mukhina1/gettyimages

「民主主義の迷信」、それはチームで仕事をし、各メンバーが平等に会社の株をもてばうまくいくという考えだ。もちろん事業が好調なときは問題ない。しかし、責任や権力に平等を求めすぎた挙句、意思決定が惑わされるケースは多い。

この事実をジョナサンが身をもって学んだのは、友人のサムとクリスとともにスタートアップを運営していたときだ。サムは名目上CEOだったが、三人は平等に会社の株を保有しており、協力し合って会社を経営しようと決めていた。めざすのは、革新的な3Dの軍事戦略シミュレーションゲームを開発し、PCゲーム産業の新境地を開くことだった。

ジョナサンらは20時間労働の日々を続けた。だが、より長い開発期間が必要になり、資金調達のためのプロトタイプを準備しなければならなくなった。そこでカリフォルニア中の投資家に会い、見事、12人の投資家から合計9万ドルの資金調達に成功。しかし、どれだけ開発の人数を増やしても、資金が底をつく前に3Dゲームの開発は終わらないことが判明した。それなら、まずはデモ用につくった2Dゲームをリリースしてはどうか。ジョナサンの提案に、CEOのサムが反対した。しかし、3人で多数決をとることになり、結局は2Dゲームを先にリリースすることとなった。

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要約公開日 2019.04.24
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