間違いだらけの睡眠常識
スタンフォード大学西野教授が教える
間違いだらけの睡眠常識
間違いだらけの睡眠常識
出版社
出版日
2025年03月12日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

スタンフォード大学の西野精治教授によるベストセラー『スタンフォード式 最高の睡眠』をきっかけに「睡眠負債」という言葉に注目が集まるようになった。NHKがこの言葉を番組で取り上げたことから、「睡眠負債」は流行語に選出されるまでに日本中に広まり、国内での睡眠への認識は高まりを見せてきた。

睡眠負債とは、睡眠不足が積み重なって慢性化した状態であり、がん、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、うつ病などの精神疾患、認知症などのさまざまな発症リスクを高めるという。いま日本では、多くのビジネスパーソンがこの負債を抱えている可能性がある。

同著者による『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』の出版から6年、本書はその文庫化である。原本の内容をよりアクセスしやすく提供することを目指しながら、睡眠のメカニズムや健康への影響、快適な睡眠を得るための具体的な方法を、科学的根拠に基づいて解説している。

睡眠負債を解消するにはどうしたらよいのか。本書の結論からいえば、それには「眠るしかない」。睡眠の専門家である著者は、何をおいても睡眠時間を確保すべきだ、睡眠時間を犠牲にするという選択肢はとらないでほしいと強く訴える。

本書を通読すれば、その理由に納得できるはずだ。睡眠について理解を深めたいならまず手に取るべき一冊である。

※本要約は、過去に作成した要約を最新版に合わせて一部再編集したものです。

ライター画像
しいたに

著者

西野精治(にしの せいじ)
スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所(SCNL)所長。医師、医学博士、日本睡眠学会専門医。1955年、大阪府出身。大阪医科大学卒業。1987年、大阪医科大学大学院4年在学中、スタンフォード大学精神科睡眠研究所に留学。
突然眠りに落ちてしまう、慢性の原発性過眠症である「ナルコレプシー」の病態生理・病因の解明の研究に主として携わっており、1999年、家族性イヌナルコレプシーでその原因遺伝子(ハイポクレチン/オレキシン受容体)を発見、2000年にはナルコレプシーの
発生メカニズムを突き止めた。2005年にSCNLの所長に就任。睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。日本人として初のスタンフォード大学医学部教授。
株式会社ブレインスリープ、創業者兼最高研究顧問。著書に「睡眠負債」の実態と対策を明らかにしベストセラーとなった『スタンフォード式 最高の睡眠』 (サンマーク出版)、『スタンフォード式お金と人材が集まる仕事術』 (文春新書)等。2022年、シフトワーカーのウェルビーイングをテーマにNOBシフトワーク研究会を設立し会長に就任する。

本書の要点

  • 要点
    1
    睡眠は謎が多い分野だ。適正な睡眠時間や、どの程度の睡眠不足があるかもはっきりわかっていない。
  • 要点
    2
    人それぞれ、適正な睡眠時間がある。睡眠時間がそれに満たなければ、「睡眠負債」として睡眠の借金がたまっていく。睡眠負債は眠ることでしか解消できない。
  • 要点
    3
    睡眠の質を向上させるには、寝入りばなのノンレム睡を深くしっかりと眠れるようにすることが重要だ。このとき、細胞の増殖や正常な代謝の促進などの役割を果たす「グロースホルモン(成長ホルモン)」の70~80%が分泌される。

要約

間違いだらけの睡眠常識

努力すれば「ショートスリーパー」になれる?

睡眠時間を削ることを「美徳」と捉えがちな日本人は、睡眠時間を短縮できたらもっとパフォーマンスを上げられると考える人が少なくない。ナポレオンやエジソンは睡眠時間が短くても平気な「ショートスリーパー」として有名で、3〜4時間睡眠だったといわれている。

まず知っておきたいのは、睡眠時間の長短は遺伝的資質に規定されるところが大きいということだ。「トレーニングすれば誰でもショートスリーパーになれる」と主張する人もいる。だが、短時間睡眠の因子をもっていない人がそれをやろうとしても、睡眠負債がたまっていくだけだ。本当に睡眠時間が短くても大丈夫なショートスリーパーは、じつは全体の1%未満にすぎない。

睡眠は謎だらけ?
Kkolosov/gettyimages

かつて睡眠は受動的な意識消失状態と考えられていて、魅力的な研究対象ではなかった。睡眠が研究対象として注目されるようになった契機は、1953年のレム睡眠の発見だ。レム睡眠の発見とほぼ同時期に、睡眠・覚醒は脳の自発的な活動によって引き起こされているという概念が提唱され、研究が進められるようになった。また睡眠に関係した病気についても徐々にわかってきて、「睡眠医学(sleep medicine)」という学問が形成されてきた。

しかし、睡眠の深さも睡眠の質も、いまなおその本質はわかっていない。適正な睡眠時間も、どの程度の睡眠不足があるかもはっきりとはわからない。睡眠中の現象としてはわかっていても、そのメカニズムが不明のものもある。睡眠について明らかになっていることは、まだ全体の10%にも満たないのではないかと著者が言うほどに、謎多き分野なのだ。

【必読ポイント!】 睡眠負債

眠りの借金は眠りでしか返せない

「ヒトは一定の睡眠時間を必要としており、それよりも睡眠時間が短ければ、足りない分がたまる。つまり眠りの借金が生じる」――これが睡眠負債(sleep debt)である。借金がたまると、脳や身体にさまざまな機能劣化が起こり得ると考えられている。

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要約公開日 2025.03.07
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