ショコラボは、健常者と障がい者がプロの指導のもと、チョコレートのお菓子を製造・販売する工房だ。要約では、ショコラボの概要と著者がショコラボを立ち上げることになったきっかけ、この事業に込められた思いなどを紹介していく。
ショコラボは、本書執筆時点で創業から5年が経過し、総勢40名強の人々が働いている。テーマは「食べて体にやさしい」「買って心にやさしい」「職場見学してワクワクする」「作って地球にやさしい」。お菓子はすべて手作業で作られているため、作り手一人ひとりの個性が出るのも特徴だ。販売先は百貨店やホテルを中心にじわじわと広がっていき、初年度こそ赤字だったものの、その後は4期連続黒字と好調に伸びている。
障がい者の就労支援という側面からは、ショコラボを卒業して別の職場に就労した元メンバーの、90%を超える定着率が特徴だ。卒業生たちは、世界的に有名なホテルのスイーツ部門を筆頭に、食品メーカーや市役所、病院などで働いている。
著者がショコラボを立ち上げたきっかけは、息子が障がいを持って生まれてきたことだった。健常者として育つかもしれないし、寝たきりかもしれない。長生きするかもしれないし、短命かもしれない。言い知れぬ不安と絶望感を心の奥底に押し込め、とにかく楽しく、前向きに生きようと誓い、当時勤務していた大手信託銀行での仕事を熱心にこなした。小児ぜんそくでもあった子どもを看病するため、時には仕事場から終電で病院へ向かうような日々を過ごしながら。
ところが仕事を一生懸命やればやるほど、子どもとコミュニケーションを取る時間を確保できなくなった。帰宅すると子どもは寝ていて、朝出勤するときにほんの少し会えるだけ。しかも、子どもは発語に遅れがあり、発音も悪かったため、著者はその言葉をほとんど聞き取ることができなかった。妻は100%理解できているのに。
子どもと向き合う時間をつくるため、2度の転職を経験した。その過程で子どもも成長し、養護学校の小学部に入学。しかし入学と同時に、子どもを待ち受ける厳しい現実を初めて知ることになった。それは、障がいを持つ子どもが就職できるケースはきわめて少なく、たとえ福祉事業所で働くことができたとしても、月に3000円ほどしか稼げないということだった。この事実を知ったことをきっかけに、著者の起業ストーリーが動き出した。
最初に興したのは、不動産鑑定評価業務を主とする事業だった。不動産の資格を持っていたし、当時は障がい者が働ける会社といってもイメージが湧かなかったからだ。事業は順調に成長していった。
起業から10年後、ショコラボをオープンした。事業所のある横浜市から就労移行支援型の福祉事業所として指定を受け、全国初の福祉事業所のチョコレート専門工房としてスタートした。しかしチョコレートを事業に定めるまでには、4年ほどの間、夫婦で悩み、試行錯誤していた時期があった。
ショコラボのミッションは、「障がい者の方々の働く場を創ること」と「彼らの工賃アップ」だ。これらを達成するためには、事業の効率性は度外視してでも、まずその継続性を確保しなければならない。それは、利益率が高い事業をビジネスドメインとしなければ成り立たないことを意味する。
そのような考えのもと、粉もの商売やラーメン屋などの飲食店をイメージしていた。実際にお店の厨房に入らせてもらったこともあった。だが結局は、実現性の観点から断念することとなる。
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