人間は感情の生き物である。脳は、まず感情に反応するようにできているからだ。しかし、EQスキルの向上により、自分の感情的な反応を引き起こす引き金に気づけるようになり、前向きな反応ができるようになるのだ。
EQとは、自分自身と他者との心について理解する力のことである。脳内での理性と感情のコミュニケーションによって生じる、「心の知能指数」だ。EQが高いと、自分の行動や人間関係を上手にマネジメントすることができる。
EQは、仕事の成功にも大きな影響を与えている。時間管理や意思決定、コミュニケーションなど、さまざまな重要なスキルの土台となるためだ。現に、仕事で高い成果をあげている人の90%は、EQが高い。一方で、仕事の成果が低い人のうち、EQが高い人は20%だけだという。つまり、EQが高い人は、仕事でも成功する可能性が高いと考えられる。どの業種、どの階層、世界中のどの地域でも、同じことがいえる。
EQが高く、理性と感情をバランスよくコントロールできる人は、仕事で素晴らしい成果を生む。そして大事なことは、EQは後天的に伸ばせるスキルということだ。
EQを伸ばすには、EQの4つのスキルを理解することが必要となる。
まず、4つのスキルは、「個人的なスキル」と「社会的なスキル」に大きく分けられる。前者は、自分の心の動きを認識し続け、行動や傾向をコントロールするスキルだ。一方、後者は、他者の気持ちや行動、動機を理解して、人間関係を改善させるスキルである。
「個人的なスキル」に分類されるのは、「自己認識スキル」と「自己管理スキル」だ。自己認識スキルとは、その瞬間の自分の心の動きを正しく把握し、多様な状況下での自分の傾向を理解する力だ。EQの土台となるスキルであり、自己認識力があれば、他のEQスキルも簡単に使えるようになる。
つづいて自己管理スキルは、状況や人に対する感情的な反応をコントロールする力である。たとえば、恐れに囚われて思考できなくなり、どう行動したらいいかわからなくなったとしよう。そんなときに不確実性を受け入れて、自分の心と向き合い、選択肢を探す力が、自己管理力である。
次に、「社会的なスキル」に分類されるのが、「社会的認識スキル」と「人間関係管理スキル」である。社会的認識スキルとは、他者の感情を正確に読み取り、相手の心の中で何が起きているかを理解する力である。自分と相手の考えや感じていることが違っていても、相手の視点に立って考える能力だ。この社会的認識スキルがあれば、周囲への目配りや気配りができ、重要な情報を読み取れる。
最後に、人間関係管理スキルは、他の3つのスキルと大きく関係する。それらを駆使して自分と他者の感情を理解し、人との関わり合いをマネジメントする力である。難題やストレスが多い場面で、争いを避け、他者との関わり合いから最大限の恩恵を受けるために欠かせないスキルだ。
EQ行動計画を立てて実行することにより、EQを効率よく伸ばすことができる。まずは、本書のパスコードを用いて、「エモーショナル・インテリジェンス・アプレーザル」テストを受けてみよう。そして、その結果を本書のEQ行動計画の「パート1(旅のはじまり)」に書き込む。そのうえで、4つのEQスキルから伸ばしたいスキルを選ぶ。一度に多くのスキルを身に付けたいと思うかもしれない。だが、1つのスキルに絞って訓練したほうが高い効果が得られる。
つづいて、選んだEQスキルを伸ばすためのテクニックを3つ選ぼう。テストの結果報告では、スコア分析に基づいて、特定のテクニックが推奨される。それに従ってもよいし、自分で練習したいテクニックを本書から選んでもかまわない。
伸ばしたいEQスキルが決まったら、そのスキルに優れた人を見つけて、EQメンターになってほしいと頼んでみよう。定期的に会合の場を持ち、フィードバックや指導を受けるとよい。
EQスキルを伸ばすことに終わりはない。変化がわかるまでには数か月かかる。最高の自分を引き出せるように、辛抱強く努力し続けよう。行動計画パート1で選んだスキルに成長を感じられたら、もう一度テストを受けることをおすすめする。
本要約では、4つのスキルのうち、自己認識力(自己認識スキル)と人間関係管理力(人間関係管理スキル)を高めるテクニックの一部を取り上げる。
自己認識とは、本当の自分を知ることである。人間は頭で考える前に、感情で反応するようにできている。そのため、自分自身と人間関係をコントロールするためには、自分のすべての感情に気づくことが必要だ。きちんと自分の感情を認識し、理解しなければ、思いがけないときや望ましくないときに、感情が表出してしまう。それは、自分の心が何か大切なことを訴えている証拠でもある。そこに気づくまで、感情の表出は続き、ダメージが積み重なってしまう。
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