無理なく限界を突破するための心理学

突破力

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出版社
リベラル社

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出版日
2019年05月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

誰しも一度は「限界を超えたら、もっと自分の可能性を広げられるのでは……?」と考えたことがあるだろう。「限界は自分が決めるもの! 心の持ちようでいくらでも超えられる!」と謳う人もたくさんいる。

だが本書はそうした精神論を、冒頭でバッサリと否定する。そして「科学的根拠にもとづいた限界との付き合い方」を淡々と紹介していく。著者のメンタリストDaiGo氏によると、「限界は超えてこそ良い結果が得られる」というのは思い込みにすぎず、ある種の「バイアス」に引っかかっている状態なのだという。しかもバイアスにはいくつもの種類がある。本書でも「SNSで他人を羨ましく感じるリア充バイアス」、「他人のミスや偶然の産物を好ましく思う誤謬選好バイアス」など、20の代表的なバイアスが紹介されている。

こうしたバイアスに引っかかると、合理的な判断を下す能力があっさりと低下してしまうそうだ。だがバイアスの種類を知るだけでも、脳は合理性を取り戻すという。そう聞くと、なんだかとても簡単に思えてくるではないか。

またバイアスを乗り越えるための簡単なトレーニングも多数紹介されている。「限界を超えなければ」と考えてしまう方、「こんなことを考えるのは私の性格に難があるからなのか」と悩める方は、ぜひ手にとってみていただきたい一冊だ。「限界は超えるものではなく、付き合っていくもの」。このことに気づけるだけでも、本書を読む価値は十二分にある。

著者

メンタリスト DaiGo(めんたりすと だいご)
慶應義塾大学理工学部情報工学科卒業。人の心をつくることに興味を持ち、人口知能記憶材料系マテリアルサイエンスを研究。英国発祥のメンタリズムを日本のメディアに初めて紹介し、日本唯一のメンタリストとして数百のTV番組に出演。その後、活動をビジネスおよびアカデミックな方向へと転換し、企業のビジネスアドバイザーやプロダクト開発、作家、大学教授として活躍中。日々インプットした膨大な情報・スキルを独自の勉強法で体得し、驚異的な成果をあげ続けている。著書は累計300万部、『トークいらずの営業術』『直観力』(ともにリベラル社)、『人生を思い通りに操る 片づけの心理法則』(学研)ほかヒット作多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間の限界は、その多くがあらかじめ遺伝子で決まってしまう。そのため限界があるのは仕方のないことである。重要なのはその限界を見極めて、どのように対処していくかだ。
  • 要点
    2
    人間の脳は「バイアス」に影響されると、合理的な判断ができなくなる。だがバイアスの種類を知るだけでも、その悪影響を和らげることができる。
  • 要点
    3
    バイアスから解放され、無理なく限界を突破するために重要なのは、「セルフモニタリング」「クリティカル・シンキング」「知的謙遜」の3つである。

要約

限界に関する勘違い

限界があることは問題ではない
robertiez/gettyimages

人間の身体能力が遺伝に左右されることは広く知られている。だが実際は「性格」「知性」などの内面も、遺伝子によるところが大きい。とくに性格の50パーセントは、遺伝で決まるという。そのため「能力の限界を超えたい」と願っても、そう簡単にはいかない。

こういう主張をしていると、「限界とは、ネガティブな思い込みから、自分の心が決めたものだ」という反論が来ることもある。たしかにそのような場合もあるが、ここで問題になるのは「生物学的な限界」と「思い込みの限界」をどうやって見分けるのかということだ。自分が感じている限界が思い込みによるものではなく、生物学的なものだとしたら、それを超えようとしても結果はなかなか出ない。ひどい場合はプレッシャーに押しつぶされてしまうだろう。

さらに限界は、環境・生活習慣・体調などの外的要因でコロコロ変化するものでもある。昨日と今日で限界点が変わる場合もあるため、限界にこだわって悩み続けても意味はない。すなわち限界があること自体を問題にしても仕方がないのだ。

では「限界」に立ち向かうにはどうしたらよいのか。唯一の正しい方法は「試す」ことである。「体力の限界」を例にとろう。「今よりも働くと体を壊すかもしれない……」と考えたとき、「これは思い込みだ!」と自分を励ましても何も生まれない。自分の体力の限界が実際にどの程度かをつかむには、エクササイズで体を鍛えて体力をつける、仕事を辞めて静養するなど、思いついた仮説を試して検証してみる他ないのである。

限界がないのは人間の愚かさだけ
Scar1984/gettyimages

失敗したら別のものを試すというのは、じつにシンプルな方法論だ。だがこれを常に実践できる人は少なく、「わかっていてもできない」パターンが多い。さらにタチが悪いのは、「そんなことはわかっている」のに、一向に行動しないというパターンだ。この罠にハマると、人々はひたすら問題を先送りにしてしまう。

これら2つのパターンは異なるように見えるが、「現状維持バイアス」にとらわれているという点で共通している。どう考えても変化を起こすべきなのに、新しいものを受け入れられず、現状のままでいたいと思ってしまっている。このバイアスは狩猟時代に人間の脳へ書き込まれたもので、人間の変化を嫌う性格はここから来ている。だが現代では思いついた仮説をすぐさま検証し、変化を起こせる人のほうが、より適応力は高い。

今は現状維持バイアスの他にも、60~80種類のバイアスが見つかっている。しかしわたしたちはその存在に気づけず、無意識のうちに判断をコントロールされがちだ。アインシュタインの「限りがないものは、宇宙と人間の愚かさの2つだけだ」という名言は、少なくともバイアスに関しては的を射ている。何も対策をとらないままバイアスに飲み込まれると、なす術がなくなってしまう。

だが近年ではバイアスに関する研究が進み、その悪影響を和らげるための思考のゆがみを乗り越える科学的な方法も編み出されてきている。これこそが、著者が伝えたい「科学的に正しい限界の突破法」である。

バイアスから逃れて自由になるための方法

合理脳を起動する

バイアスに抵抗したければ、前もって脳の合理的なシステム(=合理脳)を動かしておくしかない。効果的な方法の例は次の通りだ。

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要約公開日 2019.09.05
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