テニスのトーナメントの参加者128名のうち、燃えるような野心を持っている者は数えるほどしかいない。たいていのプレイヤーは、ベスト4やベスト8に残っただけで満足してしまう。
自分は本当に野心を抱いているかどうか、正直に自分を見つめ直すといい。野心を抱いてこそ、成功はあなたのものになる。目標を設定したうえで、その目標は必ず達成できると信じよう。
大きな野心を抱いたら、小さな目標を毎日こなしていく。こなすべき目標を明確に頭に刻み、一日の終わりに、今日なしとげたことに満足できるかどうか、自分に問いかけてみよう。
重要なのは、自分のしていることを信じて、その目標を達成するために邁進すること。そして、その目標を達成できたらすぐ、次の目標を設定することだ。
著者は、大坂なおみ選手(以下、なおみ)と組む前、彼女のことを「お高くとまった女王様」だと思っていたという。なぜなら、すれちがうときに目を合わせてくれないからだ。きっとこっちを見下しているんだろうと思っていた。
だが、初めてきちんと言葉を交わしたとき、そんな印象は吹き飛んだ。お高くとまった女王様だなんてとんでもない。むしろ純真ではにかみ屋の女の子だったのだ。
実際に組んでみると、なおみの内気なところが気になった。彼女が他人の視線を気にしない度胸を身につければ、試合でももっと堂々と自分を押し出せるのではないか。そう考えた著者は、ある「罰ゲーム」を提案した。それは、「練習で勝ったほうが負けたほうに罰ゲームを科すことができる」というものだ。
あるとき、ミニゲームに勝った著者は、なおみに渋谷のスクランブル交差点でダンスをすることを命じた。この経験は、なおみに大切な教訓を教え込んでくれた。「たとえ他人にじろじろ見つめられようが、笑われようが、たいしたことはない」という教訓を。
なおみはよく「セリーナ・ウィリアムズに似ている」と言われていたという。打ち方やゲーム運び、髪型などがその理由だった。
そんななおみはセリーナに憧れていたものの、彼女と比較されることは嫌っていた。7年もセリーナと組んでいた著者をコーチに迎えてからも、セリーナがらみの質問は一切しなかった。それはなおみの、他人を真似ずに独自の道を切り拓くという決意の表れだった。
他人からインスピレーションを受けることは悪くない。だが、そのまま真似ることに意味はない。自分に本当に役立つことを見極めたうえで、そこに自分ならではの彩りを添えることが重要なのだ。
著者はセリーナのヒッティング・パートナーを7年つとめたが、2015年に自ら別れを告げた。それは著者にとって大きなリスクを伴う決断だったが、結果として大坂なおみのヘッドコーチにつくことができ、世界ナンバーワンに挑戦することもできた。
ときには自分を怖がらせるような冒険も必要だ。
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